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あいつが出て行った日から、やけに暑い日が続いている。
肌にベッタリと張り付いたTシャツが、俺の今日までを許してくれてるみたいで腹が立つ。
隣の部屋からの情報の余りものが、1週間ぶりに午後から雨が降ると告げた。
なんとなく思い立って、歩いて10分ちょっとの喫茶店にモーニングを食べに行くことにした。
正直どんなこじつけでも外に出なければと思っていた。

午後から雨が降るわりには暖かく、雲も少ないようだ。
木々も俺とは比べ物にならないくらい生き生きとしていたが、却って土は水分が抜けて、隣人の肌のようになっていた。
『テレビの音量下げろよ』と今更思った。

大通りから曲がって路地に入り、酒に遊ばれた大人を横目で見送る。
地下街に入って左。半年ぶりでも意外と覚えてるもんだなと思う。
そこには思いの外人がいて、朝っぱらから馬鹿だなと思った。
けど、今日は俺も馬鹿じゃないか。
小倉トーストとミルクコーヒー。
ありきたりな500円の幸福は空っぽの心によく沁みる。

ダラダラと食べ始めてから10分ほど経って、隣のカウンター席に座ったのはサラリーマンと汚い女だった。
うちから徒歩1分のコンビニ、23時からいる棒のアイスをレジで打つ時、棒じゃなくアイスの部分を握ってスキャンするあのクソ野郎に似た男と、割引券を出したのに、通常料金で取られたあの店の女に似ていて腹が立った。
こんな時間にどんな組み合わせだよ
心の中で叫んだ。
甘いトーストに甘いコーヒーもなかなかか。

"健康的な朝だな"
甘いものづくしの真逆の朝に対する嫌味か?
あのシンガーソングライターの曲が流れていたから、耳を傾けていた。
自分で聴こうとしたことないな
なんて考えていたら、
あいつの歌った声が、顔が、鮮明に思い出された。

あーまた出たよこれ
って自分に嫌気がさして、油断から溢れ出たあくびを奥歯で噛み殺す。
あいつは俺の日々の生活の中に、内密に、小さな卵を植え付けるように、二人の人生を中途半端に縫い付けていた。
これからそれらを温め、孵化させ、愛を込めて育て、喫することによって消化していくのかと思うと気が遠くなる。
いつもあいつが得意げに話していた服飾の話が馬鹿みたいに思えて、心から虫の方が向いてるよと思った。

これも全部自分のせいなんだろう。

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