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狂言和らいの案内書

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わたくしが好きな狂言を気ままに解説した記事をまとめてござる
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狂言『二人袴』の五 兄弟行ったり来たりでござる

狂言『二人袴』の五 兄弟行ったり来たりでござる

和ろうてござるか〜

狂言『二人袴』の紹介が途中でござった
最初は狂言の聟入りのお話から、名乗りまで
続いて兄が弟をなだめすかして聟入りへ向かわせるところ
三話目ではようやく弟を連れて舅の家へとやってきていざ対面へ、でござる
そして前回四話目では聟が舅と対面するも束の間
兄が来ていることが知られて呼びに行くことになってござる

兄ではないと云うように弟に言い含めたはずでござったが
太郎冠者が知って

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狂言『二人袴』の四 ようやく聟は舅と対面でござる

狂言『二人袴』の四 ようやく聟は舅と対面でござる

和ろうてござるか〜新婚の弟を連れてその弟の妻の父親、すなわち
舅さまの邸宅へ
この兄と弟は色違いの段熨斗目と申す着物を着付け
正装に履く袴は弟の分のみ携えてまいりまする

さて舅宅へ着き弟に袴を履くように言い付け
兄は案内を乞うて弟の元へ戻りまする

袴を着けるのも一苦労でござる

弟はこの間に袴を着けようとはするものの
普段は履かない長い袴に驚き、腕を通したり体に巻きつけたりと
履き方が分からぬ

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狂言のことばは知らずとも分かるモノが多ござる『二人袴』の三

狂言のことばは知らずとも分かるモノが多ござる『二人袴』の三

和ろうてござるか〜弁慶の人形やエノコロ(イヌ)
饅頭を買う約束を取り付けた上にも
奥さんの実家へ兄に付いて来てくれと云う聟

一人で行けと云いつも、ごねる弟に押し切られ
仕方なしにも付いて行くことにした兄は
まあまあ弟に甘いお兄ちゃんでござる

大事な袴を弟の腰に結わえて道行でござる

ここで弟を先導しながら兄
「聟入り、と申すものはツ〜ッと晴れいなモノで
 垣からも、窓からも、ただ目ばかりじゃに

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狂言『二人袴』の弐 兄は弟の婿入り支度に手を焼いてござる

狂言『二人袴』の弐 兄は弟の婿入り支度に手を焼いてござる

和ろうてござるか〜今の世とは異なる聟入りのお話はすでにしてござるが
要するに自分の妻の父親(舅)に挨拶に行く儀式のことでござる

ただ一人で行く場合もござるが
この二人袴では、付き添いが要るのでござる

演者の歳格好に合わせて
聟が息子、付き添いが父親であったり
聟が弟、付き添いが兄であったりしまする

思えばわたくしは親子の二人袴は観たことがないようでござる

さて舅が名乗り、太郎冠者に用を言い

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狂言『二人袴』は聟入りのお話、さて室町時代の聟入りとは

狂言『二人袴』は聟入りのお話、さて室町時代の聟入りとは

和ろうてござるか〜わたくしは十八年前の二〇〇四年に結婚いたいてござる
結婚の前にはお妻様の御両親に挨拶に伺うてござるが

狂言の中では結婚した男は、結婚した後、日を改めて
妻の父親の元へ挨拶に向かうようでござる
すなわち義理の親の顔もまたお家の様子も知らず
新婚生活を始めているようにござる

聟入りとは妻の家に養子になることにあらず

つまとなる娘の親から見た夫を婿(むこ)と申すが現世の通例でござ

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