見出し画像

視座と対象から紐解くデザインキャリア


この記事は11月12日に行われた「【1夜限りのトークイベント】インハウスとクライアントワークの景色からみるデザインキャリアの可能性」で発表した内容を記事にまとめたものです。


視座と対象から紐解くデザインキャリア

画像1

こんばんは。今日は「視座と対象から紐解くデザインキャリア」というテーマでお話をさせていただきます。具体的には、自分のデザイナーとしての働き方を振り返りながら、デザイナーのキャリアはどのような構造をしているかを整理してお伝えできればと思っています。

画像2


話す人について

鈴木健一といいます。株式会社プレイドでUIデザインをしており、現在はデザインシステムを用いた画面間の一貫性の向上などにコミットしています。ダイエットにもコミットしています。

画像3


プレイドについて

株式会社プレイドですが、「データによって人の価値を最大化する」というミッションのもとに「KARTE」というCX(顧客体験)を設計できるプラットフォームを提供しています。

画像4

Webサイトやアプリに導入することにより、ユーザーをリアルタイムに可視化し、マーケターやデザイナー、エンジニアの方々が、相手に合わせた体験を設計できるプロダクトになります。

画像5


キャリアサマリ

自分のキャリアについて紹介します。もともとはケーキ職人をしていまして、そこからキャリアチェンジし、派遣会社に登録。マークアップエンジニアとして派遣先に従事したのがスタートになります。

次に株式会社エフアイシーシーという制作会社に転職し、Webデザイナーをしていました。
その中で縁あってデジタルプロダクトのUI設計に関わり、その面白さに可能性を感じ、プロダクトのUIデザインを専門に行う株式会社スタンダードを創業しました。

現在所属しているプレイドは、スタンダード時代のクライアントでもあり、継続して関わらせてもらってきた中でやりきれない部分やもっとコミットしたい思いがあり、去年の5月から正社員として兼務することになり今に至ります。

画像6


デザインキャリアの構造

まずはデザインキャリアの構造についてお話します。自分の経験を振り返るに、キャリアには2つの構成要素があると感じています。
1つ目が「視座」で、2つ目が「対象」になります。

画像7

視座=置かれている立場
「視座」というのは自分が置かれている立場のことで、この場合「クライアントワーク」や「インハウス」が該当します。

画像8

対象=デザインする対象や寄与する成果
「対象」というのはデザインの対象や寄与したい成果の事で、「マーケティングのためのデザイン」「プロダクトのデザイン」「組織のためのデザイン」などを指します。他にも「●●のためのデザイン」のような対象がいくつもあると考えています。

画像9


マトリクスで整理

2軸をもとにマトリクスで整理したものが以下の図です。視座と対象によって6つの象限に分けることができます。次に、象限毎にどのような違いがあるのか考えてみました。

画像10

視座での違い
視座による違いは、クライアントワークでは、顧客やエンドユーザーが抱えている課題への共感が求められるのに対し、インハウスでは、「自分たちがどのような価値を社会に提供したいか?」というビジョンをいかに自分ごと化して捉えられるかが重要になると考えています。

他にも、クライアントワークでは様々な業種業態のデザインに関わるため、多領域への関心が求められるのに対し、インハウスでは特定領域に対する積み重ねの思考のようなものが重要になるのではと感じています。

画像11

対象での違い
次に対象による違いを考えてみました。
「マーケティングのためのデザイン」としては、利用者の態度変容を促すことにより顧客を創出、維持していくことが求められます。
「プロダクトのデザイン」に至っては、製品の利用を通じて継続的な課題解決や価値提供をしていくことが求められるように思います。
最後の「組織のためのデザイン」については、組織内部で起きている様々な構造的な課題を解決していくことにより、持続的に事業成長につなげる組織体にしていくことが必要とされていると考えています。

画像12

更に、各象限の中でも、求められるスキルの幅や深さのような軸があると思っています。

画像13

このように、象限により求められる事が違う中、デザイナーはどのように向き合えばよいのでしょうか?


