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ワイズカンパニー

野中郁次郎・竹内弘高 著『ワイズ・カンパニー』(東洋経済新報社)

 企業の持続的なイノベーションには、1996年に著された名著『知識創造企業』で解き明かした“形式知”と“暗黙知”に加え、“実践知”(フロネシス)が不可欠であること、また今日のような不確実な世の中においては、経営の根幹に必要なのは資本主義的なデータに基く戦略(アウトサイドイン)ではなく、経営者の主観的な理想(望む未来)を実現する“共通善”(公益の追求)であると説いています。

 タイトルであるワイズリーダー(賢明な変革者)とは、「何事にも文脈があることを踏まえて判断し、あらゆるものが変わることを踏まえて決定を下し、どんなことも成否はタイミングに左右されることを踏まえて行動を起こす」リーダーであり、それは必ずしもトップマネジメントのみを指しません。

 第3章「知識創造と知識実践のモデル」では、前著「知識創造企業」で提唱したSECIモデルを、1サイクルにとどまらず次々と増幅しながら繰り返される「SECIスパイラル」として再定義し、JAL、シマノ、エーザイなど実際の企業で起こったイノベーションのプロセスを、共同化→表出化→連結化→内面化の諸段階にあてはめて解説しています。

 入り口(第2章)で"知"に対する哲学的なアプローチが行なわれていることで、やや難解で敷居が高い印象を受けますが、敢えてそこを飛ばして読み進めることで極めて実践的な書物として一気に読み進めることができます。

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