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「人が描けない」から抜け出すための1年間

皆さんは、克服したいけど頑張れていないことってありますか?
本当はやりたいけどなんだか苦手で、結局見て見ぬふりをしているようなこと。

僕にとっては人を描くということがまさにそれでした。大学時代に苦手と思って以来、ずっと人を描くことから逃げてきました。

ここ数年は大して練習もしてないのに自分の描いた下手な人体を見てはへこみ、「人を描くのはあんまり興味ないんだよねー」と周りに言い訳をする、、、本当は描きたいのに

今回のnoteはそんな自分に蹴りをつけるべくスケッチブックに1年間ひたすら人を描きまくった記録です、、、!

この6冊+iPadで描きまくった

前提

振り返りに入る前に苦手になった経緯と克服のプランを短めに。

なぜ苦手になったのか

苦手になったのは大学時代、アナトミー(解剖学)の授業を楽しめなかったことが始まりです。
人体を正確に描くには、筋肉や骨、それらがどう繋がっていてどう動くのかといった知識が必要になります。人間を描く授業の一番最初にそれを習うのですが、どうしても興味が持てず、勉強に身が入りませんでした。その後の授業は知識がある前提で進むので、理解していないから怒られる→もっと嫌いになる、のループです。

どう克服するのか

そこで今回は興味が持てないアナトミーはやらず、「人間を描くということに慣れる」という方針で、「周りの人間を観察して描く」というシンプルな方法をやってみることにしました。いわゆるスケッチです。大体はカフェか道路脇に座って描き続けました。


ここから先は誰にも見せたことない練習初期の絵も載せて振り返っていきますかなり怯えながら公開するので、楽しんで読んでいただけると報われます!笑


時系列に振り返ってみる

ひたすら辛い期

-2021年7月-
スケッチの頻度:週5〜6回

初期のスケッチ

スケッチブックを遡ると、2021年の7月に描き始めたようです。とりあえずノートをもってカフェへ行き、そこにいる人を描いてみました。思っていた以上に描けなかったですね、、。手と足が描けない、頭身もわからない、服装まで意識が回らない、、!

自分が描けないのはもちろん知っていましたが、ここまでとは、、。
※一応絵の大学を出ています

腰から下の描き方は特にわからない

ちょっと描いては上手くいかずにへこみ、なんとか次の一体を描くといった感じです。おかげで描くのがすごく遅かったですね。

今までだったらこのタイミングで自分の下手さから目を背けて言い訳モードに入るところですが、今回は踏ん張るぞ!と自分に言い聞かせます。笑

最初の絵から一週間くらい

開始から一週間くらいの絵。流石に一週間じゃ変化はないですね、その後もカフェに通い続けます。

ipadでも描いてみる

試しにiPadでも描いてみます。細かいところが気になって、1時間半かかってこれしか描けませんでした。これは本当に先が長い、、!

-2021年8月前半-
スケッチの頻度:週5〜6回

8月前半のスケッチ

始めてから3週間後くらいの絵。まだ変化はありません。

自分のスケッチブックを見てはがっかりする日々が続き、正直辞めたかったです。笑 もう少し進歩が見えるかなと思っていました。

これは無理かも、、、と思いつつも「今日一日だけ頑張ろう」と仕事終わりに人を描く日々。

引き続き週5〜6回のペースで続けています。

-2021年8月後半-
スケッチの頻度:週5〜6回

ページが埋まり始めた!

始めてから1ヶ月半くらい、同じ時間で描ける量が増えました!人を描くことに取り組んで、初めて起きた変化です。

自分の実力(の無さ)に慣れてへこむことが減ってきたのを覚えています。こうなると1体描いた後に落ち込む時間が無くなるので、休まず描けるようになりました。それと、服装を描く余裕が少しだけ出てきました。服のストライプを描いてみよう、とか。

1ヶ月半続けてようやく変化が見えたことでモチベーションが少し回復します。

-2021年9月前半-
スケッチの頻度:週4〜5回

iPadでカフェスケッチ

9月は鉛筆とノートの組み合わせに飽きて、iPadで描いていました。iPadだと細かいところばかり気になってしまって(ズームできるので)、とにかく時間がかかる状態に逆戻りしました。

