BUMP OF CHICKENツアー「be there」有明アリーナ初日(2/11)感想&レポ
BUMP OF CHICKENライブツアー「be there」。
バンド結成27周年にあたる2月11日が有明アリーナで開幕。
最高でした。2019年11月の「Aurora Ark」以来で観る単独ライブ。
ライブが素晴らしいのは、遠慮なく感情解放できるところ。
普段抑制されている日常を解き放ち、心のままに身体を揺らし、歌い、叫び、涙を流す。それがどれだけ自分に必要なことだったのかと、その場で体験して初めて気付く。生きているってこういうことかって真に感じられる。
日常でも僕は比較的素直に生きている方だとは思うけれど、それでも普段の平穏な暮らしの中で忘れられてしまったり、無意識のうちに抱えてしまうストレスはある。
ざわざわした感情を無意識の中にとどめてしまおうとするのは、日々を生きるために本能的にやっているのだと思う。常に顕わにされていたらとても生きていけないから。そして、忘れたことすら忘れた日常を生きている。
今回のライブから、声出しが解禁された。抑制されたライブでは実現できなかった解放と興奮に身を委ねることができる。
この数年で自殺者が急増しているという。それはそうだよ。日常生活だけでなく音楽まで手足を縛られて、希望を失った人が頼る場所すら奪われたらね。
座席
運よくアリーナ席が当たって、行ってみたら真ん中よりやや後ろ。
ちょっと遠いかなと思ったら、実はここが中央花道の先端に設けられたサブステージのすぐ目の前。1曲目からこのステージが使われる演出に震えつつ、彼らのパフォーマンスを堪能。距離にして10メートルもないくらいで、彼らと最も物理的に近付いた瞬間。
ライブ本編
オープニングは「アカシア」。
キラキラとしたイントロがリピートされる中、メンバーが1人ずつ登場して中央の花道を歩いていく。ドラムのヒデちゃん、ギターのヒロくん、ベースのチャマ、そして最後にボーカルの藤くん。
歌声より先に、この演出だけでもう涙が出た。
流れる日常はこの瞬間のためにあった。
アカシアは、最近のライブでオープニングの定番曲。
Silver JubileeでもROCK IN JAPANでも使われている。この曲がかかると、本当に素敵な時間がこれから始まるのだという確信が生まれる。シンガロングもあって一気にテンションの高まる名曲。
2020年にこの曲が発表されたあと、「早く次のライブで『オーイエー、イエー、アハン』のシンガロングをやりたい」と書いた。3年越しでようやく叶ったよ。これが泣かずにいられるかい?
組まれたセトリも最高。
有明アリーナ初日(2/11)セットリスト
アカシア
グングニル
天体観測
なないろ
才脳人応援歌
クロノスタシス
Flare
66号線
ベル
新世界
SOUVENIR
Glavity
スノースマイル
サザンクロス
GO
ray
fire sign
アンコール
ホリデイ
ガラスのブルース
BUMP OF CHICKENのテーマ
「天体観測」の演奏中、黒子のスタッフがさっとステージに上がってきて、演奏中の藤くんのギターを素早く調整し始めた。演奏は止まらず、藤くんはスタッフを気にするふうでもなくパフォーマンスを続けている。ギターの調整を済ませると、そのスタッフは風のように消えた。
トラブルは何もないに越したことはない。でも、それが起きた時にすぐ異変に気付き行動を起こせるのがプロ。それぞれが自分の役割を知っていて信頼関係が成り立っている。
「SOUVENIR」はハンドクラップが楽しい。
これはコロナ禍になってから作られた曲だから、シンガロングができなくても一体感を高めることができるようにという配慮で演出に入れられたのかな。「走って走って」のところで藤くんが走っていたw
有明アリーナは22年8月にオープンしたばかりで、彼らにとっても初めての箱。スポーツでの利用も想定されているためか、楽屋はサッカースタジアムの控室のように、荷物置き場とベンチシートが一体となっているロッカールームになっているそう。
最初、説明がうまく伝わらなくて観客がきょとんとしていると、チャマが「今Twitterに載せた」って。「試合の後によく映っているああいう感じよ」とチャマが興奮して喋っているのが楽しかった。
藤くん「控室にトイレが2つあって、ヒロどっち派?」
ヒロ「おれは右」
藤「おれも右。あ、一緒に使わないからな」
ノリがラジオと一緒。
「声出しできるようになって、こういう曲もできるようになった」という藤くんの言葉で始まったのが「新世界」。
歌詞「ケンカのゴールは仲直り」の直前で藤くんが入れる合いの手「ケッケッケッ」というのが好き。カラオケで歌う時も必ず入れちゃう。
サブステージでの演奏終了後、藤くんが「ベイビーアイラブユーだぜ」のフレーズを小声で歌いながらメインステージに戻っていく。だんだん声量を上げつつコール&レスポンスで観客を巻き込み、会場全体の一体感がさらに高まっていく。たまらないね。
「ray」は、これでもかというくらいひたすら跳ねて手を振った。
自分がいま生きている証を伝えたくて残したくて。