各象限にどのように向き合うか?

ここでは自分がどのようにそれぞれの象限に関わってきたかを振り返ってみたいと思います。

画像14

クライアントワーク×マーケティング
初めは「クライアントワーク×マーケティング」の象限からキャリアをスタートしました。エフアイシーシーでは、企業の世界観を伝えるブランドサイトや、消費財の認知購買を促すプロモーションサイトなどの企画制作に携わりました。

画像15

画像16

インハウス×マーケティング
次に移動したのが「インハウス×マーケティング」の象限になります。
会社は変わっていないので違和感を感じられると思うのですが、ここでは自社サイトのリニューアルに関わっていました。業界内でのポジショニングや目指すべき理想像を踏まえたメッセージングのための情報設計やビジュアルデザインを行いました。

画像17

画像18

デザイン会社はインハウスでもある
ここで気づいたのは「デザイン会社はインハウスでもある」という点です。デザイン会社にいながらも、社内プロジェクトに関わることにより、クライアントワークの事業を提供するインハウスデザイナーという視座を得ることができました。

画像19

インハウス×プロダクト
3番目に経験したのが「インハウス×プロダクト」の象限です。
ここでもまだ同じ会社に所属していますが、社内プロジェクトとして、クリエイター向けのポートフォリオサービスの立ち上げに関わる事ができました。
これにより、デザインが寄与する対象がマーケティングを目的とした広告的なものだけでなく、広告の先にある製品そのものへも関わっていくことができる可能性と魅力を感じ、UIデザインを専門に行うスタンダードの創業に繋がりました。

画像20

画像21

クライアントワーク×プロダクト
スタンダードで経験していたのが「クライアントワーク×プロダクト」の象限です。
スタートアップやインターネット系の事業会社に対し、新規プロダクトの立ち上げや既存プロダクトのUI改善などをサービスとして提供していました。

画像22

画像23

インハウス×組織
次に移ったのが「インハウス×組織」の象限。
スタンダード社内の施策として、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の定義や目指すべきビジョン達成に必要な一連の打ち手をメンバーと共創し、組織/個人OKRとして運用していくことにより成長につなげていく取り組みをしました。
また、デザイナーの働き方を再設計する取り組みとして、自分で働く時間や目指す年収を決める「成果還元モデル」の導入や、従業員でなく全員がフリーランスとして活動する「ギルド型組織への移行」の試みも行いました。

画像24

画像25

画像26

流動的な組織体へと移行していくのに合わせ、自分も未経験だったインハウスの視座を手に入れたく、プレイドへ正社員として参画し、兼務する形で活動するようになりました。

インハウス×マーケティング
参画して初めに取り組んだのが「インハウス×マーケティング」の象限です。KARTEのプロダクト価値を体現するロゴの刷新、サービスのWebサイトの刷新に携わりました。

画像27

画像28

インハウス×プロダクト
現在関わっているのが「インハウス×プロダクト」の象限です。
ここでは既存画面に対してデザインシステムを適用していくことによる利用体験の改善に取り組んでいます。

画像29

画像30

このような遍歴で自分のキャリアは形成されていることが分かりました。

画像31


デザインキャリアの見える化

自分の歩みを振り返ってみます。具体的には、経験した回数や経験の有無を色分けすることによって、キャリアをヒートマップ化して見える化できると感じています。自分の場合、見える化したことにより3つの気付きを得ることができました。

画像32

1つ目が「組織デザインの経験が少ない」こと。クライアントワークではそもそも経験がなく、インハウスについてはスタンダードで行ったことがあるくらいということに気付きました。

画像33

2つ目は「デザイン会社でもインハウスの視座を経験できた」こと。自社サイトのリニューアルを通じて、クライアントワークの事業を営む会社としてインハウスデザイナーのような経験ができたように感じています。

