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戦略の創造学②

前回に続き、山脇秀樹氏著「戦略の創造学」の要約(第4章〜6章)です。

※前回(第1〜3章)はコチラ(↓)をご覧ください

Chapter-4 : 顧客にとって新しい「意味」を創る
   本章では「成功するイノベーターは左脳と右脳を使う」というドラッカーの言をキーテーマに、顧客の購買理由は決して技術(機能や装備、品質)ではなくその製品が呼び起こす感動や共感といった心理的・文化的充足度であるとし、それを顧客にとっての「意味」と呼んでいる。
   スターバックスが産み出した「サードプレイス」のほか、任天堂Wii、AppleのiPodなどの例を挙げていますが、何と言ってもTOYOTAのプリウスが産み出した「地球(環境)を救う車」という価値観は、筆者の言う「意味」とは何かを理解する上で最も分かり易い例と言える。

Chapter-5 : 新しい意味を創る「予備的分析」

   1990年代において急速に普及したペットボトル飲料は、飲み終わった水筒を持ち帰らなくてよい、という顧客体験をもたらした。すなわちペットボトルの“意味”は「持ち運べる、飲んだら捨てられる」であった。
   しかし今日、ペットボトルの“意味”は「環境汚染に繋がる」へと大きく変わった。形状も内容も価格も、全く変わっていないのにである。
   これに対し、米国のティーンエイジャーに人気の水筒「ハイドロ・フラスク」は、その製品コンセプトによって『環境に優しく、自然を愛し、仲間と一緒に楽しく外に出かけよう』という新たな意味を纏った。
   本章では、「携帯飲料水容器」の課題が下記のように変遷していることをモデルに、洞察(いかにビジネスの着想を得るか)のヒントが提供されている。
          1890年代以前:水筒の素材・形状
          1890年代以降:水筒の大量生産
          1990年代 : 低コストで廃棄とリサイクルが可能なペットボトル
          現在 : 環境に優しいというライフスタイル
          未来 : 給水ステーション(筆者の仮説)

Chapter-6 : 共感を生むためのツール「デザイン思考」
    本章では、デザイン思考のツールとして「カスタマージャニー」「マインドマッピング」の手法を紹介した上で、事例としてIKEAのビジネスモデルが誕生した背景を解説している。
    同社は、従来の家具の常識である、代々にわたって受け継がれる高価なもの、注文から納品まで時間がかかる、伝統的なデザイン、といった事柄から、新たなペルソナを設定することで脱却し、「欲しい時に手に入り、比較的安価で、小さなアパートにも合う」という“意味”(顧客価値)を作り出した。そしてそれだけでなく「平積みできて、輸送量が大幅に安くなり、組み立てる労賃が不要」といった供給サイドのメリットも産み出した。
    この成功の基点は、スウェーデンの伝統的な家具市場において、ユーザーの僅かな部分が構成する市場を満たすために大きな資源が費やされているという不調和を解決することをIKEAの「目的(Purpose)」としたことである。

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