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毎日変わるガントチャートからの脱却~ビジネス職でスクラムのススメ~


こんにちは。Ubie株式会社で事業開発をしているKennyです。

みなさん、自身の(またはチームの)生産性を上げたいと悩んだことはありませんか?
私自身もUbieに入社する前に在籍していた会社で部下を抱え、どうやったら生産性があがるか試行錯誤を繰り返していました。

生産性について調べてみると、OECDデータに基づく日本の2019年の時間当たり労働生産数はOECD加盟37カ国中21位と、海外の主要国と比べて日本の生産性は決して高いとは言えない状況にあります。

様々なプロダクトが海を越えて展開されることが珍しくない昨今、生き残っていくためにはこれまでと同じことをしていても厳しいと考えられます。

毎日変わるガントチャートを眺めても生産性は上がらない

生産性を上げることを指示されたマネージャーの多くが、メンバーの作業をこと細かく管理しようとします。
その手法としてよく使われるのがガントチャート。

プロダクト開発を経験した方はもちろん、非エンジニアのビジネス職の人も使ったことがある方は多いかと思います。

タスクを洗い出し、誰がいつから着手して、いつ終わるのか、複数のタスクが平行しないように調整。作り上げた時はまるで流れる滝のように美しいものになっています。

しかし当初のガントチャート通りに進んだ事はあるでしょうか?

残念ながら私はありません。
ガントチャートは日々細かく変わり、時として大きな変更を余儀なくされました。

予定していた通りにタスクが完了せず、予定外の新しいタスクが増え、予定されていた別のタスクも始まり・・・
一方で期日はずらせず残業でなんとかしようとするものの、気が付けば毎日遅くまで仕事をするのが常態化。
疲れからつまらないミスをして作業のやり直し。
チームの雰囲気も悪くなり、メンバーのモチベーションが下がる。

どこにでもありそうな、よく聞く話ですよね。

なぜそんなことが起きてしまうのでしょうか?
多くの人が同じような経験をしているということは、この方法には根本的に問題があるということです。
これまでの方法では生産性が上がらない。ではどうしたらよいか。

この問題に対して、生産性の高い「効果的なチームの条件」についてGoogleが調査した興味深いレポートがありますのでご紹介します。


チームの効果性に影響する5つの因子

Googleが調査した「チームの効果性に影響する因子」を重要な順に示したものがこちらです。

・心理的安全性
心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていません。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。

・相互信頼
相互信頼の高いチームのメンバーは、クオリティの高い仕事を時間内に仕上げます(これに対し、相互信頼の低いチームのメンバーは責任を転嫁します)。

・構造と明確さ
効果的なチームをつくるには、職務上で要求されていること、その要求を満たすためのプロセス、そしてメンバーの行動がもたらす成果について、個々のメンバーが理解していることが重要となります。目標は、個人レベルで設定することもグループレベルで設定することもできますが、具体的で取り組みがいがあり、なおかつ達成可能な内容でなければなりません。Google では、短期的な目標と長期的な目標を設定してメンバーに周知するために、「目標と成果指標(OKR)」という手法が広く使われています。

・仕事の意味
チームの効果性を向上するためには、仕事そのもの、またはその成果に対して目的意識を感じられる必要があります。仕事の意味は属人的なものであり、経済的な安定を得る、家族を支える、チームの成功を助ける、自己表現するなど、人によってさまざまです。

・インパクト
自分の仕事には意義があるとメンバーが主観的に思えるかどうかは、チームにとって重要なことです。個人の仕事が組織の目標達成に貢献していることを可視化すると、個人の仕事のインパクトを把握しやすくなります。

※Googleの調査について詳しくは知りたい方はこちらを参照してください。元記事ではその他の因子も紹介されており、企業によっては優先順位が変動する可能性はあります。

Google社内では、この5つの特徴を実現できているチームが生産性高く効果が出せているということです。

さっそく自分のチームで活かしていきたい、でもどうやったらいいのか、となりますよね。

その効果的な方法の1つとして「スクラム」をご紹介したいと思います。


不確実性と戦うビジネス職にこそスクラムは有効

「スクラム」と聞くとソフトウェア開発の手法として、エンジニアがやっている事と思われている方が多いかと思います。しかしその内容は非エンジニアのビジネス職にも非常に有効なものです。

スクラムの全容についてここでは語りませんが、その特徴として、実践を繰り返して経験を生み、その経験に基づいて判断し知識を得ることで予測可能性を高めていくというものがあります。

エンジニアに限らず、多くの職種の人が予測できない不確実性と戦ってるものですよね。その不確実性が予定していたガントチャートを無意味なものとしてるわけです。

良いアウトプットを速くだすためには「不確実性の高い状態」から「低い状態」に速やかに移行していく必要があります。つまり、素早く実践し、素早く失敗に気付き、次の行動を変化させることが有効なのです。
スクラムはその方法として非常に有用なものです。

Ubieではエンジニアはもちろん、それ以外のチームでも積極的にスクラムを採用しており、その恩恵を受けています。
Ubieの非エンジニア職で実施しているスクラムの例を通して意識したいポイントをご紹介します。


スクラムの流れ

まず、プロダクト開発におけるスクラム運営と同様にプロダクトオーナーとスクラムマスターの役割の人をチーム内で設定しています。

プロダクトオーナーはチームのROIを最大化させることに責任を持ち、実施する項目について優先順位を決めます。スクラムマスターはスクラムについて理解し、チーム全体に浸透させながらスクラムが円滑に進むように支援していきます。

