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「青天を衝け」レビュー⑮ 徳と才

おばんです(朝読んでいる方は、おはようござりす)。
 せっかくなので、渋沢栄一が主人公の大河ドラマ、「青天を衝け」で気になったところを考察していきたいと思います。
 とは言っても、あらすじなどは他の方々がわかりやすく書いているので、僕が気になったポイントだけ見ていきます。

今日は、渋沢栄一が西郷隆盛に言った言葉
 「薩摩の今のお殿様にはその徳がおありですか?おありならそれもよいと思います。それがしは徳ある方に才あるものを用いてこの国を一つにまとめてもらいてぇ。」あたりを考えます。


『南洲翁遺訓』より

 上記の「それがしは徳ある方に才あるものを用いてこの国を一つにまとめてもらいてぇ。」ですが、西郷隆盛の遺訓集である『南洲翁遺訓』に、似たような言葉があります。

 官は其の人を撰びて之れを授け、功有る者には俸禄を以て賞し、之れを愛し置くものぞと申さるるに付き、然らば「尚書」仲虺の誥に「徳懋んなるは官を懋にし、功懋んなるは賞を懋んにする」
(『南洲翁遺訓』一、功には賞で徳に官 より)

 徳のあるものには役職を、才のあるものには報酬を、という感じでしょうか。この言葉は、『書経』から引用したと言われているので、渋沢栄一も西郷隆盛も共通の認識でいたことでしょう。

 仁徳のある人と、才能のある人の役割分担についての考えです。徳と才、どっちも備えていれば言うことなしなのですが、なかなかそういう人はいません。なので、それぞれ役割を決めたほうがうまくまわりやすいよ、という感じだと思います。

 この例で言えば、
  ・漢の劉邦、蜀の劉備、徳川家康…徳寄り
  ・韓信、諸葛孔明、本多忠勝…才寄り
 みたいな感じでうまくまとまるような気がします。


『荀子』より

 また、リーダーが徳を説くことの重要性について、『荀子』の一節から引いてみます。

 故に仁言は大なり、上に起こるものは下を導く所以にして政令是なり。下に起こるものは上に忠なる所以にして諫救(止)是れなり。故に君子の仁を行うや厭くことなし。志はこれを好み行はこれに安んじてこれを言わんことを楽うなり。故に君子は必ず辯ず。
 現代語訳 だから仁なる言葉ことが重要で、上位者の間に起こったものは下民を導くもので政令がそれであり、下位者の間に起こったものは君主に忠義だてをするもので諫言制止がそれである。そこで君子はあくまでも仁を実践する。心志はこの仁徳を好み行為はこの仁徳に落ちつきそしてこの仁徳を人にも語りたいとねがい。故に君子は必ず弁舌するのである。
(『荀子』非相篇第五 八 より)

 ただ上からの命令だけでは下はついてこない。リーダーの言葉は「仁言」でなければならず(当然、ただ言うだけでなく、心からそう思ったうえで言うこと)、共に、行動が伴わないと誰も信用しないよ。ということだと思います。それができない状態の行き着くところ、「苛政は虎よりも猛し」となってしまうでしょう(コロナ禍、オリンピックを控えての今の政治は「苛政は虎よりも猛し」状態になってる気がしますが…これ以上はやめときます)。

おまけ(15話関係)

 博多華丸の西郷隆盛役は、個人的にどハマりですねー。

参考文献


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