ただ、「飽きを感じた時は画材を変えると新鮮な気持ちで描ける」というのは普段のスケッチ(風景など)で知っていたので、そのまま続けます。

iPadで描き続ける

この人は平日の行動範囲と時間が被ってるらしく、毎週カフェで見かけていました。(カフェスケッチあるあるな気がする)

ごちゃごちゃしてしまいました

何描いてるかよくわからないですが、こういうごちゃっとした絵も大量にあります。なかなかうまくいかないもんです、、。

辛い感覚麻痺してきた期

-9月後半-
スケッチの頻度:ほぼ毎日

iPadスケッチ
だんだん慣れてきた

細かいところを気にせずiPadで描くことができるようになってきました。多少失敗しても「下手で何が悪いんだ、次!」と切り替えができるようになりました。人の特徴も以前より差別化できるようになってきた、、かもしれません。

この絵を描いた時にオーバーオールがダルダルな感じに描けてすごく嬉しかったのをよく覚えています。ルーズなシルエットがかっこよくて「描きたい」と思って描いた絵でした。

今振り返れば、これはすごく大きな変化です。
これまでは目の前の人の形を追うだけだったのに、「こう表現したい」と思えてそれを実行した初めての瞬間だったんです。当時はそんなことには気づけてませんが、、笑

オレンジで下書きしてる

これは下書きをちゃんとしてみようと思って途中で諦めたやつです。全然できなかったですね。

急にうまくいった一枚

なんだか調子の良かった日に描けた絵です。
急にすごく気に入った一枚が描けて、めっちゃ緊張しながらツイッターに投稿したのを覚えてます。(今までの練習はほとんど投稿していませんでした。)

優しいみなさんから褒めてもらえて、泣くほど嬉しかったです。

人を描いて褒められるというのは、自分にとって初めての体験で、多分この絵に優しい言葉をもらえてなかったら続けていなかったと思います。そのくらい、ここまでの2ヶ月半はしんどかった。たかだかスケッチなので気楽にやるべきなんですが、苦手意識から力が入っていたんだなぁと思います。やめなくて本当によかった、、!

こちらも同時期、タリーズで勉強する高校生達

さっきの絵が描けたことで、人も含めたワンシーンを描きたい、、!みたいな欲が出てきてます。

-10月前半-
スケッチの頻度:週3回ほど

色を塗ってみる
色塗りにトライ

急に思い立って色を塗ってみたんですが、全然できない。風景だともう少しまともに塗れるのに、、と思ってしまいます(多分そんなことない)。仕事がちょっと忙しくて、スケッチの頻度が減っていた頃です。

これも同時期のもの

こちらはスケッチ会で描いたものです。みんなが集まるスケッチ会で描いたのに、恥ずかしくて誰にも見せなかった絵です。

ちなみにこの絵を描いてる時に、色を塗る時に線を残してもいいんだっていう今更な気づきを得ました。笑

-10月後半-
スケッチの頻度:週3回ほど

単純な形で描けないかなと実験
表情と他でデフォルメ変えてみる

塗りに行き詰まり、飽きて遊び始めてます。笑
2週間くらいずっと色んな描き方を試していた記憶があります。

-11月-
スケッチの頻度:週4〜5回

色鉛筆を使ってみる
こちらも色鉛筆

少しスケッチの頻度が回復してきましたが、まだ描き方を色々変えて遊んでいます。気分転換に色鉛筆も使ってみたんですが、使い方がわからなすぎて10枚程度描いてやめてしまいました。笑

うまく塗れた!

