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【野球】いきなりトレンドに上がった「進塁の意思」とはナニモノか

数々のドラマを生み出した野球、日韓戦。2021年8月4日に行われた東京オリンピック2020の準決勝も、過去の歴史に恥じない死闘となった。結果は日本が5-3。山田哲人選手の走者一掃のタイムリーツーベース等の活躍で韓国を下し、メダルを確定させた。

そんな中、Twitterでは興味深い単語がトレンドに入った。「進塁の意思」。なるほど確かに、野球のルールに明るくないライト層が見れば、疑問に思うであろうプレーがあった。

8回の裏、1アウト1塁の近藤健介選手の打席。打球はファーストに転がり、韓国はダブルプレーを狙うべく二塁へ転送した。セカンドでアウトを捕ったのち、ダブルプレー成立をもくろみ一塁へ。そこでベースカバーに入った投手がベースを踏み損ね、近藤選手はセーフとなった。

ここまでなら、まあプロ野球を見ていればよくあるプレーである。贔屓の投手がやらかせば、「しっかり投内連携の練習しろよ」と思う程度のものだ。しかし、今回のプレーには続きがあった。韓国ナインがファールラインの内側、すなわちフェアゾーンに近藤選手がいることを確認しタグ(=タッチ)にいったのである。

多少野球のルールに明るい方であれば、バッターはファーストとホームに限り、走り抜けることができることはご存じであろう。今回はファーストで起こった出来事なので、当然近藤選手には走り抜ける権利がある。しかし、ほとんどの指導者はファーストを走り抜けるときは、ファールゾーンに走り抜けるように指導する。

これには理由がある。ファーストは通常、タイミングがきわどいときには走り抜けるのが当然であるし、走り抜けたランナーが離塁しているからと言ってタグを行ってもアウトにはならない。しかし、それには例外が存在する。それがトレンドに上がった「進塁の意思」の有無だ。

つまり一塁を走り抜けたからと言って、送球がそれたとかで二塁を伺おうとすると進塁の意思あり、とみなされて以降のプレーでアウトになる可能性があるのだ。話しは戻るがこういった理由があるので指導者はファールゾーンに駆け抜けさせることで、万が一にも「進塁の意思」があると判断されないようにしている、というわけだ(なお、ファールゾーンに駆け抜けてもそこから二塁を狙えば「進塁の意思」とみなされる)。

2019年には同じく代表に選ばれている広島・菊池涼介選手が微妙な判定でアウトになっている。その際は巨人・坂本勇人選手の送球がそれたため、一塁手との交錯を避けようとフェアゾーン側へ倒れこむような形になった。一塁の中島選手は当然ながら菊池選手に対しタグに行ったわけだが、菊池選手はここでとっさにヘッドスライディングで帰塁してしまった。

気持ちはわかるが、頭から帰れば「進塁しようとして無理だとわかったからあわてて戻った」、つまり「進塁の意思」ありと見られても仕方ない面がある。その点でも近藤選手がタグをしに来る韓国人選手に対し両手を広げるような動作でゆっくりと一塁へ戻っていったのは、「いいアピール」だった。あそこで必死に帰塁してしまえば、「進塁の意思」ありとみなされかねない。

もちろん最初からファールゾーンへ駆け抜けていればそういう懸念はないというのは当然だが、プレーの流れ次第では今回のようにフェアゾーンへ駆け抜けざるを得ないこともある。

また、審判にも拍手を送りたい。韓国側はすでに1回のみ失敗できるチャレンジ権を喪失している状況、かつおそらく一塁塁審はプレーが切れている状況のため、タグに至るまでの流れを完全目視していなかったと思われる。そこで自主的に集まり、ビデオ判定を仰いだのはさすが、国際試合をジャッジするにふさわしいと感じた。誤審をすれば容赦なくつるし上げられる仕事だけに、ファインジャッジには心より拍手を送りたい。

さて、日本は念願の金メダルへ向けて王手をかけた。決勝の相手は敗者復活戦にまわったアメリカ、韓国の勝者だ。どちらが来ても楽な相手ではなく、相手にとって不足はない。

それでも今の日本の実力と勢いならきっと、悲願の金メダルをつかみ取ってくれると信じている。頑張れ、侍ジャパン。

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