持て余してるパッション/BOφWY Dancing in the pleasure land
あの頃僕らは理由もなく集まって理由もなく笑い理由もなく泣いていた。
親友だった彼の軽自動車にいつもの男5人が乗り合わせ、田舎の闇に繰り出していた。
都会に出たやつは里帰り中、地元にいるやつは定時に仕事が終わり、学生は冬休み間のバイトが終わる夕暮れ時。
そこから自分の時間が始まる。
始めないともったいなかった。
まだ一日を終わらせるにはもったいなかった。
いつもの喫茶店で腹を満たす。
ひとつが満たされると次へ手が伸びる。
喫茶店の公衆電話で呼び出しをかける。
携帯電話もLINEもない時代によく都合よく揃っていたものだ。
行き先は未定。昨日も会ったばかりだ。
少し狭いが、車の中は語らうには十分だった。
なんとなく響きがいいからとできるだけ遠い近場の海へ向かう。
干潟の有明海。昼間はグレイの海。
青春でイメージするそれとは違うけど夜はどの海も黒だからいい。
堤防に寝転がり色気のある話に夢見る話。
何一つ、話の内容は覚えていないけど、笑ったり泣いたり悔んだり和んだりした感情は残っている。
親友だった軽自動車の持ち主とだけはもう15年以上会っていない。
別れの理由は許せないアイロニー
喧嘩別れしたまま。
別れの理由は、理由もなく過ごしたあの時間よりも貴重だったのか。
毎夜のテーマは「Dancing in the Pleasure Land」
ヒムロックが”いくぜ”とMCする。
軽自動車TODAYでかかっていたこの曲はあの日のまま
今日も理由もなく胸を熱くする。
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