見出し画像

格闘ゲームの旧石器時代(1984年頃)とバブル前の日本


1984年、バブル前の日本で発売された2本の石斧

1984年ファミコンで発売されたイーアルカンフー(コナミ)というソフトはおおよそ始めての格闘ゲームと言って良いのではないかと思う。パンチキックジャンプで、なんの特徴もない敵を100面まで倒すと自動的に1面から再スタートするというエンディングのないゲームだった(そもそも大抵途中で死ぬかバグるかだけど)。同年、カラテカ(ソフトプロ)というこれまたキックとパンチだけの空手ゲームが出たが、このゲームには構えという他のゲームにはないシステムがあった。移動(足が早い)と戦闘(操作性の悪いすり足)を下ボタンを押すことによって分けるのだ。それをしないで平常時のまま敵に突っ込むと一撃で死ぬ。礼儀正しくお辞儀をすることも出来る。が、ステージを進めるにつれてお辞儀中に蹴りを入れてくる輩が増えてこのゲームが<空手家>ではなくて<カラテカ>である事を思い知らされる。難しいゲームだった(俺は二つのシャッターが並んでいるところがどうしても抜けられなかった)。ステージの端に落下する溝があり、そこに落下する時のモーションが荒いドットの中で生々しく表現されていた。兄が爆笑しながらそのリアルさを何度も再生する為に自殺を繰り返していたのを覚えている。調べて分かった事なのだが、このカラテカを作った開発者はのちにプリンス・オブ・ペルシャという、まさにこういったアクションの生々しさで定評のある大ヒットゲームを輩出していると分かって納得した。

当時のアクションゲームにジャッキー ・チェン、ならびに映画ベストキッドがもたらした影響

さて、この時代には一対一以外で様々なアクションゲーム、主にベルトスクロールアクションであったが、それらの非常に多くが中国のクンフーをテーマにしていた。これの背景には、当時まだイギリス領であった香港から、ジャッキー チェンのクンフー映画が大ヒットを連発していた事はまず間違いなく関係あるとみて良いだろう。さらにテレビ番組のドキュメンタリーなどでも、中国という国を<壮大なシルクロードの続く憧れの、日本のアニキ分>として尊敬し、もてはやすような風潮があった。これは、当時まだ日本がバブル前であった事も関係しているように思う。そして、<カラテカ>が発売された1984年、ベストキッドという<KARATEKA>のアメリカ映画が大ヒットした。空手はどうか分からないが、少なくともKARATEであれば世界でも受ける事が分かった年だった。かくして<カラテカは>84年の12月に発売されている。ちなみにカラテカの開発元は日本ではなくてアメリカだ。ググってもらえれば分かると思うが、明らかにDanielさん(ベストキッドの主人公)が表紙に写っている。そしてその奥には鎧兜を被ったラスボス(その名もAkuma将軍)らしき人が写っていて、横に印刷されたプレイ写真の背景にはフジヤマらしきものも確認できる。この時点で日本人の自分には非常に情報量が多い。とにかく、当時の日本のイメージはまだまだ

Sushi, Geisha, Samurai, Ninja, Karate, Yakuza

程度のものであったという事だ。

<シルクロードのアニキ>から<世紀末救世主伝説の時代へ>

クンフーRPGゲームのケルナグール(ナムコ)という作品が1989年に発売されている。発売もファミコンの後期ということもあり、中国拳法アクションものの中では最もアクションが発達した部類といって良いと思う。ただこのソフトが出る頃には既に元祖ストリートファイターが発売されているので、あくまでファミコンのカンフーアクションの最終形であったという意味だ。ストリートファイター(87)というゲームが如何に特殊な存在であるかを発売年を見ると再確認させられる。

さて、ここから格ゲーの新石器時代・ハードボイルド系ベルトスクロールアクションの時代、世紀末ブームの時代がやってくる。クンフーとKARATEの時代から、モヒカンたちが地下鉄でチェーンや鉄パイプを振り回す時代だ。そして日本は、85年のプラザ合意によりバブル期に入っていき、海外旅行ブームなどが起きる。<シルクロードのアニキ>ビジネスは下火になっていき、世の中は<ノストラダムス>ビジネスへとシフトし始めた。そして、クンフーから鉄パイプの時代への変遷の象徴と言っても良い人物がここで現れる。

<ケンシロウ>……だ。漫画北斗の拳のジャンプ連載の開始が1984年、アニメ放送が85年でその後、88年まで続いた。そして、その存在を語る上で決して欠かせない映画、MADMAXシリーズの3作目であるサンダードームが85年に作られた。さらにここが非常に重要なのだが、これの宣伝を兼ねてこの年、マッドマックスの2作目であるロードウォーリアー(81年公開)が全国でテレビ放映された……。この<世紀末の救世主>は、ここからの世紀末のアクションゲームの雰囲気を急速に変えていったまさに張本人であり、あらゆるものの<原型>となる。

→新石器・新人時代へ続く

#自己紹介をゲームで語る

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?