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木造の生物のなかの、ある日の夢

書いたことを全く覚えて居なくても、夜中に目を覚まして夢を書いている時が偶にあって、
睡眠薬を使うとふわふわと記憶が定かではなくなって、揺蕩うような微睡むような、そんな不定形な存在になれる気がする。サスキア・オルドウォーバースのビデオ作品の世界にいるような、そんな気持ちになる。
そんな夜のお話。

凍った足元、深く氷漬けになった車
誰かが蹴って氷を破ろうとしている
氷の中からはジャジーな音楽が流れている
誰かが笑ながら、歌いながら凍りを割る
まるで遺跡発掘の様に割れていく氷、氷の中からは天井から垂れる無数の白いケーブルが現れる
わたしたちはケーブルを選り分けながら、自分たちが巨大な木製建造物 -例えばテオ・ヤンセンの作品のような- の内側に居ることを知る
ケーブルを選り分ける女性が自分達の中にいることを知る
一種のワーク・ショップみたいだ
そのことに気づくと白いケーブルの裏側のブロックでは、スペクトルのようなグラデーションの、ケーブルのように太い毛糸を選り分けている女がいるのにも気づく
女を見習って毛糸のケーブルのをほぐし、元通りの流れにしようとする
誰かが笑いながら記録を撮っている
知り合って2、3日目と言った距離感の、どことなく一体感のない、でも話しかけられないわけでもない笑声
氷の塊が剥がれ落ち、ケーブルのような毛糸が解されるごとに、木製の大きな -全体的な構造は縦も横も高さも、何十メートルもありそうだ- 機械は動き出す
ぼくは隣で毛糸を選り分けている女性に聞く「これ、好きなんですか?」
女性は「好きじゃないよー全然。Tシャツがいまいちなのしか出てこないんだよね」と答えながら、その手はスムーズに毛糸の流れを漉いている

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