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チェンジマネジメントのナレッジがマネジャーの役割を強化する

 事業環境が変化すれば、それに適応すべく企業も変化していきます。この変化のプロセスには様々な乗り越えなければならない壁が待ち受けています。
 ところで、組織文化には、大きく外的適応の機能と内的統合の機能の2つがあると言われています(Schein, 1985)。企業が事業環境の変化に適応するとき、その適応プロセスに組織文化もスコープに入れる、いや、含めなければならない理由は組織文化が持つこの2つの機能があるからなのだと思います。
 組織が成功を重ねていくことはありたい姿でしょう。一方で、その成功の積み重ねが既存の組織文化に強い慣性力を与えるようになり、組織メンバーの中に既存の価値観や組織文化への執着を強め、さらにそれが組織の集団としての凝集性や規範として人々へ作用するようになって、知らず知らずのうちに自ら変化し適応していく力を抑え込んでしまうという側面もあるように思います。強い組織文化が機能するときもあれば、逆機能することもあるということです。このことを認識すると、何らかの変革を進めるときに、特に組織文化が逆機能的に作用している状況下では、「チェンジマネジメント」が組織文化をその対象として扱うことが必要になるのだと思います。
 そう書いておきながら何なのですが、チェンジマネジメントを学んでいくと、そもそもチェンジマネジメントは組織文化の as is → to be をマネージするものなのだとも気が付きます。どのような状況であれ、to be を目指すとき、意識されているかはどうかはべつにして、「チェンジマネジメント」は行われているように思います。では、この「チェンジマネジメント」とはどのように理解したら良いのでしょうか。
 実は、私は当初「チェンジマネジメント」を誤解していました。チェンジマネジメントの仕事=PJチームにおけるコミュニケーションの担い手のように理解していたのです。それは最初に関わったプロジェクトのPMOの方がそのときの現状から「チェンジマネジメントがいま必要で、プロジェクト内のコミュニケーションを再構築しなきゃだめだ」と言っていて、そのタスクを置いたので、私の頭の中で短絡的に『チェンジマネジメント=コミュニケーション推進の役割』のような認識が入ってしまったのです。
 しかし、実際にチェンジマネジメントを学ぶと、この認識はチェンジマネジメントのひとつの側面にしか過ぎないと気が付きました。コミュニケーションを如何に図るか?はプロジェクト成功の重要なタスクではあるのは間違いありません。が、それがチェンジマネジメントの全体ではないということです。チェンジマネジメントのナレッジは、プロジェクトの進捗状況を把握し、次にどのようなハードルが待っているのかを思案するのにも役立ちます。チェンジマネジメントのフレームワークを使って私たちは現状を俯瞰して把握することができます。いま、この段階(状態)ならば誰に働きかけるのがいいのかといった、次に取るべきアクションを現状に照らし合わせながら組み立てる点においても役立ちます。
 先程、コミュニケーションはチェンジマネジメントの全体ではないと書きました。つまり、絵で描くと下の図のようなイメージです。

チェンジマネジメントの役割を担うマネジャー、あるいはエージェントの方がそれを実際の状況に合わせたアクションに落とし込むと、それはまさに人と人との間のコミュニケーションをいかに図るかという課題になることが多くなります。何だか分かりにくいことを書いているなと我ながら思いますが、伝えたいことは表面的にはコミュニケーション施策のように見えてしまうチェンジマネジメントのプロセスを支えるのは、チェンジマネジメントに関するナレッジとスキルであって、これなしに闇雲に状況好転のためのコミュニケーション施策を打っても、なかなか効果は得られないという点です。 「チェンジマネジメント」はこの氷山の全体です。氷山の水面下にあるナレッジやスキル、プラクティス(事例)を知っていることで、有効なチェンジマネジメントの施策を打つことができる。 さて、ようやく本題です。現場マネジャーの重要な役割は人(メンバー)の成長を支援し、組織をリードして、組織パフォーマンスを上げていくことであると考えると、人や組織の状態に影響を与える組織文化へのアプローチもまた不可欠なものとなるのではないでしょうか。 そのように考えると、これからのマネジャーが組織に働きかけるためにチェンジマネジメントは必須の知識になると思うのです。この知識を活用してその時々の状況に応じて有効な打ち手を講じることができるようになると思うのです。 例えば「メンバー間のコミュニケーションを改善する」みたいな課題というか、目標を掲げることがあります。このような課題にチャレンジするときにもチェンジマネジメントのナレッジは有効でしょう。チェンジマネジメントがどういうもので、どんなフレームワークがあって、どういう使い方が有効なのかは理解しておく。そうすれば、マネジャーはチェンジマネジメントのスキルを学び、実践してきた人にプロジェクトに参画してもらって、その力がプロジェクトの成功に繋がるように環境を整えることを通じてプロジェクトの成功をより強く後押しできる。プロジェクト組織図で明確にプロジェクトのPMOと役割を分離してチェンジエージェントの役割や権限を定義することなどは、マネジメントでなければできない組織体制作りでもあるので、ますますチェンジマネジメントを活かすことができるところと考えます。 そして、このように行動するマネジャーこそが変革のプロジェクトのスポンサーとして重要な役割を果たせることになります。『組織変革』への取り組みが成果を残すために、マネジャーが正しくスポンサーとしての役割を演じることの重要性だと考えます。チェンジマネジメントの理解、そしてそこでのマネジャーのスポンサーとしての役割が変革を伴うプロジェクトの成否を握るように思えてなりません。

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