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2つの意味を持つサウンドスケープデザイン その1

今回は従来のサウンドスケープ論をお話します。

サウンドスケープとは?

この言葉聞いたことありますか?これはカナダ人作曲家のマリー・シェファーが言い始めた言葉なんです。

サウンドスケープは直訳すると「音景」になります。

サウンドスケープ論は80年代ごろから提唱され始めていますが、未だ建築系や不動産業界には認知されていません。

そもそもこれが提唱されたきっかけは、産業革命まで遡ります。

産業革命が起きてから生活環境が著しく変わり、労働者は工場などへ働きに行くようになりましたがその結果、工場の騒音が原因で多くのストレスを抱える者が増えしまいました。

彼は豊かな音環境をハイ・ファイ、騒音塗れな状態をロー・ファイと名付けました。

近代化や都市化が進むにつれて私たちが聴いている音も変化していきます。

ですがそれは進化ではなく後退しているという意味合いになるでしょう。

それを町単位やある区画まで俯瞰してみたときに、その場所の音環境がどのような状況であるかをリサーチし社会問題として解決していくことが本来のサウンドスケープデザインになります。


サウンドスケープデザインがもたらすモノ

かつて人類が住んでいた熱帯雨林や森林の音環境は今でも私たちが安らぎを求めるときに欠かせません。

その場所に発生する「ゆらぎ」や「周波数成分」を計測し上手く活用している音響メーカがあります。

主にそれらを用いたデバイスはオフィス空間に導入されることが多いです。

人々が働く環境を心地よく仕事しやすくすることは大事だと思います。

自然環境の疑似体験をしながら作業できる時代になったわけです。

部屋単位で見たときにはそのような取組みをしていますが、もっと大きな建物・区画・町で見たときに果たしてどこまで音環境をよくすることができるのか。

人が行き交うところほど音はたくさん発生しますよね。

例えば、自宅から職場や飲食店、友人などと待ち合わせにどこかへ向かうとしましょう。

その目的地へ向かうまでにいろんな場所を通りますが、到達する間に様々な場所で、様々な騒音を耳にすると思います。

無意識に聴いている音が実はストレス増加や感性を鈍くさせ、さらに生きやすさという生きるために必要な本質的な部分を阻害してしまっているのかもしれないのです。

サウンドスケープデザインは失われた豊かな音環境を作り直し、少しでも生きやすくそして感性が豊かになり創造力を培える社会を作る一役を担えるかもしれません。

こういった取組みは欧米諸国で見受けられます。向こうの方が率先してサウンドスケープデザインを用いた街作りをしています。

海外のサウンドスケープデザイン

こちらを参考までに見てください。

これはスウェーデン都市マルメーにある噴水です。

この噴水を置くことで耳を周囲の騒音から遠ざけ、水の音に手中させることができます。

本来のマスキング効果とちょっとズレますがこれも立派なサウンドスケープデザインです。

こういった騒音軽減を目的としたデザインから、遊びを目的としたモノもあります。

これはリサイクルを楽しくする方法としてこういった取組みがされています。

ゲーム感覚でリサイクルすることで無意識にその意識を宿す、そんな効果がありそうです。

日本のサウンドスケープデザイン

知らない間に良質なサウンドスケープデザインに出会っていることがあります。

代表的なのが日本庭園です。

ご紹介するのは京都・無鄰菴の庭園。

この庭園のすぐ横には道路があるそうですが、その騒音を庭の壁や壁面に沿って作られた滝が音を吸収する役割を担っています。

このように静けさを生み出すことが神聖な世界を作り上げているのかもしれませんね。

ただ自然環境を都市の中に作る時はこれくらいの計らいがないといけないのでしょう。

東京ですと私が訪問したことのある根津美術館内にも日本庭園があり、そこでも似たような取組みがされている可能性はあります。

ここに限らず庭園と称されるところは自然とサウンドスケープデザインがなされているのです。

ここから何を学び取り、今の時代の都市空間にどのように変化させていけば良いのかが課題になります。同じようなことを繰り返しても意味がありません。時代によって私含め人々の感性や考え方、生き方は変わっていくものです。

過去を尊ぶことは大切です。しかしその過去を破壊して新たに作り上げることが今生きているこの瞬間に必要な姿勢だと思います。



神山聴景事務所





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