心理学的やる気の出し方(原因別対処)
Q やる気のないとき、どうやったらやる気をだせますか?
A やる気がでない原因ごとに対処が違います
(1)変化への抵抗が原因のとき
人には「今の状態や習慣」をずっと続けたいという気持ちがあります。従って変化を起こすのは億劫だったりします。そういう時は、やる気がでなくても、とにかくやり始めます。そうすると「作業興奮」といって、作業することによる刺激がやる気を出します。それを毎日続けると、それが「今の状態や習慣」になってやる気が出るようになります。
(2)やる気がでない理由がアイデンティティ決定(どんな人になりたいか)に関する不安のとき
「本当にこのままこの道を進んでいいのだろうか?」「私が本当になりたかったものはこれだろうか」という不安があるとき、その迷いからやる気がでないことがあります。そういう時は、思い切って一度立ち止まって、自分の今後の人生についてよく考えてみてください。
考える手がかりの一つとして、小学校低学年くらいまでのころに憧れていたヒーロー・ヒロインと、彼ら彼女らのどんなところに憧れていたかを思い出してみましょう。
この頃に多くの人は、自分を作っていくときのモデルを心に取り入れますので、この頃憧れていたヒーロー・ヒロインや、彼ら彼女らのどういったところに憧れていたかは「あなたが本当になりたかった自分」を理解するための手がかりになる可能性が高いからです。
(3)やってもどうせ出来ないと思えてしまうとき
自己効力感といって「努力したら自分は変われる」という気持ちがあるとき、人はやる気がでます。自己効力感が低くて「頑張ってもどうせできるようにならないだろう」と考えると人はやる気を失います。
そういう時は、自己効力感を高める4つの方法
「これまでの人生で、最初できなかったけど頑張ったらできるようになったこと」を思い出す
「自分とよく似ている人が、頑張ったらできるようになった例」を見つける
「『きっとできるようになるよ』と言ってくれる人」を探す
「今日はいける気がすると思えるような体調」をつくる
等をしましょう。
(4)頑張った結果、失敗したら立ち直れないと思うとき
失敗したら立ち直れないと思うとき、人は「失敗したら、私には生きる価値がないことになる」と感じている可能性があります。
そんなとき、人は「自分の生きる価値は、この分野のこと(例;勉強、スポーツ)が出来るようになることだけにかかっている」という間違った信念を持ってます。
そういう場合はアルバムを見たりして「無条件に愛された思い出」を思い出し「自分は無条件に存在しているだけで生きる価値があるし、愛される、失敗しても大丈夫」と感じてください。
(4)の補足:このような不安が強いときは成功する確率が50%くらいのちょうどいい課題で一番逃げたくなったりします。
これは、誰でも100%失敗する課題なら自分が失敗しても自分の価値は下がらないと思えるので不安が下がるのと、誰でも100%成功する簡単な課題なら自分も成功すると思えるので不安が下がるからです。
その結果その両方から一番遠い成功確率50%の、自分の成長にとってちょうどいい課題のとき不安が最大になるのです。
このような場合は、自分にとってちょうどいい課題の成功する確率をわざと低く見積もって「ダメでもともと、うまく行ったらラッキー」と考える悲観的防衛というやり方もあります。
(5)心身の疲れや体力低下が原因のとき
心の問題だと思ったら、体の問題だったということもよくあります。意識的に睡眠と栄養を取りましょう。また、有酸素運動を毎日無理のない範囲でしましょう。
(6)それをすること自体が楽しかったはずなのに「お金のため」「コンクール入賞のため」等の自分の心の外にあるものが目的となって以来、やる気が下がった場合
「それをすること自体が楽しい(内発的動機)」という気持ちと「お金のため等、自分の心の外のものが目的(外発的動機)」という気持ちは、お互いに矛盾しています。そして人は自分の心の中に矛盾があると感じると不快感を感じます(認知不協和理論)。
その結果、人は自分一人では変えるのが難しい外的な状況をそのままにして、自分の心の中にある「それをすること自体が楽しい」という気持ちを否定することで、矛盾を解消しようとし、その結果、やる気が下がります(アンダーマイニング効果)。
