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アンチエイジング・サイエンス②

こんにちは。みずけんです。
アイスを食べ始めてもすぐに溶けてしまう季節になりました。

そうだ。これを読みながらアイスを用意してください。
アイスが溶ける前に食べ切れたならあなたの勝ち、
記事を読むのに集中するあまりアイスが溶けてしまったら私の勝ちです。

なんてね。

はい。今回の記事では、前回に引き続き、

老化の科学そのものに切り込んでいきます。

※ゴシップとアカデミックの中間的な記事になっておりますので、誰でも楽しめる内容になっております。

#老化を科学すること はシリーズ化しました。
これまでの2本の記事を以下に並べます。
#老化を科学すること #その1
#前編 #老化を科学すること #その2

今回は、以下の三つを中心に情報をまとめます。

・細胞老化
・オートファジー
・視床下部

では、ご覧ください。まずは、

細胞老化

「君の体は、何でできていると思う?原子?分子?そう言うこともできるだろう。だが、最も端的な答えは、細胞だ。」

その1でも触れましたが、
細胞の老化にはテロメアという物質が深く関係しています。

おさらいをすると、テロメアとは、我々の細胞が分裂をするたびに短くなっていく、染色体の先端にあるキャップのことです。
ある一定以上の短さになってしまうと、細胞は分裂をやめ、死亡します。

ある調査によると、年齢を重ねた人の細胞におけるテロメア長を調査すると、若い人のテロメア長に対して有意に短いことがわかったそうです。
大雑把に言えば、体を構成する細胞に含まれるテロメアの長さで、寿命の目安がなんとなく掴めるということかもしれません。

基本的に、どんな細胞でも、分裂するごとにテロメアは短くなります。
ただし、分裂をどんなに繰り返してもテロメアが短くならない細胞の種類があります。以下の三つです。
・幹細胞
・生殖細胞
・がん細胞

がん細胞は、どんなに分裂を繰り返しても、テロメアが短くなることはありません。死なない細胞ということです。そして、通常の細胞と違うのは、DNAにエラーが起きており通常通りの働きをしない細胞ということです。これが、がん細胞が増えると困る所以です。

がん細胞をターゲットにしてあえてテロメアを短くさせ死滅させる研究もあります。期待したいですね。

ただし、細胞の老化=個体の老化と断定できるものではありません。なぜなら、テロメアが短くなることが、その細胞の機能を落とすことではないからです。
加えて、テロメアの長さが単調に短くなっていくとは限らないという最新の研究結果がでています。一般向けに書かれている本が、上に貼ったものですので、ご興味があればチェックしてみてください。

オートファジー

「僕たちは知らない間に自分で自分を食べているんだよ。夢じゃ無い、現実だ。」

細胞は、代謝を繰り返す中で、たくさんの雑多な物質を内部に蓄積します。オートファジーとは簡単に言えば、その「雑多な物質」で不要なものを除去する、細胞自体の自浄機能を言います。
そして、このオートファジーの機能を高めるタンパク質を増加させたマウスは、長生きをする、という研究結果が出ているのです。

逆に、もしこの「オートファジー」の働きが鈍くなるようなことがあれば、体はどうなってしまうのでしょうか。

最もセンセーショナルな関連事例は、「パーキンソン病」です。
世界最高峰の頭脳と呼ばれた、スティーブン・ホーキング博士がかかった病と言えば有名かもしれません。
難病情報センターによれば、パーキンソン病にかかる人口割合は、およそ1000人に一人。

ただし、60歳以上に注目すれば、その割合は100人に一人にまで増えます。
このことからも、細胞の機能が衰えるほどにかかりやすい病であることが予想されますね。

我々は、摂取するタンパク質以上のタンパク質を日々生成しています。
その割合は、およそ3倍程度。
秘密は、細胞の中にある「雑多な物質」を細胞自身が食し、新たなタンパク質生成に役立てている「リサイクル機能」にあったのですね。

ちなみに、断食をしてもすぐに死ぬわけではないのも、この「オートファジー」の機能によるものです。

視床下部

「生きたいと願うのは、君の心だけと思うだろ?だが体もなんだ。そして心が体を全てコントロールできるなんてことは、ただの思い込みなんだ。」

画像:Wikipediaより

おそらく、今回の3つのうち一番なじみのない言葉であることでしょう。
視床下部とは、脳の部位の一つです。
脳の部位の中でも、「海馬」「前頭葉」などと違って、マイナーなイメージです。

脱線しますが、「意識」に関わる部位は有名になりますが、生命活動に関わる部位はあまり有名になりません。それは、まさに脳の特徴そのものと言ってもよいと思います。この話はまた違う機会に書きたいと思います。この議論に興味のある方は、養老孟司先生の「死の壁」を読んでみてくださいね。

前置きが長くなりましたが、
視床下部という脳の部位が個体の寿命に関わる、という研究結果がマウスを使った実験で証明されています。

個体が「暑すぎる」と感じると、視床下部はその機能を発揮します。
「温度を下げろ!」と体に命令を下します。
このことにより、なぜか個体の寿命が伸びる結果になります。
不思議といえば不思議ですね。
※無闇に暑すぎる環境に自分の身を置いて実験したりしないでください。

ちなみに、「寒すぎる」と感じた場合には逆のことが起きます。
これを生体の「恒常性」と呼び、横文字では「ホメオスタシス」と呼びます。
広くは、ストレスのかかる環境で敢えて鈍感になるように自己制御したりすることもホメオスタシスと呼んだり、人文学的に非常に人気のある用語です。

また、視床下部に関わる遺伝子情報を意図的に組み替えることでも寿命が増やせると言われています。
視床下部は、成長ホルモンにも関係している脳の部位ですが、成長ホルモンと個体の老化はやはり関係があるのかもしれません。

その1で取り上げた「サーチュイン」という長寿物質も、視床下部による命令で生成されます。加齢に伴ってこの命令が弱くなることが老化の一つの要因とも言われています。

おわりに

★おまけ漫画☆「細胞くんのオートファジー生活」

脳は、数学に似た特徴があります。
これまでに集めた情報をもとに、
帰納法あるいは演繹法により、次の行動の判断を下します。

例えば一晩寝ないで生活をしたとします。
それであなたの体が危険な状態になることはなかったとします。

これをもとにすぐ帰納的な考えを進めてしまうと、「寝ないでも大丈夫」という結論になってしまいます。
でも当然ながら、本人の意識できていないダメージが体に蓄積されているため、仮にそのまま寝ないでいると大変なことになります。

体には感覚だけでは集めきれていない現象が常に起こっており、正しく対処するためには客観的事象を情報として集める必要があります。

「老化はするものだ」「がんにはかかるものだ」というのは、不十分な帰納法的結論なのではないか?というのが私の考えです。
皆で研究を続けましょう。
客観的事象からデータを取り続けましょう。
そうすればバイアスが外れる瞬間が訪れます。
結果としてそれを人はイノベーションと呼びます。

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著者プロフィール
水谷健
1992年11月生まれ、三重県桑名市出身。
名古屋工業大学工学部卒、東京大学大学院工学系研究科卒。
さまざまなタッチで漫画を描くことを好む。
研究家と漫画家と事業家の三本の矢で進むことを夢見る。
養老孟司氏、茂木健一郎氏、堀江貴文氏、伊藤穰一氏、イーロン・マスク氏の話題が好き。
Twitter:

https://twitter.com/mizutanikenken

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