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図式で学ぶ量子論 #5 ~プロセスの表現~

連載の記事一覧:
#1 量子論の数学的構造
#2 CP写像の基礎
#3 確率論としての古典論・量子論(前編)
#4 確率論としての古典論・量子論(後編)
#5 プロセスの表現
番外編 2準位系から多準位系への演繹による拡張は難しい
番外編その2 堀田先生の書籍(中略)演繹的に導けていない
番外編その3 量子もつれ状態と非局所相関について


今回は,プロセスの表現を中心に説明します。

cup列ベクトルを用いてcup状態を定められます(cup列ベクトルの定義は「図式で学ぶ線形代数 #3」で示しています)。これは一般化ベル状態とよばれるもののスカラー倍に相当します。

プロセスの格下げを自然な形で定義できます。行列を格下げすると列ベクトルになるのと同様に,プロセスを格下げすると状態になります。
プロセス空間 $${ \mathbf{Proc}_{A \to B} }$$ は状態空間 $${ \mathbf{St}_{B \otimes A} }$$ と同型であり,格下げが同型写像であることがわかります。

任意の量子チャネルはシュタインスプリング表現とよばれる表現ができます。

可逆な量子チャネルはユニタリチャネルであることがすぐにわかります。

量子論では群という構造がよく現れます。逆元が存在することが群の条件の一つですが,本書では群からこの条件を外した構造(モノイドとよびます)を意識します。このほうが量子論の構造の全体像を素直に理解できると考えるためです。群構造は,モノイド構造の特別な場合と捉えられます。

古典系と古典系の合成系の状態,または古典系と量子系の合成系の状態は,分離可能です。

任意の量子状態は,合成系のある純粋状態の片側を「捨てる」ことで得られます。

同じ量子状態の2種類の純粋化は,補助系に対するユニタリ変換で互いに変換できます。

量子状態 $${ \rho }$$ が $${ \rho = XX^\dagger }$$ と $${ \rho = YY^\dagger }$$ の2種類の形で表現できるとき($${ X }$$ と $${ Y }$$ は同じサイズとします),ユニタリ行列 $${ U }$$ を用いて $${ X = YU }$$ の形で表せます。

純粋化についての再考です。混合状態の純粋化 $${ \psi }$$ は,必ずもつれ状態になります。

同じCP写像の異なるクラウス表現の間に成り立つ関係です。先述の「同じ状態の異なる表現の間に成り立つ関係」と,同じ構造をしていることがわかります。

一般化ベル状態 $${ \cup_n / n }$$ の活用例として量子テレポーテーションを簡単に説明しています。量子テレポーテーションにより,アリスの状態をそのままボブに転送できます。

量子テレポーテーションを応用すれば,量子中継とよばれる処理を行えることが容易にわかります。


これで本連載はひとまず終わりです。最後までお読みくださり,ありがとうございました。

この記事は,書籍「図式と操作的確率論による量子論」の内容の一部を紹介したものです(この記事のほうが詳しく述べている箇所もあります)。

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