記事一覧
おぼっちゃま取締役②
次家正則の毎日は、一見すると華やかで充実したものに見えた。しかし、その背後には創業家一族ゆえの嫉妬と戦う苦悩が隠されていた。
ある朝、正則は会社のオフィスビルに到着すると、エレベーターの中で同僚たちのひそひそ話が聞こえてきた。
「やっぱり、次家さんは特別扱いだよね。あんなに早く役員になれるなんて、普通は考えられないよ。」
「叔父が創業者だからって、ずるいよな。俺たちがどれだけ頑張っても、所詮
①おぼっちゃま取締役
次家正則は、自らの足音が廊下に反響するのを聞きながら、企業の役員会議室に向かっていた。彼は40代半ば、黒髪は完璧に整えられた短髪、スーツは一分の隙もない。次家正則は上場企業の役員としての地位を得ていたが、その出世の速さには彼自身も少しばかり戸惑っていた。
次家正則の叔父、次家正道はこの会社の創業者であり、企業の礎を築いた人物だ。正道は若い頃からの強い意思と情熱で、零細企業から一代で大企業に成長さ