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海上コンテナ輸送業界の課題と対応について(2/2)

コンテナラウンドユースの取組を通じてサプライチェーン全体を効率化

取組の背景

 物流は、国民生活や経済活動を支える不可欠な社会インフラですが、その一方で、業界全体には大きな非効率性が残っており、また、担い手不足の深刻化やカーボンニュートラルへの対応など、喫緊の課題が山積しています。前回の NOTE で触れました通り、当社はコンテナラウンドユースの実施により不要な空コンテナの輸送を減少させること等を通じて、より多くの貨物を効率的かつ経済的な輸送を実現することで、脱炭素社会への貢献や2024年問題への対応を図っていきたいと考えています。

そもそもコンテナラウンドユースとは?

 コンテナラウンドユースとは、輸入貨物の運搬後、空となったコンテナを港に返却せず、内陸コンテナターミナル(インランドデポ)を経由するなどして輸出貨物の運搬にも使用することで、空コンテナの輸送を削減する方法です。また、空コンテナの輸送距離の削減により脱炭素(スコープ3)にも寄与します。


コンテナラウンドユース実施の際の課題

1.起用船社の分散                            
 輸出や輸入を行う際、船社が所有しているコンテナを利用するのが一般的ですが、輸出と輸入で異なる船社が起用されている場合、異なる船社間でのコンテナの共同利用が不可能であることから、コンテナラウンドユースの実施が不可能となります。
 
2.貨物量の不均衡                          
 荷主個社~数社での取組では輸出と輸入の貨物量が一致しないことがあり、コンテナの余剰や不足が発生するため、効率的なコンテナラウンドユースが難しくなります。
 
3.コンテナ種類の多様性                        
 コンテナの属性(サイズ、クオリティ、タイプ)が多様であるため、輸出貨物と輸入貨物で共有利用を行うための適切なコンテナのマッチングが難しく、管理が複雑になります。
 
4.スケジュールの調整                         
 荷主個社~数社での取組では、各社の出荷スケジュールの調整が難しく、タイミングを合わせたコンテナラウンドユースを行うことが困難です。
 
5.マッチングパターンの不足                            
 コンテナラウンドユースの取組拡大のためには、輸出や輸入で荷主が起用する船社をマッチングさせる必要がありますが、実証スケールにおいては取組に参加する事業者が少ないことから、マッチングを成立させるための母数(荷数)が圧倒的に足りないケースが一般的です。
 
6.立地条件
 コンテナのダメージチェックや輸出貨物と輸入貨物のマッチングにはそれぞれのスケジュール調整等を行うためのインランドコンテナデポの活用が有効です。ただし、効率的な輸送とコスト削減のためには、荷主の荷役現場とインランドコンテナデポの立地場所が適切な輸送距離内にあることやアクセス性の確保の観点から重要となり、これがコンテナラウンドユース実施の際の制約条件になります。
 
 また、コンテナラウンドユースの取組には荷主、フォワーダー等関係者の業務負荷が高く、これを上回るインセンティブの設定が極めて重要です。荷主においてはコンテナラウンドユースの取組により脱炭素への対応や、国内物流費の抑制に寄与出来ると考えていますが、特に長距離航路の輸送においては、物流コスト全体に占める海上運賃の割合が高いことから国内物流費の削減だけでは十分なメリットを荷主が享受できない課題があります。
 
 これら諸課題を解決したうえで、荷主のみならず業務負荷の掛かるフォワーダーや陸送会社等の関係者にとっても経済的メリットが享受できる仕組みの構築が必要となり、また、そうした多様な関係者間の利害を公平な立場で調整する事業者が必要となります。こうした課題を解決する手段が従前なく、従前よりこれらの諸課題に対する取組や仕組みがないことから、広く汎用的な活用には至っていませんでした。

3CF&Co. のアプローチ(海上運賃の共同購買事)

 上述の課題を踏まえ、当社は「海上運賃の共同購買事業」に取組んでいます。同一の航路等を活用する複数荷主に参画頂き、フォワーダーに対して荷量を取りまとめて運賃を調達頂く仕組みとなります。本取組を通じて、参加頂く荷主の数が多くなればなるほど参加企業各社のメリットが増加する仕組みとなることから、多くの荷主に参加頂くことで貨物属性の多様性に対する対応やマッチングパターンの確保等を図っていく考えです。また、海上運賃の共同購買においては、航路ごとに起用する船社を絞り込むことにより輸出と輸入でマッチングを行いやすい環境となりますが、そうした取組は船社にとっても荷量の確保に繋がる取組であると考えています。

まとめ

 荷主の競争力を維持・向上させるためには、物流コストや業務管理コストを抑制しつつ、サプライチェーン上に潜むリスク管理や輸送品質の追求が極めて重要です。一方で持続可能な物流を実現するためには、荷主だけが一方的にメリットを享受するのではなく、船社を含む物流事業者にとってもメリットのある取組を実現する必要があると考えます。
 
 物流業界全体には大きな非効率性が残っており、海上運賃の共同購買事業や CRU 事業の実施を通じたサプライチェーン全体の効率性を追求することで、荷主や物流事業者など特定に事業者にメリットが偏ることなく、すべての関係者に対してメリットを享受できる仕組みの構築が可能と考えています。本事業により多くの荷主に参加頂くことで、そのメリットもより向上し、荷主にとっては更なる物流コストの抑制や、フォワーダーや陸送事業者にとっては更なる収益向上機会に繋がることで、持続可能な物流の実現に繋げていけるものと考えています。
 
 こうした取組関心をお持ちの荷主等関係者の方がいらっしゃいましたら、ぜひ以下へお問合せください。


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