紀元1世紀の教会を訪れる(4)
ダイニングルームは、私たちが立っていたメインホールから続いていて、かなり広いスペースが確保されていた。
アキラとプリスカもここでよくやっている。
彼らの家で集会が行われている理由も分かったような気がした。
クレメンスのアパートでは、子どもを含めて9人のゲストを迎えるのがやっとだろう。
アキラのアパートの元の所有者は、ヴィトルヴィウスが提唱していた「ダイニングルームは横幅の2倍の長さが必要」という言葉に同意していたことは明白だ。
つまり、テーブルを囲む3つのソファを2つに分けて配置することで、最大18人の大人が入ることができ、必要に応じてテーブル前のオープンスペースにベンチやスツールに6人の子供を座らせることができるのである。
中に入ると、プリスカ(仲間たちは親しみを込めてプリスキラと呼んでいる)がそれぞれの席に案内してくれた。
「プブリウスさん、最初のテーブルの近くにある、真ん中の寝椅子に掛けていただけませんか?」
彼女は何か間違えているのではないかと思った。
そこは普通、最も重要なゲストのためにリザーブされる場所だったからだ。
「ここ、でしょうか?」
私はその場所に行くと、自信なさげに尋ねた。
最も重要なゲストのためにリザーブされる場所
彼女が笑顔で頷いたので、私は言われた通り自分の席についた。
私のそばにはクレメンスとユウオディアが案内された。
本来なら私の席に座るはずだろうアリストブルスは、彼の奴隷と一緒にユウオディアの左側へ、それほど重要でない客用の長椅子に座っている。
この二重のエチケット違反をどう受け止めるか気になったが、彼は気に留める様子もなかった。
もし、気に留めていたのだとしたら、憤りを隠すのがよほどうまいのだろう。
これまで参加したことのある食事会であれば、彼が憤然として退席してしまっても不思議ではない出来事だ。
彼の向かい側になる長椅子には、私の右側の定位置にアキラが、さらにその隣にはプリスカが座った。
部屋の反対側には、3人掛けソファーがもう一つ向かい合わせに配置されていたので、全員が顔を合わせられるようになっている。
そして、3人の子どもたちは、中央の折りたたみ式のスツールに座っていた。
母親と父親と長男はその左側に、祖母は反対側の末の女の子の隣にある長椅子に座った。
左側には、まだ来ていないゲストのために、テーブルの両側にいくつもの空席が残されていた。
その何人かがようやく到着したようだ。
ユダヤ人の機織り職人とその妻、そして魅力的な2人の娘が、皆に挨拶されながら入ってきて、他のテーブルの人たちに加わった。
その数歩後ろには二人の解放奴隷がいて、私たちのテーブルの残りの席に着く。
彼らは持ち寄ったおみやげを、テーブルの上の、先に置かれていた物の隣に置いた。
解放奴隷の一人ガイウスは、ローマの名門一家に雇われ、その子供たちの家庭教師をしている。
彼はその家で奴隷として生まれたのだが、最近よく耳にするように、忠実な仕事ぶりが認められて奴隷から解放されたのだそうだ。
元主人の願いと、本人の希望により、彼は今も仕事を続けている。
もう一人の解放奴隷であるハーマスは、前の主人に追い出され、一人で生きていくしかなかった。
だが、何カ月も仕事が見つからなかったため、政府の補助金と小さなグループの援助に頼って生きてきたのである。
彼らに私を紹介し、彼らの状況を説明した後、アキラは立ち上がり、静粛を呼びかけた。
(つづく)
Presented by RACネットワーク
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