駅、この街を出た時と何も変わらない。 大学時代の演劇サークルの同期の巧が出迎えた。 「おせーよ 主役は最後に登場ってか」 「悪い悪い、仕事が少し伸びちゃって。」 トミー(サークルの同期)「礼、久しぶりー 元気そうじゃん」 礼「久しぶりー」 奥の冷蔵庫から食べ物をとってきた翔子が出てくる 翔子(サークルの同期)「お〜、礼ちゃん 久しぶりー〜、! 元気だった?? 巧「元気元気 翔子も相変わらず元気そうだね」 翔子「うん あ、ごめんね、先はじめちゃってて」 礼「いいよいいよ
もしもあなたがいるのなら この世界で 哀れに救いを求める者が 見えぬのか あなたは光を奪い この眼を塞ぎ 孤独へと落とした 幾ら願い祈れども 虚しく空に響くだけ あなたの声が聞こえない 私の耳を塞ぐ手を なぜ解いてくれぬのか 祈る声は枯れ あなたの御名も 呼ぶことができない あなたの似姿として創られたなら あなたもまた 光を失い 音を失い 声を失ったのか あなたもまた 誰かに救いを求める者なのか 沈黙に嘆き 私たちを作ったのか 自
世界中の商品と呼ばれるものと世界中の貨幣、どちらが多いのだろうか。 もともとお金、貨幣は商品と交換可能、同等のものと見做されるからこそ価値を持っているのではないだろうか。ならば総量は同じであろう。 ただでお金はお金と交換できる。円からドル、ドルからユーロのように。 となると貨幣ある種商品として扱われるため貨幣と商品どちらが多いかと言われたら貨幣の方が多いのだろうか。貨幣までが商品になるのなら、人は何のためにこれを集めるのだろう。 また貨幣の不思議は、同じ貨幣であるにも
鎌倉にて Music&Film by Kenta Sato
いつか私は自殺するのではないか。 幼い頃よりそんな不安を抱えて生きてきました。 いえ、私は決して貧乏な生まれでもなければ、不幸な暮らしをしてきたというわけでもありません。どちらかといえば恵まれていた方でありましょう。 けれどもなぜだか、どうしようもない程に、孤独と不安が消えないのです。 私の心の深い底には何か鈍く、黒く、異様で、異形なものが流れているのであります。 道ゆく人は皆幸せそうです。家路を急ぐ人、友人と何処かへ向かう人、恋人を待っている人。暖かな雰囲気が冬の冷
静かに降り注ぐ雨は月明かりにと共に、行き交う人もない路地をそっと打ちつけていた。 明滅する赤と青の人工光が、まるでもう一人の自己が立ち現れては消えるが如く、僅かばかり足を引きずる男の影を濡れた路面へ落とした。 「まだお前は私についてくるのか。」 その影を見つめ、一人呟きながら静かに歩く男は酷く錆びた鉄の扉の前にたどり着くと、コートの中から鍵を取り出し、先ほどまで通ってきた道を一瞥した後、世界から男を閉ざすが如く無数に取り付けられた錠を開けた。 狭い玄関を抜け、少し長い廊下の先