そんなときは、一度、周りの状況を全て忘れて、自分の楽しみのためだけに頑張ってみてください。やる気が復活します。
(6)の補足:逆に「もともと、それをすること自体が楽しいと思えなかったこと」をお金や褒め言葉のような外的な報酬目当てでしているうちに、だんだんとその面白さがわかってきたりして「それをすること自体が楽しい」と思えるようになることもあります。これを機能的自律性と言います。
従って、逆に「もともと、それをすること自体が楽しいと思えないとき」は「これをするとこんな良いものが得られる、こんな良いことがある」と想像するとやる気がでることもあります)
(7)周りが自分より出来るように見えてやる気がなくなった場合
周りに優秀な人が多くて「自分はダメだ」と感じ、やる気が失くなった場合は、周りと自分を比べるのをやめ、過去の自分と今の自分を比べたり、未来の目標とする自分と今の自分を比べて
「過去の自分より今の自分が出来ているところはどこだろう?それが出来るようになったのは、具体的に何をしたからだろう?」
と考えて、これまでの自分の頑張りを自分で褒めたり認めたりしましょう。
また、「目標を達成した状態を10とすると、過去はいくつで、今いくつだろう?とりあえず今の状態から1だけアップするには具体的にはどうしたらよいだろう?」
「もし過去に、今より目標に近いときがあったなら、そのとき具体的には何が良かったのだろう?今、もう一度、その良かったことをしてみよう」
と考えて、見つかった具体的な改善策を実行しましょう。
そして、改善策を行った結果出来るようになったことを一つ一つ紙に書いたりして意識し、出来るようになった自分を褒めたり認めたりしましょう。
それでもやる気がでないなら、自分より出来ない人を見つけて(自分の心の中だけで)「私はあの人より出来る…」とつぶやきましょう(これを下方比較と言います。お笑い芸人さんがわざとダメな人を演じたりするのは、観る人に下方比較をさせることで元気を与えていると解釈できます)。この方法は、結構有効なのですが人に知られると嫌われますから、こっそりやりましょう。
(7)の補足:自分の努力の効果を振り返っているとき、『こんなに頑張っているのにどうしてこれしか出来ないの?』と思ってしまうこともあります。しかし、実際にはたくさんのことが出来るようになっており、それを思い出せなかったり意識できなかったりしているだけです。
人は出来るようになったこと、終わったことは意識しなくなり、まだ出来ないこと、終わってないことを意識しがちだからです(ツァイガルニク効果)。
まだ出来ないことについて考えるのを一旦やめ、これまでに出来るようになったことを思い出して、自分をほめましょう。
そして、やる気が回復したら、まだ出来ないことがどうやったら出来るようになるか考えましょう。
(8)『自分のため』に頑張れなくなったとき
人には親和欲求といって『損得に関係なくても、誰かと仲良くしたい』という気持ちがあります。
『この人と付き合うとお金がもうかる、地位が上がる…』という報酬がなくても、好きな人と仲良くなりたい…という気持ちです。
もっと言うと、自分のお金や社会的地位、自分の時間を多少犠牲にしてでも、好きな人と一緒にいたい、愛されたい…という気持ちが、全ての人に多少はあります。
つまり人は、自分一人だけ幸福になるよりも、愛する人と一緒に幸福になる方が嬉しいと感じるように出来ています。
(自分自身にその気持ちがあることに気づいてない人もいますが…)
したがって『自分のため』に頑張るよりも『好きな人のため』に頑張る方がやる気がでることもあります。
『自分のため』に頑張れなくなったら、誰かのために頑張ってみましょう(*^_^*)
追記:写真は、季節外れ(秋)に咲いた独りぼっちの桜の花に、蜘蛛が「独りじゃないよ」と糸をかけたところです。
人のやる気は、上記のように、愛された経験、憧れている人への思い、信頼している人からの励まし、自分によく似た人の成功、過去の自分との対話、等々…、「他者との関係性」と深く関係してます。この桜の花にとって他者である蜘蛛がかけた糸が「他者との関係性」を私に感じさせましたので、掲載しました。