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『決断。』

エコー外来後これからの事はお互い何も触れずに会計を待った。

なんとなく2人ともお腹空いたねとかヒューマンウォッチングしながら気丈に振る舞っていた。

携帯片手にネットで色々な情報を調べながらも


病院の中のコンビニに寄り珈琲と甘い物を買った。
身体も心も休憩しないと追いついていかない。

けんちゃんの家に着き2人で横になった…


「けんちゃんはどうしたい?」


しばらく無言であった後さおちゃんにそう聞かれた時、物凄い責任と重圧、虚無感、悔しさ、もどかしさなど様々な感情が入り混じり、すぐに答える事はできなかった。
普段は前向きな自分もとても前向きな考えなど考えられなかった。

本音は、エコーを見ている時から「どんな病気でも生きられる可能性があるのであればトツキトウカまで待って産ませてあげたい!1%でも可能性があるのなら。金が必要ならなんとしてでも!」などと、まるでドラマのワンシーンの様に本気で思っていた。30年以上携わっている先生も驚く位の奇跡がきっと起きてくれるはずだと信じていた。自分にとっては初めての我が子の顔を見たかった。


ただ、同時にお腹の子の将来を考えると何か引っ掛かった。

「自分達がいなくなった後、この子は1人で生きていけるのだろうか?自分勝手な決断をしてはいけない。でも産ませてあげたい。でも産んだらさおちゃんと子供達の人生を大きく変えてしまう。でも産ませてあげたい。金があれば何とかなるのか?違う。このまま何もできないのか?いまの俺には何ができる?何もできない。情けない。」


短時間ではあったがまるで永遠と考えていたかの様に葛藤がある中で、上手くまとまらない言葉を淡々とさおちゃんに伝え続け、自分なりの答えを出した。


「来週、産もう。」



これが二人の決断。


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