「歯科医院×OKR。歯科医院の成長スピードを仕組みで加速させる」歯科医院でのファシリテーション実践②
この記事は、こんな人におすすめ
・ファシリテーションに興味がある人
・組織の成長を仕組みで前に進めたい人
結論からいうと、組織が成長していくには、
・小さなリーダー体験ができる仕組みが必要
・お互いを称賛し挑戦を評価する仕組みが必要
・医療従事者としてトキめくような目的目標が必要
・上記3つを目標管理手法OKRを導入することで解決する
ご興味がある方は、読み進めて頂けると嬉しいです。
ファシリテーションとは、対話を促しゴールにたどり着くことをフォローする働き
このnoteでは、歯科医院でのファシリテーション実践内容をご紹介しています。
ファシリテーションとは?
会議におけるファシリテーションとは、参加するメンバーの対話を促し、ゴールへ導く働きかけのことです。
私はこれまで歯科医院に特化して、会議や合宿の設計とファシリテーションをこれまで200回以上行ってきました。(ちなみに、ファシリテーションを担う人をファシリテーターと呼びます。)
歯科医院での会議における実践事例が紹介されているものは少なく、当時経験が乏しかった私がゼロから学ぶことは非常に困難でした。私と同じ境遇の方へ、私が実際に試してきたファシリテーション実践内容を少しご紹介したいと思います。歯科業界の方は、良かったら実践してみて下さい。歯科業界でない方もぜひ意見を聞かせてほしいです。
組織に成長が感じられない
会議には、方向性を合わせるため、アイデアを出し問題を解決するため、組織の成長のためなどの目的があると思います。
ですが、
「会議はなんとかやれているが、この先に素晴らしいチームへ成長していけるイメージが湧かない」
という声をよくお聞きします。
「リーダーがなかなか育たない」
「挑戦や称賛の空気が生まれず会議が暗い」
「目標を立てても活用されない」
こんな状況で悩んでいらっしゃる方、このような悩みを抱えているのは、あなただけではありません。組織が成長するに従って、ほとんどの組織がこの壁にぶつかり、諦めるのか、乗り越えるのか。非常に重要なポイントを向かえます。
そしてこれらの問題の原因は、目標管理方法を見直すことで解決することができるかもしれません。
※会議自体が上手くできずに困っているという方は、まずこちらの記事から取り入れてみてください
歯科医院の組織の成長スピードが遅い原因
「リーダーがなかなか育たない」
リーダーが育ちにくいのは院長のせいではありません。歯科医院自体が、もともとリーダーが育ちにくい環境にあるのではないかと思っています。
私が勤めているようなIT企業では、短期の小さなプロジェクトが無数に走っており、少し仕事に慣れ来ると、小さなプロジェクトのリーダーをする機会があります。
一方、歯科医院にはチーフとそれ以外しか役割がなく、小さなリーダー経験を積める仕組みがない医院が多いです。そして、歯科医院は女性スタッフ中心の組織であり、ライフスタイルが大きく変化するタイミングと、そろそろチーフを任せようかと思うタイミングが重なり、一番頑張ってほしいタイミングで退職が発生することもあります。
「挑戦や称賛の空気が生まれず会議が暗い」
これも院長のせいではなく、医療業界特有の問題だと思っています。
特に歯科では、上手くできて当たり前である空気が流れています。それは素晴らしいことですが、そんな環境で働くとだんだんと心が疲弊してしまいます。
私がこれまでに院長先生とお話してきた中で、すごく上手くいっている組織の院長先生の言葉が今でも心に残っています。
「歯科医院には、『痛い。辛い』そういった苦しんでいる患者さんが訪れます。そして、治療するときには、多少の痛みが出ることもあり、お子さんは泣き叫ぶこともあります。治療が終わると患者さんは、なんとか精一杯の『ありがとうございます。』を絞り出してくれてますが、そのときの表情はなんとも疲れきった表情です。患者さんが治療の喜びを感じ取る瞬間は、例えば、美味しい食事をこれまでのように普通に食べられた瞬間ですが、この瞬間を歯科医院で働くスタッフは見ることができません。私たち歯科医療従事者には、やりがい が必要です。やりがいを上手く設計して、スタッフが患者さんに笑顔で『ありがとうございます』と言って頂ける環境を作ってあげる必要があると思うんです。」
うちの医院には挑戦する気持ちが足りない。そうではなく、心が疲弊しない仕組みを作ることはできないでしょうか。何か行動を起こすにはエネルギーが必要です。
まずは、お互いの頑張りや当たり前にやっている素晴らしいことを称賛し合うだけで劇的な変化が起こります。すると、だんだんとエネルギーが貯まってきます。このエネルギーを使って、患者さんに喜んでもらえる方法をみんなで考え、挑戦する。すると、また次の挑戦をするためのエネルギーが貯まってきます。
「目標を立てても活用されない」
なんで、うちのスタッフには経営者視点が足りないのだろうか。
院長、売上目標いくら、成約率いくら、医院経営には数字が大切なことは非常によくわかります。けれど、なんだか受け付けない。目標にときめかないんです。
