仕事に20%の愛を
“Take me to Church” by Sergei Polunin .
2,800万回以上も再生されているこの動画で叙情的なダンスを踊っているのはセルゲイ・ポルーニン。19歳にして、英国ロイヤルバレエ団のプリンシパルを務めた人物です。
生まれ故郷のウクライナで体操選手として活躍しているところをスカウトされ、その類稀な才能で伝統あるロイヤルバレエの技巧を習得し史上最年少でプリンシパルに選ばれます。
しかし彼は、21歳の時に失踪するようにロイヤルバレエ団を退団、その後は実家にも寄り付かずいくつかのバレエ団を転々とします。
そして彼が再び脚光を浴びるきっかけとなったのが、友人とともにハワイで撮影し、動画サイトYoutubeにアップロードした先の動画です。
雑誌のインタビューで彼は、伝統あるバレエ団だからこその抑圧や、家族の期待に応えるためというプレッシャーによって彼自身が表現したいバレエを全くできないストレスと闘っていた、と話しています。そこから脱したいと願う強い思いの表れが全身に纏ったタトゥーであり、この動画や振付けだったのです。
彼のエピソードを引用した「仕事に関する9つの嘘」(サンマーク出版)で筆者は、彼が壊れてしまった原因はバレエ団が彼のバレエに対する真の愛情を理解せず、伝統と格式という枠で縛り付けてしまったからだ、とした上で、「ロイヤルバレエの古典的なレパートリーから解き放たれたポルーニンは、仕事への愛を取り戻し、われわれ全員がその恩恵に浴している」と結んでいます。
現在、かれはダンサーとして活躍する傍ら、「プロジェクト・ポルーニン」という組織を立ち上げ、とかく孤独で厳しい環境を勝ち続けなければならないダンサーを支援する活動を始めています。
「好きなことを仕事にしよう」
「いや、それは簡単なことではない。むしろワークライフバランスだ」
この終わりのない議論に対して「仕事に〜」では、仕事の中に20%の“愛せる部分”を作れ、ということです。ポルーニンはロイヤルバレエ団やプリンシパルという立場、そもそもバレエの全てを愛していたわけではなく、「(伝統や格式に囚われずに)自身の感情やインスピレーションを踊りで表現すること」を愛していたのです。
私たちが身を置く人材紹介ビジネスにも、「業界大手」に属し、魅力的な「成長分野」を担当して高い業績をあげる「トップセールス」が存在します。しかしその中には、短期間で燃え尽きたり単調な仕事に先行きを見失ったりする人も少なくありません。
人材紹介の何を愛しているのか、その仕事のどこに深い愛を感じているのか、自身やチームメンバー、従業員がそれを再認識するための機会を、無理にでも設けた方がよいのではないでしょうか。
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