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『スポーツ』と『習い事』と『自由遊び』と『クラブ』

 総合型地域スポーツクラブ マネジャーの上杉健太(@kenta_u2)です。最近、「その通りだよなー」と思うことの一つに、『アドバイスはその通り、そのままやるべきだ』があります。多くのアドバイスは無視され、アレンジされ、無効化されているそうです。たぶん私もそうしてしまっています。アドバイスをその通りにやると、結果がどうあれ、少なくともアドバイスをした人は責任を感じるので味方になってくれるそうです。確かに!!次にもらったアドバイスは、絶対にそのままやってみようと決めました。誰か何かアドバイスお願いします!

 さて、今日は総合型地域スポーツクラブをやっていていつも悩ましいと思っている『スポーツと習い事と自由遊びとクラブ』をテーマにお話したいと思います。先に私の価値観をお伝えしておくと、『自由遊びが基本的には最強』です。自分が好きなことを、自分が好きなタイミングで、誰かに強制されるわけでもなく、自由な発想でやる自由遊び。これに勝る成長ツールは基本的にはないんじゃないかなと思っています。とはいえ、現実的には自由遊びだけに成長を任せるのって怖いし、そういう社会にはなっていないので、習い事という観点も入ってくるし、クラブ活動という観点も入ってくる。だからただただ「遊んでればいいんだ!」と突き放すことはできずに、うーむと常に考えながらクラブの仕事をしています。

四者の関係性の整理

 『スポーツ』『習い事』『自由遊び』『クラブ』は、どれも非常に深い関係性にあると思います。自由遊びでスポーツをやることもありますし、クラブ活動の王道はスポーツだと思いますし、習い事としてもスポーツは上位に来ますし、最近ではクラブが習い事として認識されている面もありますよね。ただ唯一、包含関係になさそうなのが、『習い事』と『自由遊び』でしょうか。

無題のプレゼンテーション

 総合型地域スポーツクラブは、この全ての要素を持つと思っています。現実的には、『自由遊び』があまり取り入れられていないクラブは多いと思います。たかぎスポーツクラブもそうです。決まった時間に、決まった場所で、決まった活動を行うというのがクラブになっていて、そこに自由さはさほどありません。クラブというのはある程度そういう性質を持っています。ただし、会員がほとんど自主的に活動しているサークルなんかは、たかぎスポーツクラブの中でも自由遊びに近い部分があると思いますし、意図的に自由遊びの場になろうとしている『スポーツ広場』というコンテンツもあります。(後で説明しますね) なので、自由遊びという要素を取り入れられないわけではないですし、個人的にはもっと取り入れていきたいと思っています。

習い事のジレンマ

 さて、とはいえ総合型地域スポーツクラブってどんな存在かというと、『色々なことが習えるところ』と思われていることが多いと思います。コーチがいて、時間や場所を確保してくれて、道具も用意してくれて、そこに行くだけでスポーツを”教えてくれる”。そう思っている会員はたぶん多いです。これはつまり、「何かを習いたい!」というニーズに、総合型地域スポーツクラブは応えられているということですね。それはシンプルにいいことですよね。
 ただし、スポーツを習い事としてやるデメリットみたいなのは確実にあります。それは、受け身になりやすいということです。習い事の必須条件は、指導者がいるということですよね。で、指導者の指示に従うというのが前提です。みんながその指導者に習いに来ているわけですからね。それが当然です。習い事の場合は。そうすると、どうしても受け身になりますよね。言われたことをやるという姿勢になる。そうすると、あまり自分で考えないでもスポーツができるようになってしまう。ルールやハンデ、使う道具などの条件設定を自分で考えなくても、指導者が考えて用意してくれていたりする。私はなるべくそうならないように気を付けていますが、大人の関与がある以上、どうしてもそうなりやすいですよね。また、集団での習い事の場合は説明の時間が必要だったり、待ち時間というのも発生する場合もあります。
 直接的にスキルを伝達するのは習い事の得意分野だと思いますが、自分で考える力が育ちにくかったり、運動量が確保しにくかったりというリスクも抱えているんですね。もちろんこれは、指導者の質にもよる話だと思います。

