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高野山への旅

第一章:計画の朝 2023年8月12日の朝、まだ薄暗い中で山田たかふみは目を覚ました。時計を見ると6時半。今日は友人の吉村ともゆき、そして久しぶりに会う服部と共に高野山へ旅行に行く日だ。心地よい期待感と少しの不安を抱えながら、彼は急いで準備を整えた。 山田は特に服部との再会を楽しみにしていた。服部に対する彼の気持ちは、ただの友情ではなく、恋愛感情へと変わっていた。しかし、その思いを告白する勇気はなく、二人の関係が壊れることを恐れていた。服部と会うのは数か月ぶりで、山

    • おぼっちゃま取締役②

      次家正則の毎日は、一見すると華やかで充実したものに見えた。しかし、その背後には創業家一族ゆえの嫉妬と戦う苦悩が隠されていた。 ある朝、正則は会社のオフィスビルに到着すると、エレベーターの中で同僚たちのひそひそ話が聞こえてきた。 「やっぱり、次家さんは特別扱いだよね。あんなに早く役員になれるなんて、普通は考えられないよ。」 「叔父が創業者だからって、ずるいよな。俺たちがどれだけ頑張っても、所詮は無駄ってことか。」 エレベーターのドアが開くと、正則は心の中でため息をついた

      • ①おぼっちゃま取締役

        次家正則は、自らの足音が廊下に反響するのを聞きながら、企業の役員会議室に向かっていた。彼は40代半ば、黒髪は完璧に整えられた短髪、スーツは一分の隙もない。次家正則は上場企業の役員としての地位を得ていたが、その出世の速さには彼自身も少しばかり戸惑っていた。 次家正則の叔父、次家正道はこの会社の創業者であり、企業の礎を築いた人物だ。正道は若い頃からの強い意思と情熱で、零細企業から一代で大企業に成長させた。彼の背中を見て育った正則は、その影響を大きく受けていた。 正則が会議室に

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