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コロナ後の観光トレンドを考える

私が住むフランスでは外出自粛令が終わり、ニュースの話題は「夏のバカンスをどうするか」でもちきり。

ある意味でフランスらしいなと思うのですが、世界一の観光立国でもあるので、国の経済にも大きな影響を及ぼします。ホテルやレストランなどはハイシーズンの夏が年間の売り上げの大半を占めることも多いからです。

昨日はコロナ禍で甚大な打撃を受けた観光産業についての今後の復興策が打ち出されました。単純に苦境に直面している企業の救済から、フランス人にこの夏は国内で旅行してもらうための需要喚起、そして、今後のための投資です。

マクロからミクロへ、そしてまたマクロへ?

コロナ以前は「オーバーツーリズム」が一つの問題となっていました。京都、バルセロナ、ヴェネツィアがよく例として取り上げられていましたが、結果的に少なくとも当面はそういう話は出なくなるかと思います。

その理由はフランスだけでなく、どの国もすぐに国外よりはまず国内、もっと言えば地元や近くを旅行するところから立ち上がっていくからです。

フランスでは外出自粛や禁止期間に地産地消の重要性を改めて再認識されました。地元のものを消費をするという流れが、しばらく続いていくと思います。

物が国境を超えるのが難しい中、人が動くのはもっと難しいのは自明の理でもあり、観光においてもさしあたりはそういう風に再開していくだろうということです。これはどの国においても共通した流れになるでしょう。

元通りではなく、新しい形の観光を模索

ここ数日のフランスの観光再興プラン関連の記事を読んでいて、今後に向けての投資の項目で目に留まったのが「エコとデジタルへ」でした。

コロナの影響ですっかり吹き飛んでしまった印象すらありますが、コロナ前は地球温暖化への懸念からすでに色んな分野で「エコ」へシフトしつつありました。持続可能な観光の形を探るというのはある意味で自然の流れと言えると思います。

一方で、「デジタル」というのは特にコロナ以後で重視される観光のキーワードなのかも知れません。

当たり前の話ですが、訪問する場所が安全かどうか、もっと言えば感染の危険はないかというのは、この先数ヶ月から1年はその場所を訪れるかどうかの大事なチェックポイントになると思います。

文化施設に限って言えば、色々なものをデジタル化する、例えばチケットなどの紙を減らしてQRコードにするというのは身近なところかもしれません。現地でチケットを買わずに、ネット予約にすることで接触が避けられます。

大きい施設はすでにそういう流れになっていますが、小さい施設にも今後波及していくかもしれません。

ヴァーチャルツアーの未来

「デジタル」という言葉を見て、すぐ思いついたのがヴァーチャルツアーでした。外に出れないということで、人々が殺到したのがデジタル空間として再構築された美術館などの文化施設でした。

今後のフランスの国としての観光の方向性として、来ることができない外国人にいかにネット上で文化や観光体験をしてもらうのかというのがあるようです。

もちろん、実際に現地に行って感じる体験と同じものを画面を通じて得られるわけはありません。

少し前にどこかで読んだのですが、外出自粛や禁止の初期の時にオンラインの美術館などのアクセスが跳ね上がったそうですが、数日経つと一気に下がったそうです。

たぶん、そこにはインタラクティブ的な要素が欠けているので、アクセスが急激に落ちたのではないかなと思います。言葉はあまり良くないですが、飽きられてしまったと。

それに加えて、身近にあると逆に行かないというのもあると思います。本を買ったものの、買った時点で満足して、後で読もうと思って放置するという感じでしょうか。

ただ、今後、もうすぐ導入される5GとかAR(拡張現実)が進化して、家庭にインフラが普及した時に、1ランク上の体験ができるのかもしれません。デジタルならではの付加価値をどのように与えていくかというのも今後の成功の鍵なのかもしれません。

とはいえ、やはり美しい街を歩いた体験や名画を目の前にした時の感動は超えられないと思います。

少なくとも、観光に携わる者としてはそうであってほしいなと思いますし、ただ地球の一市民として、仮想空間ではなく現実空間を安心して歩ける世界や未来が来てほしいなと願う日々です。

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