サウナで学ぶ心理的安全性
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サウナで学ぶ心理的安全性

土居 健太郎

以前は週7~7日くらいは酒を飲んでいたが、最近は飲みに行く機会が減ったこともあり、いい機会なので健康的な生活を心がけている。

食事はカロリーやPFCバランスを考えて9割自炊、朝のウォーキング、週3~4回ほど筋トレ、週に2回ほどプールで泳いでいる。用事がなければ酒も飲まず、睡眠も6~8時間は確保している。控えめにいって健康だと思う。

しかしその中でもサウナは格別だ。自分はサウナ歴2年くらいのペーペーではあるものの、体調維持や疲労回復の手段としてサウナは欠かせない。


さて、ここ数年「心理的安全性」という言葉が(たぶんGoogleのせいで)あちこち取り上げられているが、「言葉は知っているが意味は知らない」「なんとなく雰囲気で使ってる」な人が大多数だ。

何の話だという声が聞こえてきそうだが、この記事では「心理的安全性の何たるやを知りたければサウナに行け」という話をする。


心理的安全性とは


心理的安全性とは、日本人ぽい表現だと「俺らの間では空気読まなくていいよ、がチーム内の共通認識として成立している状態」という感じだろうか。

ググればけっこう色々な言葉で説明されているが、こと企業組織においては以下に紹介されている定義がなんだかんだスマートな表現だと思う。

対人関係においてリスクのある行動をしてもこのチームでは安全であるという、チームメンバーによって共有された考え

(参照) ガイド: 「効果的なチームとは何か」を知る - Google re:Work


心理的安全性の高いチームづくりは難しい


「対人関係においてリスクのある行動(以下、「リスク行動」)」とは、例えば初歩的すぎて今さら聞くの気まずいんだけど的な質問を全員の前でするとか、みんな賛成かもしれないけど私は絶対反対だよみたいな意思表示をするなどの行動を指す。

心理的安全性が高くない「普通の」集団では、そうした行動に対して周囲に反感や拒絶反応が生まれる。仮に表立ってそうした反応が示されなくても、暗に態度で示されたり、別空間でそうした行動が非難されたりする。あるいは、職場で不利な評価を獲得してしまうこともあるかもしれない。

そういう空気は次第に集団に伝播していき、「平和にやり過ごそうとお互いに空気を読み合い、言うべきことや自分の考えを誰も言わない」空間ができあがる。それが心理的安全性の低いチームの状態だ。

しかし、それが特別にダメなチーム状態なのかというと、むしろ実際には大多数がこういう状況にあるのではないか。

個人的には、よほどスーパーな人たちの集まりでもない限り、普通にやっていては心理的安全性なんてまず確保できない、というのを前提にしておくべきだと思う。


居心地の良さと心理的安全性は別次元


ありがちなのは「みんなにとって居心地がいい状況」に近い解釈をしてしまうことなのだが、もちろん全く違う。

「心理的に」「安全」という語感からそういう解釈がされがちだが、当然ながらみんなにとって居心地いい環境を目指そうとすれば、お互いに空気読むことや声の大きな人に忖度することが手っ取り早い手段となり、心理的安全性の高いチームとは真逆に向かう。

心理的安全性が低い状態のまま勘違いして「リスク行動」を取りまくるチームは地獄絵図


逆に、無条件で「心理的安全性が高い組織を目指そう!思ったこと何でも発言していいよ!」みたいなのを決行すると、特に攻撃性の強いメンバーや排他的な感情を持つメンバーが1人でもいた場合に地獄に向かう。

「思ったこと何でも言っていいんだろ」が約束事として公認されてしまっているので、周囲も指導したり注意したり抑止力を働かせることがしづらくなるためだ。

端的にいえば「そういうことじゃないんだよ」ということになる。


要はサウナと同じ


サウナの習慣がない人にとって、サウナは「高温の部屋で汗をかく我慢大会みたいなやつ」というイメージが強いかもしれないが、サウナ好きがサウナに行くのは実はそれが目的ではない。

1.サウナで体をカンカンに温める 
2.キンキンの水風呂に浸かる
3.休憩がてら外気浴

のサイクル、すなわち温冷交代浴を通じて「ととのう」状態(一種のトランス状態)を目指しているのだ。その感覚を知らない人はぜひ味わってみてほしいが、本当にととのう~ってなる。

