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新人先生伴走物語⑤ 新人先生、ホントのところ

怒涛のような1学期も終わりを迎えました。3月まで新人先生たちにとっては、まさに激動の4ヶ月だったことでしょう。そこで、今回はそんな新人先生たちにインタビューに答えていただきながら、1学期を振り返ってみました。


1.先生になる前となった後で、ギャップを感じたのはどんなこと?

《Aさん》
4月1日に辞令交付式があって一週間後の8日には始業式。この「いきなり感」に戸惑いました。想像していた以上に急だと感じました。いきなり「黄金の3日間」で、このスタートで1年間が決まるような大事な場面を迎えたことが、期待値ギャップだったと思います。

《Bさん》
いい意味でのギャップを感じました。教育実習では、大きな学校で一人で遅くまで学校に残っているイメージでした。でも、ここの学校では、保護者対応で困ることもなくて、教材研究や丸つけなども、思ったよりできる時間がありました。おうちの人との距離が近いことにも驚きました。先日、子どもたちが作った野菜でピザを作る行事があったのですが、残ったピザの生地を保護者の方が全部調理してくれたり、とても協力してもらえました。

《Cさん》
子どもたちに「なめられたら終わりや。」と気負って着任したのですが、出会った子どもたちはあたたかく、この子どもたちのためになるようなことをしたいと思うようになりました。日々の教材研究が、とても大変だなと感じました。指導書などを見ながら授業を進めてきましたが、思わぬところでつまずきがあったり、活動に時間がかかったりして、1時間の授業があっという間に過ぎてしまいます。学習方法や環境も工夫してプラスアルファを作り出したいと思います。

《Dさん》
子どもとの関わりについては、思っていた通りでした。子どもと関わらない業務で、会計やパソコンでの入力などは、先生にはこんな仕事もあるのかと驚いたものもありました。職員会議で児童の様子をとても詳しく共有することにも驚きました。一人一人の児童に学校全体で関わっているという感じがしました。職員室の雰囲気が息苦しくなく、人間関係が平和なこともうれしいギャップでした。

七夕飾り


2.困っていることは、ありませんか

《Aさん》
そうですね。特にはありません。よその学校のことを聞くと、学年費の出入金も担任が行くと聞いて驚きました。それでは、空き時間がなくて、授業の準備や丸つけもできない。大変だなあと。うちは事務の先生がやってくれたり、他の面でもいろんな先生にフォローしてもらえるのでありがたいです。

《Bさん》
いろいろ教えてもらっていて、何もわからないので、夏休みまでに何をしたらいいのか悩んでいても、教頭先生がTo Doリストを作ってくれたりして助けてもらっています。学級の雰囲気をもっと良くしたいということや、子ども同士の関わりをより良くするにはどうしたらいいのかについての悩みがあります。

《Cさん》
児童同士のトラブルがあったとき、どう対応していいか戸惑うことがあった。先輩にすぐ相談できてよかったけれど、一人ですぐに対応しなければならないときなどは、まだ、対応のしかたに不安があります。初期の対応がうまくいかないと修正することがとても難しいと思います。

《Dさん》
授業で、子ども分かっているのかどうかが、つかみ切れていません。テストでは点を取っているが、本当に理解できているのか、子どもが理解できる授業になっているのかがつかめていないことが困っていることです。また、授業中に子どもが受け身になっていると感じることが多く、「やらされ感」と感じることがあります。配慮が必要な児童への関わり方の難しさも感じています。

校舎

3.先生になって、楽しいと思うことは、どんなこと?

《Aさん》
裁量が大きいことです。自分でやりたいことを工夫できること、これが一番楽しいことです。それと、子どもが変わっていくことです。成長というと大袈裟ですが、子どもとふれあっていくうちに、表情が生き生きしてきたり、授業で活躍するようになったりする様子が楽しいことです。

《Bさん》
一番は、授業のときに、今、わかってるな、伝わってるな、と感じたときです。子どもたちがわかるようになるために、こんなのやったらいいかなと考えるのか楽しいです。

《Cさん》
子どもと一緒に遊んだり、活動したりする時間が一番楽しいです。授業で、分からなくて困っていた子が、個別学習などをした後、挙手をして発言するようになったことがあります。子どもの成長が感じられたことがうれしかったことです。本当に子どもに恵まれていると思います。

《Dさん》
子どもたちが慕ってくれることです。「授業がわからない先生からは子どもたちが遠ざかっていく」と聞いたことがあって、私もそうなるのでは、と心配していました。1学期の終わりには子どもとの関係も良くなったと感じています。個人面談で、保護者から「家で先生のことを優しい先生といって喜んでいます。」と言ってもらったことが、とてもうれしく感じました。学活で大縄飛びをしているが、子ども同士で励まし合ったり、喜び合ったりしているのがとても楽しいです。

教室の窓から


4.先生の仕事はブラックだと言われますがー

《Aさん》
授業づくりや学級での活動を楽しめるかどうかだと思います。楽しめないとブラックだと感じるでしょう。私は楽しいと思っています。

《Bさん》
別にブラックだとは思いません。自分次第だと思います。先生の仕事は、やろうと思えば、無限に仕事はあります。先生が準備することもあるけれど、ある程度、子どもに任せていく方が、子どもも伸びるし、こちらにもプラスになることが大きいと思います。

《Cさん》
時間がどんどん過ぎていくという意味では、ブラックなのだと思います。やらなくてはならないことはたくさんありますが、周りの先生に助けられて、ありがたいと思います。ブラックというより、子どもたちに一番いい教育ができるように、どうすればよりよいものを提供できるかを学んでいきたいと思います。

《Dさん》
ブラック、というより、自分が効率よくできていないことが課題です。効率よく、自分ができるようになればいいと思っています。遅くまで残って仕事をすることもありますが、自分は苦痛だと感じたことはありません。


こいのぼり

5.おわりに

教師の離職や就職も近年の大きな課題です。教師にかかわらず、離職の要因の一つに「期待値ギャップ」があげられます。つまり、「思っていたのと違う」というがっかり感が離職の原因となるのです。(「カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方」唐沢俊輔 2020 ディスカヴァー・トゥエンティワン)
ありがたいことに、私の周りの新人先生たちは、周囲にも恵まれ、大きな「期待値ギャップ」は感じていないようです。

教員採用試験の倍率が下がっていることが話題になります。同時に取り沙汰されるのが「質」の問題です。倍率が下がると質の高い人材が確保できないという懸念です。しかし、私の実感は全く逆です。倍率の低い時代に、わざわざ教師になりたいと思ってくれた新人先生は、その分、やる気もポテンシャルも高い。そう思います。

今回、インタビューに協力してもらって、新人先生の前向きな姿勢にたくさんの元気をいただきました。

新人先生、初めての夏休み。
先輩の先生たちは、旅行の計画を立てたり、セミナーに参加したりと有意義に過ごしています。
新人先生たちにも、リラックスして心と体を休めたり、見聞を広めたりしてくれることを願っています。


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