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自治体職員必須知識 その4:人材の争奪戦が始まっている

人材不足時代の到来

今年(2023年)3月、リクルートワークス研究所の公表した「未来予測2040 -労働供給制約社会がやってくる-」は日本中の人事採用担当者にとって驚くべき内容だった。いや、全日本国民にとってと言った方がいいだろう。大人材不足時代がすぐそこまで迫っていることをデータで示したのだ。

創造する経営者」でピーター・F・ドラッカーは「すでに起こった未来は、体系的に見つけることができる」と言い、その一つに人口構造を上げている。そう、人口動態統計は間違いなくやってくる未来なのである。
その意味でこの『未来予測2040』は間違いなくやってくる未来を示唆している。

そもそも、日本の労働人口の減少は以前から言われていたことであるが、社会的認知として政治的にも経済的にもいまだ日本社会全体に危機感が共有されているとは言い難い。しかし、よく振り返ってみて欲しい。明らかに、この問題はすでに起きている。

人材争奪戦の幕開け

ご存じのとおり各都道府県において公立学校の教員不足が言われはじめて10年あまり。それがここ1~2年で加速しており、都道府県ごとに争奪戦が始まりつつある。
国家公務員も若手の離職率の高さが問題になっており、これに伴い人事院は中途採用に力を入れ始めている。民間においても国家公務員の再就職に特化したベンチャー企業ができるなど、人材採用に関心が高まっている。

そして、この流れが徐々に基礎自治体(市区町村)に押し寄せてきている。
一般社団地方自治研究機構は発行している季刊誌『自治体法務研究 No.72 2023年 春号』で「変わりゆく公務員の人材確保と管理」と言う特集を組んでいる。全体に論調は少々柔らかいような気もするが、行間に地方自治体の危機を感じさせる内容になっている。これらの内容を裏付けるかのように今年に入ってから、自治体の人事担当者や議会の総務委員長から人材確保のための相談がくるようになった。

人事考課制度の見直しがカギか?

彼らからの相談は「人材の流出が止まらない」と言う趣旨。そして流出する人材の大半は他の自治体に流れているらしい。となると、給与や福利厚生が良い自治体に人材が流れているのかと思えば必ずしもそうではない。なんと、『人事制度に対する不満』を理由に挙げて離職する人が多いと言うのだ。事情を知っているものとしては「とうとう来たか」である。

実は地方公務員の人事制度、特に人事考課制度は問題と矛盾の巣窟だという話を関係者からよく聞く。基礎自治体になると人材育成の方針も『ジェネラリストを志向するのかスペシャリストを志向するのかは明確ではない。』(日本の地方政府 曽我謙吾 中公新書)と言うのがた当たり前。所管業務の幅が広いため仕方がないところもあるが、本来地方分権一括法施行と共に各部署ごとに根本から作り変えるべきであった考課制度の弊害がここにきて表に出てきたのではなかろうか。いや、正確には何度も改正・改定されている自治体は多いのだが、時代に合わせてパッチワークのように部分改変を重ねてきているため、矛盾や不公平な内容になっていることが非常に多いらしい。

もちろん人事制度だけでなく、働きやすさや風通しの良さ、行き届いた教育制度なども働く職員としては大きな動機になろう。
一部の公務員職の転職サイトにおいては働きやすさについて、格付(食べログの口コミ評点のようなもの)を導入する動きもあると聞いている。今後ますます人材の確保をめぐって、知恵を絞らなければならない時代になりつつあるようだ。

先ずはこの記事を読んだあ・な・た。今から行動をおこすべきだ。人事担当でない人も、この事態を想定して人材採用難時代に備えるべきだ。もしかしたらまわりの人達は大して危機を感じていないかもしれない。考えようによってはそんな今がチャンスだ。
目的としての生産性の向上や手段としてのデジタル化は、競争相手がいるわけではないが、人材採用は民間企業や他の自治体との熾烈な競争だ。そして間違いなく、先行したものが有利な立場に立てる。
素早く、賢く、臨機応変に行動したものが勝者となる人材獲得競争時代が始まったのだ。


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