なお自分はサウナ6~10分、水風呂1分、外気浴5分×3セットな感じでやっている。合ってるかどうかは知らないが、ちゃんとととのう。

全てのプロセスは「ととのう」ゴールの達成のために


80~100℃の部屋に籠もることも、20℃を下回るような水風呂に浸かることも、単体で見ればそれなりのストレスにさらされる行動には違いない。

それにも関わらず、なぜそんなことを好き好んでやるかと言えば、「ととのう」というゴールを達成するためだ。サウナも水風呂も、そのための通過点に過ぎない。

単に水風呂に飛び込んでも冷たいだけ

水風呂は基本的にはサウナでカンカンになった体を冷やすために入るものなので、たいていの施設ではサウナのすぐ近くに水風呂が配置されている。

水風呂は施設によるがおよそ15℃~18℃程度が多い。みなさん小学校のプールの授業で「つめてーーうおーー」とか騒いだ経験あると思うが、授業が開かれているということは最低でも水温23~25℃くらいはあったはず。水風呂はもっと冷たい。

当然ながら、普通に水風呂入ればだためちゃくちゃ冷たいだけなのでやめたほうがいい。


ぬるま湯に浸かっていても水風呂に耐えられない


例えば、35~37℃程度、人間の体温と変わらない不感温度帯みたいなものがあって、そのへんの温度のぬるま湯につかると熱さも冷たさも感じない不思議な感覚がなかなか気持ちがよくほぼ無限に浸かっていられるのだが、当然ながら体温は上がらない。

その状態で水風呂に入ったところでやっぱりただ冷たいだけで、「ととのう」は実現できない。


「ととのう」を実現するには、体をカンカンに温めてからキンキンに冷やす手順が大事


「ととのう」状態は、カンカンに火照った体を水風呂で冷やし、外気に触れて常温に戻すことで「極端な緊張状態→弛緩状態」の落差によって変なリラックス成分が混じった脳内物質が出てきてる状態、とか確かそんな感じだ。

水風呂の効果を出すためには、その前に体温がカンカンに火照っている状態を作っておく必要があり、そのためにサウナに入るわけだ。


心理的安全性とはすなわち、仕事の目的を達成するためにチームがカンカンに火照っている状態を指す


つまり、心理的安全性を高めることは、サウナに入ることに等しい。

例えば「リスク行動」を

・(空気を読まずに)水を差す
・(イケイケムードの議論に)冷水をかける

ような行為と表現するならば、みんながそうやって水ぶっかけまくっても誰も責められないし非難されないチームにしなければならない。

大して温まってない状態でいきなり水風呂に突き落とされるチーム、あるいは不感温度帯から脱することに抵抗感があるようなチームでは、健全な議論も生まれづらいし、失敗を通じて組織が学習する機会も減るだろう。

したがってぬるま湯につかっててもダメだし何もしなくても当然ダメで、とにかく「どうにかしてチームをカンカンに温めておく」必要がある。


チームをカンカンに温める方法


最後に、どのようにチームをカンカンにするかというアプローチについて。各々のチームのメンバー構成やメンバー間の能力差など事情は違えど、少なくとも「下準備」としてやることはそうそう変わらないと思っている。

下準備が整っていない状態で心理的安全性を確保しようとしても、必ずボトルネックが発生する。色々な方法はあるだろうが、個人的にはこういうアプローチが簡明ではないかと思う(見づらい)。

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上記は社内のマネジメント職向けの研修資料から抜粋したものだが、

・個人間で人間関係・信頼関係を築く
・共通のゴールを共有し、最上位に据える
・チームの約束事を決めて全員で守る
・チームのコミュニケーションを整備する

このあたりの要素を揃えた状態が「体も洗ったことだしサウナ入ろ」の状態で、この状態を保ってチーム内のコミュニケーションや相互のフィードバックなどを繰り返していくことで少しずつカンカン状態が出来上がる。

一定まで温度が上がってきたら、

「このやり方には反対で、こちらのほうがいいと思う」
「実はわたしはこの仕事が苦手で、ずっと誰かに相談したかった」
「あなたのこういうところはこう直して欲しい」

のような「リスク行動」に該当するような言動を促していく段階に移る。

最初は多少ギスギスしたり混乱や反発もあるかもしれないが、繰り返していくうちにサウナ水風呂の温冷交代浴効果で「ととのう」状態にどんどん近づいていく、すなわちチームにおけるコミュニケーションと仕事のアウトプットの量も質も上がっていく。

是非お試しあれ。




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土居 健太郎
ナイル株式会社 取締役 人事本部長。現在、総勢200名ほどのベンチャー企業の人事責任者。このnoteでは主に人や組織、マネジメントなど仕事に関わることについて不定期で更新します。