『Chase』★★★★☆(3.6)-音楽購入履歴#16
Title: Chase(1971)
Artist: Chase
Day: 2024/4/8
Shop: disk union osaka
Rating:★★★★☆(3.6)
レコードブームで価格高騰といえど
昨今レコードリバイバルブームが到来して中古レコードの値段が上がっているとはいえ、やっぱりものによっては100円で売ってるもんですね。
Chase 71年1st。
ブラスロックの代表的なバンドの一つです。
僕はブラスロックをほとんど聴いてなくて、シカゴだって〝素直になれなくて〟や〝サタデーインザパーク〟や〝長い夜〟くらいしか知らない。
あーあと〝ビギニングス〟は好き。ユーミンの〝やさしさに包まれたなら〟のイントロ12弦って〝ビギニングス〟からじゃない?
チェイスとシカゴと並んでブラスロックの代表格、ブラスロックの旗手ブラッド・スウェット&ティアーズ(BS&T)だってほとんど1stアルバムしか聴いたことがない。
BS&Tの1stはアルクーパーのブルースサイケデリア、あとジョンサイモンプロデュース、って感じでブラスロックというよりサイケブームの中の一枚って感じで聴いていて。トラフィックと並べて聴いてる感じ。
そんな感じでブラスロックにほとんど触れてこず、チェイスも全く通ってきてなかったんだけど、
それでも100円って言われたら買います。しかもそれが1stだったんで余計(僕は1st至上主義的なところがあるので)。
ジャケットが破損してて補修しているから、のようで、そんなもん全然構いまへん!
ブラスロックとは如何に
このチェイス1stを買うまでブラスロックについてほとんど考えたことがなかったんだけど、これを機に少し考えてみました。
というか考えさせられました。
まずロックとブラスの交わりで言うと、66年ビーチボーイズ『ペットサウンズ』なんかめちゃくちゃ管楽器鳴ってるし、67年ビートルズ『サージェントペパーズ』にもブラスロックと呼べる曲が登場する。
やっぱこの2枚っていたるところで名前が出てきてしまいます。なんであんなに評価されているかって、結構議論されますが、こうして史実を振り返る上でどうしても結び付いてしまうから、とも言えるでしょう。それだけ影響力が強いアルバムだったんです。
67年にはサックスプレイヤーのクリスウッドを含めたトラフィックがデビュー。クリスウッドは元々R&B/ソウルバンドのロコモーティブのメンバーで、ロコモーティブは70年に管楽器&オルガンサイケ/プログレな唯一作をリリースしている。
R&B/ソウル界隈では管楽器はマストだったと思うんだけど、ロック界隈に進出し始めたのはやっぱり67年付近ですね。
67年ザ・バンドもガースハドソンがサックス吹いたりジョンサイモンがバリトンホルン吹いたり。
デラニー&ボニーから始まるスワンプロック界隈ではサックスのボビーキースとトランペットのジムプライスが重宝されたり。
ビーチボーイズ含めてアメリカンポップ系やバーバンクサウンドらのソフトロック系はもちろん管楽器を多用している。
古いアメリカのポピュラー音楽はジャズなわけで、その辺のサウンドと当時のロックを融合させたわけだ。
それで、結局70年付近に登場したブラスロックはそれらと何が違っていたかというと、やっぱりブラスアレンジではなく「ブラスバンド」をバンドに含んでいたことに尽きるのか。
ロックバンドというものの幅が大きく広がったのがこの70年付近で。
60年代末のサイケブーム下で、ロックは様々な他ジャンルを取り込みまくった。
実験音楽や前衛芸術、クラシックやジャズ、東洋文化やビート文学やSFだったり。
70年付近にサイケはプログレへと変化していき、さらに表現の拡張へと向かっていった。
そんな中で「ロックバンド」という形式はめちゃくちゃ多様化していって。
プロコルハルムやキングクリムゾンなんかは作詞家をメンバーとしてクレジットしてたり
Electric Light Orchestraはストリングス隊をメンバーに従えていたり。
ブラスバンドをメンバーにしていたブラスロックっていうのは結構そういう流れの中にあるのかもしれない、と、この度感じた次第で。
つまりはプログレ的な背景と発想から始まったものなんだ、と。
どうしても賑やかでビッグバンドジャズ的なアレンジでポップを歌う、みたいに捉えてしまいがちだったんだけど、それはもう少し後の話で、70年付近のシカゴやチェイスは音楽的にかなりプログレッシブな方向性を示している。
英語版ウィキペディアを見ていると、シカゴもチェイスもBS&Tも「Jazz Rock」に分類されてて、つまりはソフトマシーンやコロシアムと同列で語られているわけで。
