ウナギが故郷に帰るとき、を読んだ。
我らの角幡唯介さんが大絶賛しており、慌てて読んだ。
本著はただのウナギの生態に迫る内容ではない、訳者の大沢章子さんのあとがきから抜粋させていただくと、
本書はウナギの謎と、それを取り巻く人々についてのノンフィクションらしい明解な筆致で書かれた章と、筆者と父親とのウナギ釣りの思い出をより叙情的に語る章が交互に進んでいく構成になっている。
ウナギの生態については、読んでなるほどと驚くことが多かった。日本では高級食材として誰もが知る魚だが、どこで生まれているのかが未だ解明されていないという。サルガッソー海が彼らの産卵場所だと言われているが定かではない。
過去、何人もの学者がその謎に解明に挑むも、なかなか真相に辿り着かない。かのアリストテレスやフロイトもウナギの研究に没頭していたという。何百匹の個体を解剖し生殖器を発見しようと試みるが、全くうまくいかない。当時の彼らはウナギの変態を知らなかったのだ。
そして本著の隠れたスパイスとして絶妙に作用しているのが、著者と父親の回顧録的記述。なんともノスタルジックで胸にグッとくる。謎が多く、近年その個体数が激減しているウナギの存在と、既に逝去した自分の父親との思い出、そして家族のルーツを重ね合わせてくる。
明らかにならない存在。そして、人知れず消えゆく存在。最新のテクノロジーで地球上のあらゆる事象や物体の素性を、ある意味「あばいて」いく人間の行為に、静かに警鐘を鳴らしているように思えたのは自分だけだろうか。
素晴らしい文章というのは、その対象物は誰もが知る存在でありながら、それを詳しく調べて考察し記されたことがないもの...まさしく本著はその典型であり、素晴らしいノンフィクション。
是非、一読をオススメしたい名著である。
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