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図式で学ぶ量子論 #4 ~確率論としての古典論・量子論(後編)~

連載の記事一覧:
#1 量子論の数学的構造
#2 CP写像の基礎
#3 確率論としての古典論・量子論(前編)
#4 確率論としての古典論・量子論(後編)
#5 プロセスの表現
番外編 2準位系から多準位系への演繹による拡張は難しい
番外編その2 堀田先生の書籍(中略)演繹的に導けていない
番外編その3 量子もつれ状態と非局所相関について


前回に続き,古典論と量子論の確率的な性質を説明します。

あるプロセス $${ f }$$ が施される確率(つまり $${ f }$$ の確率的なふるまい)は,$${ f }$$ よりも「過去」にあるプロセスのみに影響を受けます。「未来」にあるプロセスから影響を受けることはありません。この性質は,「因果的」などとよばれます。

状態やプロセスは観測者によって変わる場合があります。つまり,客観的に実在するような概念ではありません。状態の表現である波動関数なども同様です。

純粋状態,混合状態,もつれ状態などの定義を示しておきます。

プロセスの大小関係を定められます。この大小関係は,半順序とよばれる関係になります。

実現可能なプロセスの定義です。

標準的な量子論の書籍ではチャネルのみが扱われることが少なくないのに対し,なぜこの資料ではそれ以外のプロセスを考えるかをまとめています。

任意のプロセスは実現可能なプロセスに比例します。仮にこれが成り立たないと,「冗長なプロセス」が存在することになります。

実現可能なプロセスのみを直列接続や並列接続してできるプロセスは実現可能です。確定的なプロセスやテストについても同様です。

「実現可能な状態全体から成る空間」と「実現可能なエフェクト全体から成る空間」は同型ではありません。後者の空間は,前者の空間を2個張り合わせた形をしています。

2個のプロセスが等しいための必要十分条件です。

参考として,「一般的な確率理論」において2個のプロセスが等しいことの定義を示します。

状態の組が完全に識別できるための必要十分条件です。

プロセス・状態・エフェクト・スカラーと,テストや測定との関係をベン図で表してみました。前回でも述べたように,量子論における理想測定は,測定ではなくテストの一種です。


前回と今回では,古典論や量子論の確率的な性質について述べました。次回は,プロセスの表現について説明する予定です。


この記事は,書籍「図式と操作的確率論による量子論」の内容の一部を紹介したものです(この記事のほうが詳しく述べている箇所もあります)。

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