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タクシーに、乗りたい。

子どもの頃、将来なりたい職業にタクシーの運転手さんと書いた記憶がある。そういえば過去のnoteでも近しい話題が出していたのを思い出した。

数日前から手にしたこちらの作品を読み終えた。

はて、この本を選んだのは何故だっけ、と記憶を遡るが釈然としない。著者のプロフィールを拝見しノンフィクションという単語を見て合点がいき、そして苦笑いしてしまった。最近は健忘症に近い状況が頻発しつつある。

タクシーに乗るという状況は、いつでも自分には特別な時間だった。特に前職では接待の頻度も高く、夜の繁華街から得意先様のお見送りと、そして自分自身の帰宅の交通手段として利用させてもらっていた。

相応のアルコールが入り重要な接待を終え25時も超えた頃、やれやれという状態でタクシーに乗り込む。銀座界隈から埼玉のはずれまで90分程度。人生の先輩であろう運転手さんに、様々な真情を吐露する。

旅の恥はかき捨て。それに近しい状況かもしれない。仕事のこと、家庭のこと、そして過去と未来のこと。運転という主業務の傍で後部座席の乗客の話を巧みに受け答えする彼らは、ドライバーという職種を超えカウンセラーの域に達しているのかもしれない。

夜の都内の喧騒を駆け抜け、郊外に移ろう時間が大好きだった。車窓から臨む景色が、荒川に跨ぐ扇橋あたりで変わってくる。嗚呼、まもなく家に着くのだろうかという、オンオフ切替のスイッチが入るような瞬間。電車では味わえない特別な体験だ。

電車やバスなど、公共の交通期間と比較すればコストは確実に割高であることは自明の理である。それでも、タクシーを利用する人は決していなくならないと思う。特別な空間、そして特別な時間を欲している人がいるからだ。

タクシーといえば、こちらも過去に拝読したことがあるので、併せておすすめしたい。都会で生きる人達の、喜怒哀楽が詰まった名作である。また明日にお会いしましょう。



読書好きが高じて書くことも好きになりました。Instagramのアカウントは、kentaro7826 です。引き続きよろしくお願い申し上げます。