その後、再び塗りにトライ。前よりもずっと思い通りに塗れました!数週間遊びのように気楽に描いてみたことで、リラックスしてトライできたのかなと思います。

この絵は「子供」って感じの鮮やかな赤色のTシャツ大人用の椅子に浅く座って必死に勉強してる姿が素敵で描きました。

仕事帰りにカフェで

こちらも割と気に入っているものです。冬用のアウターが角張っているのがカッコ良かったです。

-11月後半-
スケッチの頻度:週4〜5回

線を残して塗ってみた

引き続き塗りに挑戦中。線を少し残してみるも正解がわからない。逆光気味の薄暗い光の中でスキンヘッドがかっこよく見えて描きました。

こちらも線をうまく残したかった

こちらは何を描きたいのかわからずに進めてしまって、ぼやっとした印象になってしまったものです。

スケッチ以外の練習にも興味出る期

-12月-
スケッチの頻度:週4〜5回

12月に入ると、仕事後に会社近くのカフェで人のスケッチ、帰宅後は家で「ロレンツォのドローイングチュートリアル」という本の模写をしていました。

ロレンツォの模写

簡易的に描ける方法がたくさん載っているので、アナトミーに興味が持てない僕には合っている練習だった気がします。笑

ロレンツォの模写

こちらもロレンツォの模写、鼻を描いてます。
この練習は気分転換のために万年筆でやっていました。

-2022年1月-
スケッチの頻度:週3回

スケッチ会で描いたもの

気分転換にアナログに戻ってみました。この日はみんな冬らしいモコモコのダウンを着ていたのを覚えています。鉛筆で線を引くのがすごく楽しく感じてモチベが上がったのですが、仕事の忙しさからスケッチの頻度が下がってしまいます。

会社終わりのカフェで

こちらはiPadでの線画。iPadでハッチングを試みています。

人を描くのが苦手だった自分がなんとキャラ模写を始めたのもこの時期でした。思いつくままに好きなアーティストのキャラ模写を一日30分だけやるのが日課になりました。

Chris Sasakiさんのキャラ模写
松浦聖さんのキャラ模写
Juliaon Roelsさんのキャラ模写
模写させてもらったアーティストの名前を表紙に書いていた

キャラ模写では技術を学んだというよりも、人が描けるようになった後の光景を想像できるようになりました。自分もこんな風なキャラが描けるようになりたい、と思わせてもらいました。

-2月-
スケッチの頻度:週4〜5回

近所のカフェでスケッチ

この時期には、人を描く苦手意識はほとんど消えていて、自分も好きだなーと思えるスケッチが多少出てきました。(以前は自分が描いた人を気に入ることがなかった。)この絵の哀愁漂うおじさんは、今だに好きなスケッチの一つです。

なんでこのスケッチが好きなのかを考えて、「その人らしく」描けたからだと気づきました。上手に描けてるわけじゃないんですが、哀愁を描けた気がするというか、感じた雰囲気と絵の印象が近いんです。

このあたりから、正確に描こうという気持ちは減って、「その人らしさ」を表現したい、と思うようになりました。自分の中で判断基準が変わったポイントだったと思います。これは今も大切にしていることで1年間の練習の中でも特に大きなメンタリティーの変化でした。

2月はこのカフェによくきた

これも同時期に、同じカフェで。
「その人らしさ」を描くために観察の時間を長く取るようになっています。しかしどうやったら「その人らしさ」を描けるのかはわかっていません。