そして1週間のサイクルの中で、以下の流れでスクラムを実施しています。

1. バックログアイテムを作成
各メンバーが実施すべきこと、顧客に提供したい価値などを検討しバックログアイテムを作成します。背景/Return/受け入れ条件/やらない事の4項目で記載します。作成はいつでも良く、どんどん作っていきます。

2. リファインメントを実施
全員が集まり、新たに作られたバックログアイテムを確認していきます。どんなものが出来たら完成とするかの受け入れ条件を皆で理解し、どの程度の労力で作れるか(ストーリーポイント)を数値で設定します。

3. プランニングを実施
次の一週間でどのバックログアイテムを実行していくかを決定します。

4. デイリースタンドアップで状況を共有
決まった時間で全員が集まり、短い時間の中で状況の共有をします。
昨日やったこと、今日やる予定のこと、困っていることを各自話します。
Ubieでは毎日やるチームもありますが、一日置きでやっているチームもあります。

5. レビューでアウトプットを発表
バックログアイテムの実行結果を発表します。たとえば顧客へ提示する予定の資料をレビューする、などです。

6. レトロスペクティブを実施
チーム運営上の課題点や解決案などを「KPT」を用いながらスプリントを振り返ります。

スクラムで意識したい4つのポイント

スクラムを実施する中で押さえていくと良いと思うポイントを4つご紹介します

1. 決まった期間(スプリント)でアウトプットが出るサイズに業務を分解する

全体の業務の完遂は1週間以上先になる場合でも、1週間でアウトプットが見える形にバックログアイテムを分解していきます。
例えば「2週間後に顧客に提案書を提出する」のであれば、「仮説を出し、裏付けのデータを出して提案書のストーリーを作る」「提案書のビジュアルを整える」などに分割できるかもしれません。

最初のアウトプットで複数の方向性が出てきたら、顧客にさりげなく聞いて反応を伺うということもできたら、不確実性がさがって最短で良いアウトプットに近づきそうですね。

上記では、わかりやすくタスク調の記載を例にしていますが、より良いバックログアイテムはユーザーストーリーの形式で「誰にどんな価値を与えたいのか」と記載するのが望ましいです。
その価値を与えるためのHowは様々あるはずで、それを議論することも重要だからです。
とはいえ実際にはタスクとして実行しなければいけないこともあるので、我々のチームでは価値を生み出すものはストーリー形式にしつつ、派生したタスクはタイトルに「タスク」と記載する工夫もしています。


2. 受け入れ(完了)条件を全員で合意する

それぞれの人が考える完了条件は一致しないことも多くあります。

たとえば社内資料を作るというのを例とした場合、資料を作成すれば完了と考える人もいれば、出来た資料を関連チームに共有するところまでが完了と考える人もいます。

何をしたら完了なのかを全員で協議し、合意することは予想外の付随業務発生を抑えるうえでも重要です。


3. あえて”やらないこと”を考える

計画当初では、ついつい風呂敷を広げて色んなことをやりたくなったり、最初から高い完成度のものを求めてしまったりしてしまいます。

大事なことは素早く実践し、結果を得るということです。
そのために必要な最小の事は何かを考え、無くても実現できそうなことは”やらないこと”として明示しておきます。

4. 「いつ出来る?」ではなく「困っていることはある?」

メンバーに状況を確認する際、または上司から確認される際に「進捗どう?」「いつ出来る?」などと言ってしまう(または聞かれる)ことはないでしょうか。

この聞き方をされると、プレッシャーを感じてしまう人が多くいます。
上司にこんな仕事もすぐに出来ないのかと思われているのでは、と感じてしまう人もいるでしょう。そうなると他の人に相談もできずに、無理なスケジュール(=過重労働)でなんとかしようとしてしまいます。

これが続くと、さきほどご紹介した「チーム生産性向上の5つの柱」にもあがっている「心理的安全性」を損なってしまうことにも繋がっていきます。

予定通りにいかないのは、担当者がサボっているわけではなく、何らかの理由があるものです。例えばこんな理由があるとします。
・XXXについて調べているが参考になるものが少ない
・普段使用していないツールを使っていて時間がかかっている
・他の作業が割り込んで時間が取れなかった

実は過去に他の人が調べてまとまったものがあるかもしれません。ツールになれた人がデータ出しをするところまで手伝ってくれるかもしれません。割り込み作業を手伝ってくれる人やそもそも優先順位として対応しないという判断をしてくれるかもしれません。

自分が困っていることを他の人に聞いてみると、簡単に解決してしまうことが意外にもあることが感じられます。

プレッシャーを与えてしまう「いつ出来る?」ではなく、アウトプットを妨げる障壁をチームとして排除していく「困っていることは?」を意識してみてください。

この点についてはUbieのエンジニアである @shikichee の記事に詳しく書かれているので是非こちらも見てください。


いかがでしたでしょうか。
スクラムはしっかりと理解した上で運用すると高い効果が得られますが、スクラムへの知識を持つ人がいなかったり、やり方を大きく変えるのが難しい組織もあるかもしれません。
完全な形でのスクラム導入が出来なくても、上であげたポイントを意識するだけで得られるものがあると思います。

厳密にはスクラムの定義によると、学習のフレームワークであり生産性について明記はされていませんが、素早く実践し、早い段階で正しい方向性に進むことで、やり直しによる無駄作業を減らし、生産性が上げられると思います。
是非試してみてください。


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