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ジョブ型を盲信しない

  今朝(10/9)の日本経済新聞から、『ジョブ型雇用への道筋は』。テレワークの急速な普及に伴い一気に加速したジョブ(職務)型シフトへの議論。4人の識者がそれぞれの立場から明快に自論を主張しています。

  何の準備もないままにテレワークの世界に放り込まれたことで一気にマネジメントが破綻したせいか、ジョブ型を救いの神のように全肯定する論調が多いですが、実際には様々な課題があります。

  今回の4人の主張は、総論としてはジョブ型を有効としながらも、明確に課題を示して冷静な主張を行なっています。

  まず、かつて日本の高度成長を支えた“共同での仕事”に適した職能型が、GAFAに象徴されるように知的生産物を生み出すビジネスモデルには相性が悪いことから職務型への移行が必然であるとするのが企業再生のプロ、富山和彦氏。

  しかしながら日本社会に定着するには解雇ルールの明確化や、個人が自身のケイパビリティを明確にする努力が欠かせないとしています。

   管理職以上を対象にいち早く職務型を導入した三菱ケミカルの越智社長も、プロフェッショナルの集合体をマネジメントする上では中間管理職層の変革が重要としています。

  またLinkedin日本法人社長の村上氏は、形ばかりのジョブ型以降がかえって自社の優秀な社員の流出につながる危険性があることを指摘しています。

   そして最も現実的な主張を行なうのがリクルートワークス研究所の中村天江氏。「ジョブ型雇用は最先端の事業をグローバルに展開し、厚待遇で抱えたい人材群が明確になっている大企業ほど機能する。」と、中小企業や在宅勤務の生産性を高めることだけが目的であれば、職務型に必要なジョブ・ディスクリプションの作成や運用に要する手間やエネルギーを考えると「役割型人事」で十分だというのです。

  バブル崩壊以降の不況期に、多くの企業が成果主義を導入した時、突き詰めれば総額人件費の抑制が主目的であった企業は多く、皮肉にもそんな各社が移行期に発生する「調整給」によってたいした抑制効果が得られなかった、というような本末転倒が起きないよう、その目的とそれに適した対策を冷静に考える姿勢も必要なのではないでしょうか。

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