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狂言『二人袴』の弐 兄は弟の婿入り支度に手を焼いてござる

和ろうてござるか〜

今の世とは異なる聟入りのお話はすでにしてござるが
要するに自分の妻の父親(舅)に挨拶に行く儀式のことでござる

ただ一人で行く場合もござるが
この二人袴では、付き添いが要るのでござる

演者の歳格好に合わせて
聟が息子、付き添いが父親であったり
聟が弟、付き添いが兄であったりしまする

思えばわたくしは親子の二人袴は観たことがないようでござる

このブログでは狂言好きのわたくしけんすけ福のかみが、もっとも狂言らしい登場人物“太郎冠者”の名を借りて皆さまを狂言の世界へご案内するつもりで描いてござる。なにとぞ和らいだお心もちにて読うでくださりませ〜

さて舅が名乗り、太郎冠者に用を言い付けて本舞台の後ろ方へ座したならば
いったん場面転換でござる

聟と兄の家に舞台が移ってござる

まず兄が名乗り、弟を聟入りさせると説明
橋掛かりへ戻って幕に向かい弟を呼びまする

ここでは聟役の下の名前を呼ぶのが通例のようでござる

わたくしが聟なれば
「いやのうのう、けんすけはおりゃるか、居さしますか」と呼び

五色の揚幕をくぐってシテの登場でござる
ずいぶんと遠くからやってきたような風情で
「呼ばせられまするか」

先ほどから大声で呼んでいるのに
何処に居たのか?と訊かれ

「隣りで、子どもと遊うでおりました!」
屈託なく答える弟くんは少々幼い印象が醸されてござる

本舞台に移動して対面
「こんにった最上吉日じゃによって 聟入りをおしやれ」と云う兄に
大きく被りを振ってそんな恥ずかしいことはイヤじゃとごねる弟にいつまでも先延ばしに出来ないぞと諭せば
弟は欲しいものを買ってくれるなら〜とこれまた子どもっぽい提案

聟入りさえするなら買ってやろう!何が欲しいと訊けば

弁慶の人形を買って欲しいと云う
室町の頃の弁慶は一昔前のヒーローであったことでござろう
ヒーローのフィギュアを集める大人は今もござるが少々趣きは違うて見えまする

さてその人形は人気があったかどうかは存じませぬが兄の反応から
大人が持つのはイレギュラーだったように見受けられまする
その上エノコロも買ってくれ、おまけに饅頭も買うてくれと云う

エノコロとは犬の子のことで子犬のことを云うようでござる

苦笑しつつも買う約束をする兄に
「兄さま、付いて来てくださるるか?」ともう一つお願いを付け足し
渋る兄に、付いて来てくれないのなら行かない!とまた駄々をこねる

それならば
門前まで付いて行ってやるけど、兄が来てるとは云うなと念押しして
ようやく聟入りができるようでござる

さていよいよ聟を待つ舅の家へ向かうところでござるが

こんにったこの辺りにいたしましょう
またお目に掛かれましたら嬉しゅうござる🤗
この狂言noteはけんすけ福のかみが
大蔵流 茂山千五郎家の狂言を中心に学んだことや思うことを描いてござる

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