県民には買うものがある

第15回女による女のためのR-18文学賞「友近賞」受賞作 笹井都和古『県民には買うものがある』の発売を機に担当編集が立ち上げた、県民による、県民or元県民のためのnoteです。受賞作の試し読みを期間限定で公開中! イラストはすべて、大島智子さんによるものです。
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友近賞受賞作「県民には買うものがある」(1/5)

林田くんは今日もチャックのついた薄手のパーカを着ている。全体は紺色の無地で、フードの裏に青を基調としたチェック柄があしらわれたものだ。イオンで買ってん、と言うそ…

県民には「元手」がない――笹井都和古

小学生の頃、エンジェルブルーやメゾピアノといったジュニアブランドが流行っていて、ほぼ毎日家族の共用パソコンからナルミヤインターナショナルのサイトにアクセスしてい…

友近賞受賞作「県民には買うものがある」(5/5)

林田くんのいいところをひとつ挙げるとすれば、私のことを決してそんな風には消費しなかったことだろう。  彼はインターネットのなかで自分を誇示しようという気持ちは微…

友近賞受賞作「県民には買うものがある」(4/5)

相手を探しはじめてから1週間と少しした頃、私はヒロミちゃんと二人で地元のイオンモールへ遊びに行った。こちらはまだ林田くんと深夜に電話を交わしていた頃だったが、彼…

友近賞受賞作「県民には買うものがある」(3/5)

今日は春の陽気でよく晴れた。彼が運転している間、私は助手席でがさがさ袋をあけ、買ってもらったツナマヨおにぎりを食べる。林田くんはツナもだめらしい。ふと車内で見る…

友近賞受賞作「県民には買うものがある」(2/5)

今しかない、と思った人間はときどき自分の想定以上に突飛なこともやって退けてしまう。私とヒロミちゃんはスマートフォンを使って、それぞれ適当な相手を探すことに決めた…