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【野球】屈指の好カードが……降雨コールド、高野連の判断は正しかったのか

第103回全国高等学校野球選手権大会。2021年8月17日、大会屈指の好カードと言われた大阪桐蔭(大阪)対東海大菅生(西東京)戦の幕切れはあっけないものだった。8回途中降雨コールド。降りしきる雨は次第に勢いを増す一方で、回復の見込みもない。敗れた東海大菅生にとっては無常ともいえるコールドゲーム宣告だった。
コールドゲームの宣告自体は覆しようがなかった。マウンドで転倒する投手、水たまりで停止する打球。雨雲レーダーは天候が好転する見込みはゼロだと示していた。眼前の光景は田んぼと見まがうばかりのものであり、最早到底、野球をしているとは言えないものだった。
しかし、そこに至るまでの過程と、その後の流れは不可解な点が多いと言わざるを得ない。

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【画像】マウンドで転倒する東海大菅生・本田選手


試合強行の判断と説明

西宮上空の当日の天気は前日より雨予報であった。Yahoo!天気によると降水確率は日中は70%超え。最終的には大雨警報が発令された。大会本部によると「第1試合は最後までできると踏んで試合を実施した」とのことであるが、これでは見通しが甘かったと言われても仕方がない。

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【画像】グラウンドコンディションは最悪


大会本部側の気持ちは十分に理解できる。今大会は過去稀に見る荒天によりすでに4日順延。今後もしばらくは雨予報が続く中で、1試合でも消化すべき状況であると言われれば、その点においては反論の余地がない。しかし、それはあくまでも最低でも2時間半天気がもつ前提の話。考え方としては試合成立の7回までもてばいいのというのも一理だが、それは試合開始前の大会本部が勘案すべきものではない。開催可否は試合成立ではなく最低でも9イニング進行可能かどうかが加味されるべきだ。となれば今回のケースではやはり素直に順延すべきだった。

その後の試合日程も物議を醸す原因となった。大会本部は順延となった第2試合から第4試合を、そのまま翌18日にスライドさせることを発表。これがよくなかった。18日を3試合のみで切り上げるのであれば17日に無理矢理消化した第1試合はなんだったのかと言われても仕方がない。これを「第4試合に新たに1試合、前倒しで組み込みます」というのなら話はわかる。しかし、これをしなかった以上、「少しでも日程消化を行いたいが故に強行した」という大義名分と矛盾する。これでは擁護のしようがない。

さらには、大会本部側のコメントも、控えめに言って最悪だった。8月17日付の中日スポーツによると大会本部はコールドゲームについて「タイミングについては「審判団の判断」」との見解を示している。記事に書き起こされているためどのようなやりとりだったかは想像するほかない。ないのだが、この書き方をされるような受け答えはいかがなものか。

コールドゲームの判断自体は審判が行う。プロ野球がそうなので、おそらく高校野球もそうなのだと思う。そして、大会本部もきっとそのニュアンスで回答したに過ぎない。しかし、この書き方をされては「審判が勝手に試合を止めたのであって、責任は審判にあります」と責任逃れをしているように受け止められかねない。要は答え方が下手くそだ。ただでさえ、宮崎商業のコロナ陽性発覚に対する対応の遅さ、事前想定の不十分さでヘイトを集めていたところにこれではどうしようもない。批判は甘んじて受け入れるべきだ。


脱甲子園はあるか

さて、ここ数年、真夏の酷暑と主に投手の負担軽減を理由に毎年のように議論されることがある。高校野球を甲子園以外の球場でも行えないかという話だ。この議論で代替案に上がるのはおおよそ京セラドーム大阪である。甲子園が建つ兵庫県の隣県でかつ、ドーム球場である点で球児たちの負担が軽くなるという論法だ。それに加えて今年の順延祭りでは、ドーム球場待望論が巻き起こるのは無理からぬことだ。

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【画像】移転先に名前の挙がる京セラドーム大阪


しかしはっきり言うが、甲子園からの移転はナンセンスである。大学野球の聖地が明治神宮野球場であるように、高校野球の聖地は阪神甲子園球場である。京セラドーム大阪という球場自体が悪いわけではない。だが私より年下でぽっと出の京セラドーム大阪に、聖地という役割は似つかわしくない。