-3月-
スケッチの頻度:不明

ピンクが春っぽくていいなぁと思ったが描きかけ、、

プライベートと仕事とが重なって、この月が一番スケッチにいった回数が少ないみたいです。線と塗りを合わせることはいまだにできず、、。

ファンタジーキャラ

3月はなんとキャラを描いてみたくなり、会社の友達にお題を出してもらいました。ファンタジーキャラのお題をたくさんもらって昼休みに描いていました。

描いている間は松浦聖さんの本をずっと横に置いて勉強しながら。

-4月-
スケッチの頻度:週4〜5回

電車の中でiPadスケッチ

この頃は、線画とvalue(明度)だけって描き方もよくやりました。
ポカポカの電車内で寝落ちてる女性がいいなぁと思って描きました。

雨の明治神宮前

こちらはスケッチ会で描いたもの。たくさんの傘が動く様子が楽しげに見えました。

雨の日

こちらも同じ日に描いたもの。
なんか「らしく」描けた気がした絵です。線のブレがビニール傘の弱々しさとマッチしてる、と自分では思っています。

「その人らしさ」って、その人のどこを描くかだけじゃなく、どう描くか(線の歪みや強さ、塗り方など全て)で表せるのか、、!という気づきを得ました。

人描くの楽しい期

-5月-
スケッチの頻度:ほぼ毎日

電車とカフェで

電車でのスケッチ。服の柄って線で描くと目立ちすぎて苦手だったんですが、これは好きな感じに描けました。

ピクニックにて

こちらはスケッチ会のピクニックで描いたものです。春の陽気で気持ちのいいスケッチ日和でした。確かこの絵は15分くらいでスムーズに描けたものです。

ここで一度、下の絵を見て欲しいです。この振り返りの一番初めに貼った画像です。以前はこの絵に1時間半掛かっていたことを考えると、中々成長できたのではないでしょうか。

描き始めた頃の絵
会社帰りにiPadで
木の棒を持ったおじさんを駅で見かけました

このあたりも5月。上達してる実感があって、人を描きに外に出るのが楽しくてしょうがなかったです。会社終わりに駅前で座って描いてたりするので、たまに同僚と遭遇してました。

このあたりの絵は視覚的に気に入ったポイントにだけ色を入れてみてます。それと紫のお兄さんは、細身で頬や手の骨が目立っていたので、直線を多めに描いてみてます。(効果があるのかはわかりません。笑)

-6月と7月- ※最終月です
スケッチの頻度:週4〜5回

iPadでスケッチ

右の絵はサラリーマンのお兄さんがぼーっとしながらスマホをいじっている様がなんだか都会的でいいなと思って、演出として窓の外に灯りを足しています。

こちらもiPad

この頃はもっと作品として見応えのあるスケッチをしたい、と思って描いていました。絵として完成するように、色を置く場所を考えたり、いいと思った要素を強めに強調したり。中々難しいですが実験を続ける日々です。

勢いで7月のスケッチまで載せちゃいましたが、1年間の振り返りということだったので、一旦ここで終了です。

さて、ここまで読んでいただいた方、いかがだったでしょうか。1年を通しての練習で人を描くことを克服したと言えるのか、、、この先は僕の感想を書いていきます。

終わってみて

苦手は克服できたのか

まず苦手意識はほぼ無くなりました!以前は苦手意識から人を描いても周りに見せるのが苦痛だったり、描くこと自体を楽しめなかったりしましたが、今ではそんなことはありません。むしろ人を描くのは楽しいことだと思えるようになりました。

価値観の変化

個人的に一番嬉しかったのは、自分の価値観の変化です。初期は人の形やポーズを正確に写す事にしか意識が向かず、その期間は人を描くことを楽しめませんでした。

そこから「その人らしさ」を描けばいいと気づけたことが大きかったです。よく観察して「その人らしさ」を自分なりに見つけ、それをどう表現するかを考える作業は今では本当に楽しいです。この変化は、この先も絵を描いていく上で大きくプラスになると思います!

大事なことに気づかせてくれた一枚

自分の現在地を受け入れる

振り返ってみて面白かったのは、序盤の苦しかった時期にほとんど上達が見られなかったことです。自分が描く人の絵が嫌いで、こんなんじゃないとへこみ続けていた時期のことです。

量をこなせばいいというわけではないですが、僕の場合は自分の実力を受け入れるのにたくさん描く必要がありました毎日毎日へこみ続けて、やっと下手くそな自分を受け入れられたというか。必要な時間だったんだなと今では思います。

しんどい中でも描き続けたから開き直ることができ、その後の気づきに繋がりました。

こうなるのに量をこなす必要があった

最後に

苦しい時期も、楽しい時期もありましたが、1年間粘ってみて本当によかったと思います。この1年は今後に大きくプラスになるなと、自分で思えるのが何より嬉しいです。練習中に優しい言葉をくれた方、練習に付き合ってくれた方、そしてこの記事を読んでくれた皆さんに感謝です

この先は「らしさ」を描くための引き出しを増やせたらいいなと思っています。どうやるかはよくわかっていませんが、、笑 まぁやり続けたらなんとかなるでしょう!最後に最近描いた気に入っている一枚を貼って終わりにしたいと思います。長い記事を読んでいただきありがとうございました!

最近のスケッチ


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