なんか印象だいぶ変わったんです。どっちかといえばR&Bやソウル的な、アースウインドアンドファイヤー的なのに近いと思い込んでいたので、ブラスロック勢って。
悲運のブラスロックバンド
それと、ちょっとこれを機にチェイスについて調べててびっくりしたこと、というか恥ずかしいことがあったんだけど。
チェイスって飛行機事故で74年にメンバー4人を失って崩壊してるのね。
僕はずっとこれ、シカゴの話だと勘違いしてたんです。
「飛行機事故でメンバーの大半を失った悲運のブラスロックバンド」って話が、どっかで入れ違ってシカゴとして認識していたみたいで。
人とシカゴの話してる時に飛行機事故の件とかに多分触れてきてるんよな、恥ずかしい。
ほんでチェイス、地上移動して飛行機事故を免れたメンバーが映画ロッキーの〝アイオブザタイガー〟で有名なサバイバー組んでるのね。
サバイバー(生存者)ってそんな意味があったんかいな。知らなんだ知らなんだ。
アルバム概要
さてChase 71年1st。
チェイスが特徴的だったのはブラス隊がトランペット4人で構成されてることらしくて、乱れ踊るトランペットが持ち味なんだけど、
それと絡むオルガンが結構重要な役割果たしてるなーって感想。
オルガンとブラス、結構ロコモーティブに近いのかも!
あと基本はやっぱジャズとかファンクだったりするんだけど、ところどころでクラシック的なフレーズがでてきて、それも面白い。
あとはラテンパーカッション。ベースも結構イカれてますねー。熱いのか冷たいのかわからないんですよね、その辺が面白い。
ブラス4人を含む9人組バンドだけど、本当に9人全員が機能しまくってて。
オープニングはインストジャズロック〝Open Up Wide〟から。
どうしてもブラスバンドって陽気な印象を受けるんだけど、めっちゃスリリングでシリアス。
2,3曲目と5曲目〝Get It On(黒い炎)〟はR&B/ソウルを発展させたようなファンキーなブラスロック。
〝Get It On〟はデビューシングルでありビルボード24位のヒット曲となった。
日本でもヒットしたようで、この後日本の歌謡曲でチェイスサウンドの模倣が多くなされたとか。
例の一つに挙がっていた和田あき子の〝古い日記(1974)〟を聴いてみたが、トランペットもバンドアレンジもパーカッションもまんますぎて笑ってしまった。
あとご存知T-REXの〝Get It On〟がリリースされたのも同年71年で、チェイスのものとの混同を避けるためにタイトルが〝Bang a Gong (Get It On)〟に変更された、という経緯もあったりするみたい。
4曲目〝Handbags And Gladrags〟とB面1曲目〝Boys And Girls Together〟はどことなく末期The Moveっぽいロックソング。
同71年、Moveのラストアルバム『Message From The Country』っぽいなーと何故か感じるんだけど、僕だけかもしれません。
なんか結構ブリティッシュなんですよねチェイス。特にバーミンガムと親和性高い感じ。
さて特筆すべきはB面2曲目でありアルバムラストソングとして置かれている全5章からなる14分の組曲〝Invitation To A River〟。
とにかくベースが大活躍する組曲なんだけど、ところどころでツェッペリンぽかったり、インプロ期のキングクリムゾンっぽかったり、めちゃくちゃエネルギッシュな一曲。
第1楽章【Two Minds Meet】は壮大なオープニングからランニングベースが走るジャズへと突入していくんだけど、
とにかく第2楽章【Stay】が秀逸。
2:40くらいからのパートかな?
クリムゾン〝Red〟の中間部のようなベースリフに乗せてレディオヘッド的なメロディを歌い上げ、その後にトランペットが重なってくるところがマジで昇天もの。
この後第5楽章まで展開していくわけだけど、結構最後の方は正直蛇足感あるというか、しんどくなってくるところはある。
とにかく第2楽章、イカれてるけど美しい。
ほんとにブラスロックって括りを考えなおさないとあかんなー、と思わされた一曲。ちょっとプログレッシブすぎた。
いやーブラスロックに初めてちゃんと触れたアルバムでした。面白かったしめっちゃプログレでしたねー。
ただ、チェイスにハマろう、2ndも聴いてみよう!とはなってないのが正直なところです。
でもこの1stを大事に聴き続けよう!と思ってるのも本当です。
そんな感じでござんしたー。
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