数字は、ただの指標です。売上というものさしで測ったときに、医院の大きさを数値化したものです。
どんなに経営者思考になっている医院であっても、数値目標だけではチームは上手く動きません。まず最初に立てるべき目標は、数値目標ではなく目的目標です。3ヶ月後にいくらの売上を上げたいかではなく、3ヶ月後にどんな状態、どんなチームになっていたいのか。この期間に私たちが挑戦する目的を言葉にすることが必要です。
数値目標は必要ないと言っているのではありません。数値目標は、組織が目的目標に近付いていっていることを測定するために使います。この期間に、私たちの組織をどんなものさしで測れば、組織の成長を数値化できるか、そんな視点で数値目標を活用すると、本来のツールとしての数字の良さを上手く活用できます。
つまり、
小さなリーダー体験ができ、
お互いを称賛し、挑戦を評価してもらえ、
医療従事者として、ときめくような目的目標を追いかけられる
という仕組みがあったら、組織はどんどん成長していくとは思いませんか?
そんな歯科医院を作って相性の良い目標管理手法として、私はOKRという目標管理手法を活用しています。
OKRとは
Objective and Key Resultの略称で、目標管理手法の一つです。
「オブジェクト(Objective)」と呼ばれる目的目標と、
「キーリザルト(Key Result)」と呼ばれる数値目標の2種類の目標を立てます。
「オブジェクト」は、
ありたい組織の姿や状態を目標として言葉にします。
魅力的なオブジェクトとは、
メンバー全員が、朝ベッドから飛び起きたくなるほど達成したいと思えるもの
と言われています。
「キーリザルト」は、
オブジェクトの達成に近付いていることを示せるような数値目標です。その目標を達成できそうかどうかの自信度を10段階(絶対達成できるを10、絶対達成できないを1)で表したとき、自信度が5になるように設定します。キーリザルトは3つ作ります。
評価基準は、キーリザルト3つの内、
・1つ達成できただけですごいチーム
・2つ達成したら最高のチーム
・3つ達成できたり、達成できなかった場合は目標設定が甘かった(高すぎた)
と評価を行います。
このような特徴のある目標管理手法です。OKRは、ただの目標管理手法の1つに止まらず、上手く使いこなせれば組織文化を構築するほどのパワーを持っています。
OKRによって強化できる組織文化
OKRを上手く使いこなすことで、これまで私が関わってきた歯科医院では、3つの文化が強化されてきています。
・称賛し、チャレンジする文化
・みんなで歯科医院を作っていく文化
・全員が小さなリーダーであるという文化
OKRは万能ではなく、下記のような組織には合わないかもしれません。
・これ以上成長させる必要がない組織
・医院改善は1部のメンバーのみで考えていきたい組織
OKR設定会議
OKRを始めるためにOKR設定会議を開き、下記のことを実施する必要があります。
①過去3ヶ月の称賛
②中期(1,2年後)のビジョンの共有
③全メンバーからOKR案を募集し決定
この3つのプロセスを2時間~3時間かけて実施します。ここでファシリテーションが必要になります。ファシリテーターは、当日の流れをしっかり決め、準備をしておきましょう。
OKR設定会議①過去3ヶ月の称賛
会議の空気を暖めること、まず称賛し、上手くいっていることや組織の強みを共有することから始めます。
全メンバーに付箋に2分で記入してもらいます。2分あれば印象的なことを思い出すには十分です。この3ヶ月間の称賛したいことを付箋に書き出してもらいます。
このとき、
・自分の称賛したいこと
・まわりのメンバー1,2名の印象的だった称賛したいこと
をそれぞれを書いてもらいます。記入が終わったら、一人ずつ書いたことを発表します。たとえ、どんな意見だったとしても、勇気を持って言葉にしてくれたことに拍手を送ります。
すると、お互いがどんなことを大切にしているのかが共有され、すごく良い空気が流れます。初めはなんだか照れくさいですが、すぐに組織に馴染みます。こんな良い状態をもっと増やしていこうという空気を作って下さい。
OKR設定会議②1,2年後のビジョンを共有する
現在の組織の強みや成功要因が共有できたら、OKR案を募集しますが、その前に院長から1,2年のビジョンについてプレゼンしてもらいます。
ビジョンは視界のことです。
院長が見ている景色を共有してください。1,2年後に達成していたいことも大切ですが、多くの院長プレゼンを聞いていて、スタッフに共感を得られるプレゼンには、どれも景色を共有しています。
達成しているときの組織の状態、どんな言葉が飛び交っているか、どんな価値を生み出しているか、医院のファン患者さんがどのように喜んでいるのかを伝えることで、より院長の見ている景色をスタッフの皆さんに共有することができるようです。
時間は30分以内に完了することをオススメします。30分を超えると、どんなに素晴らしいプレゼンでも集中力が切れてきます。
プレゼンが終わったら、ワークを行いOKR決定します。
ワーク①:どんな部分に共感したか?
