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心に残るひとこと

東日本大震災の後、恩師の誘いで何度か三陸沿岸部を尋ねた。
私自身は、震災の翌月の4月7日に仙台から石巻まで支援物資を届けに行ったのだが、その翌月に恩師と二人、陸前高田から田老あたりまで行った。

どのまちでも目の前の光景に衝撃を受けることになるのだが、ちょっと忘れられない言葉があった。

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ある小さな沿岸の集落を訪ねた時に、庭先の道端で地元住民の方を見かけた。
浜に出るため、その近くを通る際に

「ご苦労様です」

と、声をかけられたのだ。
笑顔だった。

我々は行政や学術機関から依頼されたものではなく、全くの任意の訪問。フィールドワークのつもりだった。
二人ともカメラとノートを持っており、県外ナンバーの車だったので、何らかの調査だと思ったのだろう。

その瞬間は、少しの驚きと、安心があった。安心感を受けたと言う方が正確か。
そして、少し経ってからじわじわと思うところがあった。
被災してなお、そんな風に声をかけられるものだろうか、と思った。

こちらは
「こんにちは」
と返すのが精一杯だったように思う。

もっと気の利いたことでも言えなかったものか、とか思ったが、中途半端な立ち位置では余計な言葉は必要ないだろう、とも思った。

不意にかけられた、そんなたった一言だったが、ずっと頭から離れない。

大災害の後、東北の人々の強さや温かさを「勝手に」受け取ったつもりになったのだった。

東日本大震災の報道が増える週末に、そんなことを思い出していた。

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