「ガラスのブルース」は、ライブで必ず観客にマイクを向けられるフレーズがある。前回2019年のときは、バンプのライブが初めてだったのでそれを知らなくて、うまく歌えなかったのが心残りだった。今回はバッチリよ。ちゃんと予習して行ったからね。
「BUMP OF CHICKENのテーマ」は音源が公開されておらず、ライブでしか演奏されない幻の曲。27周年の日、ライブの最後で聴けてうれしかった。聴いたのは初めてだけれど、歌い始めてすぐにその曲だと分かったよ。歌詞が「へなちょこバンドのライブにいこう」だったから。
記念日だから、「HAPPY」かこの曲か、どっちかやってくれるといいなあと思っていた。よかった。
追記:2日目のライブで「HAPPY」が演奏されたとのこと。両方聴きたいよ。
さらに追記:「BUMP OF CHICKENのテーマ」は、2023年4月発売のシングルCD「SOUVENIR」の特典Blu-rayディスク、「Silver Jubilee」ライブ抜粋の映像に収められた。
バンドとチャマの空気感
チャマが活動休止から復帰して1年半。
このライブでは、やっと元の活動レベルに戻った雰囲気が感じられた。2021年6月の復帰後、チャマの演奏活動は再開されたものの、当初はラジオ番組「ポンツカ」での発言も控えめだったし、2022年のSilver Jubileeでは、メンバー紹介時に観客に向かって頭を下げ、音楽を伝えることを真摯に取り組んでいくと宣言するなど、リスナーとの関係性の再構築に専念しているように見えた。
この時点では、Aurora Arkの頃のようなチャマのMCもなく、演奏以外で見られる尖った部分が削られているように感じていた。
最近はラジオにおいてもかつてと同じ空気感で話しているように見える。
今回のライブでは、MCと呼べる箇所はほぼなかったものの、立ち居振る舞いやコメントを含めて、いい意味で遠慮のないパフォーマンスで、欠かせないBUMP OF CHICKENのピースが揃った印象を受けた。
本当の意味でおかえりと思ったよ。
参考に、チャマ活動再開時に書いた記事はこちら。
演出全般
照明が今回も素晴らしかった。
特殊効果は控えめ。キャノン砲のような銀テープが発射されたり降ってきたりする演出はなかった。炎もなかった。会場の制約なのか予算上の都合かは分からない。銀テープはテンションが上がるので、可能なら使ってほしいなあ。
PixMobはAurora Arkのときより抑制的に使われていた印象。ただ、アリーナにいたからそう感じたのかも。前回は2階だったからね。高い位置から見た方が全体を見渡せて綺麗に見えるかもしれない。
フォトスポット
バンドロゴのフォトスポットは、会場に着いて一番最初に撮った。
昼間も青空に映えて美しかったが、夜に浮かぶBUMP OF CHICKENの文字が美しすぎて、永遠に見ていられる気持ちになった。
ツアートラック2台も自由に撮影可能になっていた。
物販
グッズ購入には事前にスマホで登録した物販整理券が必要で、概ね時間通りに呼び出され、スムーズに進んでいた印象。
今回購入したのはLogo Coach JacketとGravityタオル。
「be there」系のTシャツ、タオル、帽子等は4月の長野公演以降に販売される模様。
他のバンドのライブに行き慣れていないので分からないけれど、ツアータイトルのキービジュアルが入ったTシャツ、スポーツタオル、帽子などのグッズ類がツアー初日に間に合わないことってよくあることなのだろうか。
初日にしか行けないリスナーもいるし、同じTシャツを着ることで一体感を得たいと考える観客もいる。
キービジュアルの完成に時間がかかったのか、企画の問題か、いずれにせよロジまわりの不備でライブ当日にグッズが間に合わないという状況には、とても満足とはいえない。
グッズのためならいくらでもお金を使いたいというリスナーも多いので、ビジネスチャンスという意味でももったいない。数量の確保が難しかったのかな。
他方で、すみっコぐらしとのコラボ商品である「ぶらさげぬいぐるみ」は早々に売り切れた模様。2日目以降は購入制限が強くなるとの発表が運営からなされている。また、公演後に受注生産も行うとのこと。
このあたりの対応は迅速で素晴らしい。
さいごに
「明日はどうなるかわかんねえじゃん」
2019年11月4日のAurora Arkツアー最終日、藤くんはそう言った。
そして年が明け2020年になると、外出すら制限され、ライブが敵視されるような思いもよらない世界がやってきた。明日は本当にどうなるか分からない。こんなことになるなんて、誰が想像できただろう。
あれから3年あまりの灰色の世界を経て、ようやく迎えたこの日。
抑圧された日常からの解放が感じられるライブだった。
最後、ややはにかみながら藤くんは最後の言葉を口にする。
「ベタだけど、言っていいですか」という前置きに続けて大きな声で。
「いってきます!」
どうか、メンバー全員、最後まで体に気を付けて駆け抜けてほしい。
そして縛られた日常からの解放を伝えていってほしい。
いってらっしゃい!
(追記)
4月2日長野ビッグハット公演のレポを書きました。ぜひお読み下さい。
5月28日さいたまスーパーアリーナ最終公演と"be there"アプリのリリースについても書きました。こちらもお読み頂けるとうれしいです。