皆が思っていることはわかる。正直、我ながらなんら論理的でもなければ、球児の負担も考えてもいない意見だと思う。でも、これは譲れない。じゃあ、みんな京セラドーム大阪に移転したら「夏の甲子園」と言っているところを「夏の京セラ」とか「春の大阪ドーム」とか言うのか?すでにしっくりこないだろう。

甲子園はその存在そのものが特殊であり、特別であり、格別なのだ。暴論であるのは十分承知で。それでもその一言で、すべての移転派意見に反論できるとさえ思う。高校野球は(豊中球場だったり、鳴尾球場だったりは目を瞑って)後にも先にも甲子園のものだ。それだけは譲れない、と思う。


今後の日程について

とはいえ現実的には、今後の大会について日程は考えたほうがいい。ここ数年の夏の甲子園は8月5日~8月9日に1回戦が始まっている。2014年のみ雨天順延で8月11日スタートだ。今年は9日予定だったものが10日へ順延された。

多少、東京オリンピックに配慮した形になっているのかもしれないが、致命的に開始が遅かったとは言えない。2014年でさえ8月25日には決勝が終わっている。だが、今回日程が厳しいという現実と選手の負担軽減は避けて通れない課題だ。

私は、単純に1日5試合こなしていけばよいと思う。2021年8月14日付の東京スポーツによると、元高野連事務局長の田名部和裕氏は1日5試合制について「球場職員は第1試合の8時開始の場合は(グラウンド整備など)準備のために6時に球場入りします。7時開始にすると5時に来なければならない。そうすると(職員が通勤する)電車が動いていない」、「私どもの時は、最終試合が3試合であっても4試合であっても、最終試合の開始時間が(例えば)夜7時とか夜8時とかを超えてはやらないというふうに腹決めはしていました」という。

開始の時間は変えられないというのは、納得がいった。だがしかし後半はどうか。この記事が更新されたそれこそ翌15日。降雨で押しに押した第4試合、高川学園(山口)対小松大谷(石川)戦は夜7時10分プレイボールとなり、その「腹決め」はあっさり破られてしまった。

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【画像】高川学園対小松大谷、結局試合終了は午後9時40分だった


となれば8時、10時30分、13時、15時30分のあとに18時プレイボールの5試合目を組むべきだ。おそらく替えが利かないであろうウグイス嬢などの職員の負担が増すことになるのは考え物だが、球児を第一に考えるのであればこれが一番良いと思う。

こうしたうえで8月5日に開幕できるように調整する。そうすると日程は以下のようになる。意外にも5試合の日程はそう多くなく、比較的現実的だ。

8月5日 開会式+1回戦3試合

8月6日 1回戦5試合

8月7日 1回戦5試合

8月8日 1回戦4試合

8月9日 2回戦4試合

8月10日 2回戦4試合

8月11日 2回戦4試合

8月12日 2回戦4試合 

8月13日 3回戦4試合

8月14日 3回戦4試合

8月15日 休養日

8月16日 休養日

8月17日 準々決勝4試合

8月18日 休養日

8月19日 休養日

8月20日 休養日

8月21日 準決勝2試合

8月22日 休養日

8月23日 女子高校野球決勝

8月24日 女子高校野球決勝予備日

8月25日 決勝

8月26日 決勝予備日

8月27日 決勝予備日

8月28日 返却準備期間

8月29日 返却準備期間

8月30日 返却準備期間

8月31日 (甲子園阪神戦)


開会式を考慮しても1回戦を4日間で完全終了できるため、結果的に2回戦以降の日程に余裕が生まれる。

もちろん、滞在費の問題とか、その他一切合切は考慮していない。しかし、これだけ日程が開けば選手も、日程組みも大分楽になるはずなのだが。

最近は従来の常識では図れないことが多い。

そんななかで伝統の高校野球は一度立ち止まるべき時期に来ているのかもしれない。今後の更なる伝統のためにも。






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