自由遊びのジレンマ

 じゃあ習い事としてスポーツをやるのではなく、自由遊びの中でやるのがいいかと言われれば、それもまた一概には言えないのだと思います。基本的には、人を集めることができて、場所を確保することができれば、自由遊びでスポーツをやって欲しいなと思ってはいます。しかし現実的にはそれはかなり難しい。まずスタートラインとして、外で遊びにくい社会になってしまっているし、かなり多くの親が共働きで、子どもはどこかに預けられている。そしてそんな背景から、いくつもの習い事をする子どもが凄く多くて、なかなか時間を合わせて遊ぶのが難しくなっています。なので、教室やクラブなどのように、大人のスタッフがいる場所で子どもは活動するしかないというのが現状だと思うんですね。
 さらに、自由遊びができる環境があったとしても、自由遊びも完璧ではありません。ご自身の子どもの頃の記憶を”正確に”思い出して欲しいのですが、自由に遊べる時間に、うわー!って、いつも目一杯遊べていたかというと、結構違うと思うんですよ。「やることないなー」「何しようかー」とか言いながら、木の枝で地面をガリガリし続けていた、なんて時間も結構あったはずなんです。もちろんそれはそれで大切な時間なのだとは思いますが、習い事のような待ち時間はなくても、自由遊びにもかなり動いていない時間はあったはずなんですね。大人になると子どもの頃の記憶を美化してしまうので、「私たちはもっと活発に遊んでいた。それに比べて最近の子どもは遊び方を知らなすぎる」なんて言われたりもしますが、たぶん昔の子どもとは環境が違うから差が生じているだけで、昔の子どもも遊び方が分からずにほけーっとしていた時間はあったと思います。
 基本的には自由遊びでのスポーツが一番楽しく、脳みそが活性化され、成長にも繋がると思ってはいますが、負の面だって当然あるということですね。さらに、技術的な指導もそこにはないので、新しいスキルの獲得という点では、ある意味では習い事よりは不利と言えるかもしれません。(自由遊びでもかなり多くのスキルを獲得してましたけどね)

現実的なクラブの立ち位置

 習い事としてのスポーツには、「これでは主体性に欠けるなー」や「運動量の確保が難しい」というジレンマがあり、自由遊びとしてのスポーツには、「社会環境的にそれは難しい」や「実は自由遊びってそんなに動いていないよ」というジレンマがあります。何事もメリットとデメリットがあるので、当然の話ですよね。
 そんな中で、総合型地域スポーツクラブはどういう立ち位置を取るかというのが大事かと思います。で、総合型地域スポーツクラブというのはスポーツの多様性を認める存在でなければならないと思うので、当然、『習い事としてのスポーツ』も、『自由遊びとしてのスポーツ』も認めなければならないと思います。認めるというのは、何らかのメッセージとして発信しなければ意味がありませんから、ちゃんと事業(コンテンツ)を作らなければなりません。(事業はメッセージだ!)
 習い事としてのスポーツについては、多くの総合型地域スポーツクラブがやっているように、いわゆる『教室事業』を行うということでメッセージを発信できます。ただし気を付けなければならないのは、”教室だけ”になってしまうと、『スポーツ=習い事』という誤ったメッセージにもなり兼ねないということです。それは多様性を認めていることにはなりませんよね。なので『自由遊び』のコンテンツも必要です。
 じゃあ『自由遊び』をコンテンツ化するのって、どうやるの?って思いませんか?私はもの凄く思います(笑) 自由遊びって、自由という条件が必須なので、約束事をしてみんなで一緒にするクラブとは、ある意味では相性が悪いんですね。でもそれを言い出すと真の自由遊びなんてものはこの世にほとんど存在しなくなっちゃう気もするので、現実的な自由遊びを、『大人が関与しない活動』にすると、見えてくるものがあります。(子どもに限定した話です)
 例えば答えの一つが、『クラブハウス』です。クラブの会員がいつでも来れて、自由に遊べる場だけを作って、そこで何をしようがスタッフは関与しないという態度を取れば、クラブに自由遊びがやってきます。ただ、本当に環境の悪い公園では誰も遊ばないように、クラブハウスだってあればみんなが遊ぶわけではありません。そこには遊び道具であったり、使いやすいスペースであったり、最低限の遊べる環境が必要なので、クラブとしてはそこをコンテンツとして捉えて設計すべきかなと思います。たかぎスポーツクラブのクラブハウス運営で一番衝撃的だったのは、『卓球台』です。卓球台さえ一台置けば、本当に誰でも自由に遊ぶようになります。これでクラブハウスの雰囲気がガラっと変わりました。あ、まぁ卓球に限定されるので自由遊びではないのかもしれませんが、まぁ大人の関与がなく自由意志なので自由遊びとしてください(笑)
 もう一つたかぎスポーツクラブの取り組みで紹介したいのが、『スポーツ広場』です。これは、毎週水曜日の放課後に1時間、登録した会員が集まってスポーツをするという活動です。決まっていることは、『時間と場所』、『違う種目を2つやるということ』、『子ども達自身で種目とルールを決めるということ』です。そこにスタッフがコーディネーターとして付きます。これが現実的に自由遊びを総合型地域スポーツクラブのコンテンツに落とし込んだ形です。

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総合型地域スポーツクラブや筆者の挑戦のリアルな実態を曝け出しています。自ら体を張って行ってきた挑戦のプロセスや結果です! 総合型地域スポーツクラブをはじめ、地域スポーツクラブの運営や指導をしているかた、これからクラブを設立しようとしているかた、特に、スポーツをより多くの人に楽しんでもらいたいと思っているかたにぜひお読みいただきたいです!

総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…

総合型地域スポーツのマネジメントを仕事としています。定期購読マガジンでは、総合型地域スポーツのマネジメントに関して突っ込んだ内容を毎日配信しています。ぜひご覧ください!https://note.com/kenta_manager/m/mf43d909efdb5