画像34

3つ目は「環境を変えずに、別の対象にトライできる機会があった」ことです。デザイン会社に所属していながらも、プロダクトデザインに関わる機会があったことが、後のスタンダード創業のきっかけになったと考えています。

画像35

他にもある、見える化するメリット
その他にも、見える化することで他の方と比較することができるようになります。
例えば今回登壇されたミナベさんの場合、クライアントワーク3領域、インハウス3領域をいずれも広くカバーされている点に加え、平野さんの場合、デザイン対象として「社会課題解決のためのデザイン」のような領域もDSCL社として提供されており、自分にはない要素があることに気づくことができました。※個人の想像です

画像36

画像37


現在地が分かったとして、どうするか?

自分のキャリアを振り返り、見える化、比較することにより現在地が分かってきました。更にこの後どうするか考えを進めてみました。
自分は「理想や憧れを描く」ことが良いのではと考えています。

画像38

モチベーション×能力でプロット
例えば、6つの象限を「やりたい/やりたくない」のようなモチベーションと、「できる/できない」のような能力でプロットしてみる方法です。

画像39

その中で「やりたいけど、できない」の象限をできるようにしていく戦略。「できるけど、やりたくない」象限をやりたくなるようにしていく戦略。または「できる×やりたくない」象限を効率化し、浮いた時間を「やりたい×できない」の象限に投資していく戦略などが考えられます。

画像40

画像41

画像42

希少性×需要でプロット
もう一つのやり方として「プレーヤーの多寡による希少性」「課題や需要の大小」で分類することにより「プレーヤーが少なく、需要が大きい象限」を戦略的に狙っていくようなパスもあるのではと感じます。

画像43

画像44

また、今いる象限から別の象限に領域を広げていく戦略に対し、今いる象限の専門性を高めていく、深めていくようなオプションも存在するように思います。

画像45

・・・とはいえ、自分はこのように戦略的にキャリアを捉えられておらず、あわよくば10年前の自分に伝えたい気持ちですが、出会いや運に助けられて、いまここにいることができているなど感じています。

画像46

今取り組んでいること

最後に、直近取り組んでいることについて話をして終わろうと思います。
現在は「インハウス×プロダクト/組織」にフォーカスしています。

画像47

プロダクトの領域では2つのテーマに取り組んでいます。
1つ目は「共にデザインする」取り組み。職種を問わずメンバーと共に、より良い体験をデザインしていく取り組みを、ステークホルダーインタビューやデザインレビュー、デザインシステムの構築などを通じて行っています。

画像48

2つ目は「組織特性に合わせた設計のアプローチ」です。プレイドは技術力の高いエンジニアが多く、パラレルで開発施策が進んでいます。
デザイナーが入りきれないプロジェクトも多数あるため、後追いで入ったプロジェクトでも素早く前提や仕様理解をした上で設計できるような調査のプロセスを体系化できないかと模索しています。

画像49

組織の領域では、企業を構成する抽象概念の整理に取り組もうとしています。
前半で出てきたミッション・ビジョン・バリューだけでなく、成長のための戦略を構成する様々な用語、概念を整理、構造化し、新しく入社されてきた方々にとっても理解できる形にしていくことを目指しています。

画像50

「インハウス×プロダクト/組織」の観点で、このようなことをしています。


現在地を知り、未来について考える

以上、自分の経験を通じてデザインキャリアを構造化してみた話でした。
これまでの経験をマッピングしてみることで、未経験の領域や得意領域を見つけたり、同僚だけでなくロールモデルにしている方との比較を通じて、今後トライしたい視座や対象を考えるきっかけになりましたら嬉しいです。

画像51


発表内容をまとめていただきました

UZABASE平野さん、DONGURIミナベさんの発表、パネルディスカッションの様子までわかりやすくまとめていただきました。ありがとうございます🙇🏻‍♂️


この記事が参加している募集

イベントレポ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?