心が動いたこと、ワクワクしたこと、共感したことを付箋に記入し、共有してもらいます。そうすることで、院長のビジョンを他の人の言葉で聞くことができるので、より理解が深まります。また、組織全体の方向性をある程度整えることができるので有効です。
OKR設定会議③全メンバーからOKR案を募集し決定
ワーク②:オブジェクト案をそれぞれ考える
全スタッフから、3ヶ月後に達成したいチームのオブジェクトを書いてもらいます。ここは、少し時間がかかる場合がありますが全員書いてもらってください。記入が終われば、全員に発表してもらいます。全員に発表してもらったら付箋を回収します。
オブジェクトは、院長の独断で決定してください。このとき休憩に入ってもらうことをおすすめします。オブジェクトが決まれば、発表し、全体で拍手をしてください。
ワーク③:キーリザルト案それぞれを考える
次は、オブジェクト達成に向けて、この3ヶ月間注目すべきキーリザルトを一人最大3つ記入してもらいます。1つでも、2つでも構いません。このとき、キーリザルトは、以下の条件をできる限り満たしてください
・測定可能な指標であること
・毎週増減が発生する数値であること
・達成の自信度が5であること
記入が終われば、全員に発表してもらいます。全員に発表してもらったら、付箋を回収します。
キーリザルトも、院長の独断で決定してください。このとき休憩に入ってもらうことをおすすめします。キーリザルトが決まれば発表します。キーリザルトを聞いた後、達成できそうかどうか自信度を確認してください。平均して自信度5になるように数値の調整が必要な場合があります。決まったら全体で拍手をしてください
ここまででOKRの設定会議が完了します。
OKRが決まれば、週次、月次で会議を開きOKRを運用しましょう。
OKR運用①週次会議:自信度の更新
ぜひやって頂きたいのは、キーリザルトの自信度の更新です。それぞれのキーリザルトに対して、スタッフ一人ひとりが現時点で自信度に変化があるかを確認します。これは10分くらいで簡単に行うだけでも効果的です。(記入2分、発表8分)
これを行うことで、どのキーリザルトが上手く進んでいないのかがわかり、院長がフォローを強化すべきポイントが絞りこめます。逆に自信度がすでに高いものはスタッフの皆さんにお任せしましょう。
また、自信度を更新すると、みんなと比べて自信度が高いスタッフが出て来ることがあります。そのときはぜひ理由をより注目して聞いてみてください。もしかすると、成功要因に気付いているかもしれません。
OKR運用②月次会議:成功要因のシェア
月に1度は、上手くいっていることをシェアする会議を開きましょう。私が普段行っているやり方がこちらです。参考にされてください。
相談窓口
最後まで読んで頂きありがとうございます。
ファシリテーションとは?
会議におけるファシリテーションとは、会議のテーマに合わせて参加するメンバーの対話を促し、ゴールへ導く働きかけのことです。
改めてこの文章を読むと、なんだかイメージが湧いてきてはいませんか?
ファシリテーションと聞くと、すごくテクニカルなイメージがありますが、やっていることは非常にシンプルです。
もしよければ実践する前にご相談下されば、細かなポイントもお伝えします。
また、ご相談、提案、他の歯科医院ではどうなのか他の業界ではどうなのか、下記からご意見お聞かせ下さい。
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