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なぜテレビタレントの『美味しい!』はウソで、YouTuberの『美味しい!』はホントなのか?

『信用経済』『評価経済』『価値経済』『期待経済』などなど.......

その呼び方は数あれど、実態として市場経済のルールがいま大きな変革期をむかえていることは、さまざまなところで言われています。

また、現代の生存戦略として『ウソをつかないこと』、つまり『正直であること』は、重要な要素としてセットで語られることが多いです。

そして、その際に具体例として頻繁に比較されるのが、『テレビタレント』と『YouTuber』

ここでの文脈において、テレビタレントは『ウソをつく者』、YouTuberは『正直者』の象徴として例示されています。

ただ、ぼくは前から思っていました、

テレビタレントもYouTuberも、ビジネスモデル自体は同じじゃん!?!?

と。

つまり、両者でお金を得る構造は同じなのに、どうしてテレビタレントは『ウソをついて』いて、YouTuberは『本音を話して』いると認識されるのだろうか、と。

上のツイートをしてから、折に触れては考えてきたのですが、最近ようやくぼくのなかである程度考えがまとまったので、ここらで残しておこうと思います。


テレビタレントには『美味しい!』と言う以外の選択肢がない

キンコン西野さんが『革命のファンファーレ』内で言っていてなるほど!と思ったのが、人がウソをつくのは『感情』ではなく『環境』に依るところが大きいということです。

つまり、ウソをつきたいからついているのではなく、ウソをつかざるをえない環境に追いやられているから、ウソをつくのだと。

これを踏まえたうえで、『食べ物』を例として考えてみます。

例えば、グルメ番組でテレビタレントが『美味しい!』とコメントしてもそれを信じられないのは、そこで『美味しい!』とコメントする以外の選択肢ないからです。

逆に言えば、YouTuberが動画で『美味しい!』とコメントした商品を実際に視聴者が買いに行くのは、『美味しい!』『マズイ!』の両方を言える状況で、『美味しい!』とコメントしたからです。

ではなぜ、テレビタレントには『美味しい!』の感想一択しか残されていなくて、Youtuberは『美味しい!』『マズイ!』両方の感想を言える環境にあるのでしょうか。


プロデューサー=演者か否か

結論からいうと、テレビとYouTubeそれぞれのメディアにおける最大の相違点のひとつに『プロデューサー=演者か否か』というものがあるからです。

言わずもがな、テレビではプロデューサーと演者が別で、YouTubeでは同じです。

この差によってなにが生まれるのかというと、YouTuberは自分を自分でキャスティングできる権限があるのです。

より詳しくその権限の効能について見ていくために、紹介する商品を『演者自身が選んだ』場合と『プロデューサー(番組側)が選んだ』場合の2種類に分けて、考えていきたいと思います。


①演者自身のオススメ商品を紹介する

これは、テレビタレントもYouTuberも特に変わりはありません。

PR案件ならまた話は別ですが、演者自身がオススメ商品を紹介するときは、自分が本当に好きな商品以外を紹介するインセンティブがありません。

わざわざ気に入ってない商品をオススメとして紹介して視聴者の信用度を落としても、演者にとってはメリットがないからです。

視聴者もその構造を理解しているので、動画内で演者がオススメとして紹介している商品は、『本当に好きなものなんだ!』『本当に美味しいんだ!』と信用します。


②プロデューサーが選んだ商品を、演者がオススメとして紹介する

こちらの条件になると、YouTuberとテレビタレントの違いが浮き彫りになってきます。

まずこの条件は、YouTuberにとってはさっきの『演者自身のオススメ商品を紹介する』と同じです。

『プロデューサー=演者』なので。

また仮に『オススメ』ではなく、こういう商品には気をつけろ!という意味で『辛口レビュー』のような形で紹介しても、まったく問題ありません。

YouTuber自身がそれでクレームを受けても、自分たちで責任をとることができるし、自分たちのチャンネルなので、それ以降『干される』ことに対する心配もないからです。

つまり究極、YouTuberはなんでも正直に自分の意見を表明することができます。

これが『プロデューサー=演者』の為せる技です。


一方でテレビタレントの場合、プロデューサーが選んだ商品(番組から演者に対して提供される商品)をオススメとして紹介しなければなりません。

仮にここでテレビタレントが正直に『マズイ!』と言ってしまうと、プロデューサーは『美味しい商品』として台本を作っているのに、その流れが台無しになってしまいます。

そんな空気の読めないテレビタレントは、次から番組に呼んでもらえません。

なのでテレビタレントは仮に番組が『いま話題の商品!』として紹介された商品が自分には合わなくても、『美味しい!』と言わざるをえません。

つまりこれが、『美味しい!』しか言えない環境にあるということです。


以上の『プロデューサー=演者か否か』という違いから生まれる、両者の選択肢の数の違いが、それぞれの『美味しい!』に対する信用度の差を生んでいるんじゃないかというのが、ぼくの仮説です。


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