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『大腿骨骨折で寝たきりになりたくないから運動をしない』はNG。(前編)

高齢者の方が危惧するものの一つに、大腿骨骨折があります。

大腿骨骨折の中で多い大腿骨頸部の骨折では、傍を通る重要な血管を傷つけてしまう事により栄養が生き渡らなくなる組織部分が発生し、特に大体骨頭が壊死を起こすことで、歩行困難になってしまう事があります。
そのため、この大腿骨頸部骨折を起こしてから寝たきりになってそのまま活力を失って病気などで亡くなられてしまう方や、車いすで不自由な生活を強いられる状態になってしまう方の例は実際に多くあります。

そういった事例を見聞きしてよくご存じなようで、私の整体院に来られる高齢のクライアントさん達がよくおっしゃられるのが、
『大腿骨骨折をしたら大変なのでなるべく外を出歩かないようにしている』
というものです。

そんな時、
「それは逆です。むしろなにかしら運動の習慣はつけないと大腿骨骨折になりやすくなってしまいますよ。」
と、こう私は答えます。

意外に思うかもしれませんが、運動しなければ体に負担がかからなくてケガをしないというのは実は間違った考え方なのです。(もちろんやりすぎはダメですが)
むしろ、運動しなければしないほどリスクは高くなっていきます。

交通事故や高所からの転落などによるものは例外として、歩いていたら転倒して大腿骨頸部を骨折してしまったというよく聞く事例。

これは実は、転倒したから骨折したのではなく、骨折したから転倒したという状況が多いのです。
因果関係が逆なわけですね。

普通に歩いているだけで骨折なんて起こるわけがないと思われる方もいるかもしれませんが、高齢者の場合はこれが起こるメカニズムが発生しやすくなります。

このメカニズムのカギは大きく分けて2つあります。
それは、【骨粗鬆症】と【大腿骨頚体角】。

今回はまず前編として【骨粗鬆症】について書いていきます。

ほとんどの方が知っておられるとおもいますが、骨粗鬆症とは骨が脆くなっている状態の事です。
骨が脆くなれば骨折しやすくなるというのは当然の事ですね。
ではなぜ骨粗鬆症になってしまうのかという事から説明していきましょう。

骨は、骨格として体を支える構造体という目的で存在すると同時に、カルシウムの貯蔵庫という側面もあります。
生体内では常にカルシウムを様々な生体反応の材料として使っています。
ですので、その貯蔵庫として骨に沈着させつつ、その特性から骨格の構造体として利用しているという事になります。
実に無駄がなく、うまく物質の特性を利用したシステムですよね。

それで、骨は骨細胞とその元となる骨芽細胞によって骨として形成されていたり、破骨細胞の働きによって必要な分のカルシウムを切り崩したりしています。
要するに、体のあちこちの骨の周囲で常に作ったり壊したりを繰り返しています。
つまり、骨粗鬆症になってしまったという事は、その壊して作ってのバランスが壊す方に大きく傾いているという事になります。

このバランスはホルモンによって制御されているのですが、歳をとるとこの骨を作る方に働く方のホルモンの分泌が自然に弱くなってしまいます。
ですので、高齢者の方に骨粗鬆症が多いわけです。

じゃあ歳をとったらどうしようもないじゃないかと思われるかもしれませんが、もちろん体はそんな絶望的に短絡的なシステムにはなっていません。
この骨形成システムは、ある事をする事でバランスを大きく崩さないようになっています。
それが、運動です。

この骨を作る方に働くホルモン、これはなんと骨に圧力をかける事が分泌のスイッチになっています。
歳をとるとあらゆる体の働きが弱るのでホルモン分泌自体が弱くなるのは仕方のない事ではありますが、それよりも歳をとったからといって体を動かさなくなってしまう事の方が骨粗鬆症の要因としては大きいのです。

おもしろい例を挙げてみましょう。
宇宙飛行士は筋力が弱るのを防ぐ以外に、骨粗鬆症にならない為に毎日運動する事が日課になっています。
これは、重力による自然最低限の負荷すらない宇宙では、普通に生活していると全く運動していないのと同じ状況になってしまうからです。
宇宙飛行士といえば30代~40代前半の人が多く、まだまだ衰えるような歳ではありません。しかもアスリート並に体もしっかりしています。
そんな人が数週間~数か月宇宙にいただけで骨粗鬆症になる危険性があるほど、骨に圧力をかけるという事が骨形成に重要なファクターとなっているというわけです。


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