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試験まで10日を切った段階で目をつけた中学に進学した生徒の話【指導記録#08】

今年度の中学受験も中盤戦に差し掛かってきました。

序盤の戦いを経た今、ここにきて志望校や併願校への迷いが生じていたりしませんか

受験の最終段階だからこそ、志望校に迷いが生じるのは当然のことです。

受験を始めた頃や志望校を決めた頃からすれば、お子さんも変化していますし、親御さんの中学校というものへの知識も深まっています。

もちろん初志貫徹も悪いことではないのですが、今の時期の方が学校を見る目が確かでもあります。


志望校への心境が変わるきっかけを挙げてみますと……

・以前は合わない学校だと思っていたが、お子さんの変化によって合う学校に思えてきた
・学校のモデルチェンジ(校長、校舎、施設、行事、コース、制服などなど)
・新設校ができた
・長期的に見た場合に親御さんからして魅力を感じる学校の傾向が変わってきた
・電車の路線が変わったり伸びたりしてアクセスが良くなった
・お子さんが入りたい部活が今の志望校にない

ここに挙げていない理由も含めて、様々な理由によって志望校への気持ちが揺らいでしまう、でもちゃんと調べてないし、今から志望校を変えても何の対策もしてないし……。そんな葛藤に苦しんでいる方も少なくないでしょう。


私が指導していた生徒の中に、まさに今くらいの時期に新たに志望校を増やし、その学校に進学した生徒(以下H君)がいました。

H君の第一志望は、某有名大学付属校でした。有名大学付属校の入試問題は国語や社会といった文系科目の方が難しめになることも多いのですが、H君の志望校もまさにそのような傾向。

しかしH君は幼さの残る男の子であり、国社での記述問題に対応することは難しいように感じていました。校風的にもちょっと合ってないかなあ……と思ってはいたものの、では代わりにどの学校を薦めるか。

実はお薦めしたい学校(以下α中学)のことが頭に浮かんでいたものの、この当時はそれほど宣伝上手な学校ではなく、新たな志望校に加えるには決め手に欠けるところがあり、どこかモヤモヤした状態のまま受験シーズンがスタートします。


そんな中、ある一冊の雑誌が状況を一変させることになりました。

私は普段から参考書や問題集をはじめとした、受験関連の本をチェックするために頻繁に本屋に足を運んでいます。

受験対策も終盤に差し掛かったある日、いつものように本屋に入り、とある有名進学塾が発行している雑誌に目を通してみると、α中学が大々的に特集されていたのです。

宣伝上手とは言えない学校からの宣伝ではなく、雑誌での特集でしたので、α中学の魅力がわかりやすく伝わる内容であり、私は「これだ!」と思いました。

すぐにその雑誌を購入し、次のH君の指導の際に持参しました。

そして紹介記事を見せながらα中学の魅力を解説すると、H君本人もお母様もα中学のことを大変気に入っていただくことになりました。


そこでもちろん気になってくるのは過去問をやっていないという部分なのですが、私自身はその部分をほとんど気にしていません。

私の持論として、「本質的に生徒と相性の良い学校は、問題の相性も良い。すなわち過去問など解かずとも、特に対策などしなくても合格できる」というものがあります。問題の形式的に極端に変わった出題があれば警戒こそさせますが、本当に相性の良い学校であれば、そんな変わった出題すらもそれほど大きな懸念材料にはなりません。

特に、長年塾に通っている子は、どんな問題だって出会ったことくらいはあるはずです。あらゆる学校を受験する子に対して、どんな問題に出会っても対応できるように、塾では数え切れないほどの問題と向き合わせているわけですから。

H君に対しても、一緒に過去問を見ながら、「この手の問題は今までの志望校の過去問では出てこなかったけど、前に似たような問題をやったよね。」とか、「この問題はあの発想を活かせばできそうだよね。」などと話をして、問題を解くにあたっての心構えを伝えた程度です。

その後本番までに少しはα中学の過去問を解いたようですが、もともとの第一志望校も受験する方針は変えていなかったため、直前の対策は圧倒的に第一志望校の方に時間を割いていました。


そして受験の結果、H君はα中学に進学することとなりました。

結果が出た後、再度α中学の魅力や実力を伝え、α中学に進学することに誇りを持たせてH君の指導を終えました。


あの日あの時、あの本屋であの雑誌を見つけていなければ、そもそもあのタイミングでα中学が雑誌に特集されていなければ……。H君がα中学に行く可能性はゼロでした。


どんな中学に進むことになるのか。それを決めるのは、まさに何かの縁だと思います。

合格した学校、進学することになった学校というのは、何かの縁があった学校。急遽受験しても合格できるような学校は、本当に相性の良い学校。そのような受けとめ方をして受験に臨むのが、人生の分岐点を通過する際の自然な姿なのではないかと思います。


最後に注意点を一つ。もし新たに受験する学校を増やすのであれば、志望校・併願校を変えたことが受験全体の失敗の原因になることのないよう、より慎重な併願作戦をとることも必要になります。

この時期に志望校を増やすことは一つの冒険でもありますので、しっかりとリスク管理はしておきましょう。冒険に準備は不可欠です。

そういう準備さえできていれば、この時期でもまだまだ宝探しができます。前から気になっている学校、急に気になり始めた学校、お子さんがより成長できそうな学校が思い浮かんでいるのであれば、チャレンジしてみるのも一つの手です。中学受験における最後の冒険です。

そういう攻めの一手を繰り出すことが、悔いのない受験につながることもあるはずです。

繰り返しになりますが、攻めるからには守りはしっかり固めましょうね。




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