グローバリズムと単細胞生物、ナショナリズムと多細胞生物
世界が大きく方向転換している。
グローバリズムの時代から、ナショナリズムの時代へ。
価値観が大きく変わることによって、その言葉自体も印象が変わってきた。
今まではどこまでも国境を超えて拡大していくグローバリズムが良いとされてきた。
世界が一つに繋がり、その結果として平和がやってくる。
EUや国際連合のような、一つに繋がっていこうとする動きや取り組みは素晴らしいこと。
国境に閉ざされることなく、誰もが自由にどこにでも行ける。
世界中にモノを売ることが出来る土壌が整うことは素晴らしいこと。
モノについても格差が無くなり、誰もが素晴らしい恩恵を享受できる世の中。
それがグローバルの結果なされるものとして考えていた。
実際はどうだったのか。
グローバル化は、均質化をもたらす。
その結果、世界がとても脆弱になったように感じる。
それぞれの特徴が徐々になくなってきて、変化を感じにくくなる。
制限のない自由競争が行われることで、格差が異常なまでに広がった。
ギリシャの財政破綻は、EUの中で自国通貨を使えなくなったからこそ。
パンデミックによって、世界中が大混乱になったものグローバル化の影響。
多くのネガティブをもたらして、その最終形態が現在の状態であるように感じる。
気が付いたらポジティブな言葉からネガティブな言葉に変化しつつあるようにも感じる。
一方でナショナリズムが台頭してきたのも、行き過ぎたグローバル化があったからこそ。
トランプ大統領のように、自国ファーストを全面でアピールした大統領が登場して大きく世界が変わってきた。
以前と比べると、国のリーダーがより目立ってはっきりとしてきたように感じる。
イギリスのEU離脱についても、象徴的な出来事。
そして小さな国から大きな国まで、それぞれが自国の利益をしっかりと守らなければという方向に舵を切った。
その結果として、しっかりと個性を残した形で国という単位が復活しようとしている。
国同士の格差はまだまだあるかもしれないが、それぞれに合った仕組みや生存戦略を描きやすい。
そして国としての独自性・特徴があることがとても素晴らしいこととして称えられている面が目立ってきたようにも感じる。
もちろんナショナリズムの全てが良い面だけとも限らない。
利害関係がある内容については争いが発生することもある。
民族が異なることによって、大きな衝突が起きやすくなることもある。
国の間に障壁が設けられることで、すべての最先端の利便性が享受されるということもなくなる。
そして各地域が独立を志向し、バラバラになって行く可能性もある。
全体の利益を考えず、自分の国だけが優位になるように物事を進めていくようにふるまうようになるかもしれない。
行き過ぎたナショナリズムが向かうところは、いたるところでの衝突であり、絶えない戦争時代に戻るということになるのかもしれない。
グローバリズムとナショナリズム。
バイオをやってきた人間としては、それは単細胞生物と多細胞生物に似ているようにも感じる。
単細胞生物は仕組みがシンプルで、どこまでも際限なく分裂して拡大していく。
均質化が究極になされており、同じような環境であれば、どこまでも加速的に増えていく。
同じ仕組みであることから代替も効きやすく、仮に一部がだめになってしまっても、それ以上に増えているから問題はないように見える。
ただ、変化には弱く、何か問題が起きたときに対応がしにくいために、とても脆弱な状態。
一度何かの歯車が外れてしまうと、一気に全体がやられてしまう。
変化することやフレキシブルに対応することが難しいのも特徴的。
一方で多細胞生物はれぞれが独特な個性・多様性を持った細胞で構成されていることで、複雑な機能を持っている。
そのため、様々な環境においてもフレキシブルに対応できる可能性が高く、生存そのものについてはとても有利な状態。
生殖機能も複雑に遺伝子が絡むことで、次世代はより多様性のある時代に適したものが生まれてくる。
ただ機能含めて複雑であるがゆえに成長が遅く、生殖の速度含めて増える速度は遅い。
また一度特徴的な機能を失ってしまうと、再生することが難しいということもある。
単細胞生物、多細胞生物、どちらも有利な点と不利な点があり、それぞれの長所と短所をうまく扱いながらそれぞれの環境で生き抜いているように感じる。
グローバリズムという単細胞生物化、ナショナリズムという多細胞生物化。
どちらが求められるのかということについても、時代が成長するためにいずれも必要であることは間違いない。
いずれも行き過ぎたことによって、逆側に戻るように働いている。
そしてどちらが優位なのかということが変化するごとに、時代は先へ進んでいく。
現在の世の中はナショナリズムが優位になり始めている時代。
メリットやデメリットはそれぞれあるかもしれないが、前に向けて進んでいるのは間違いない。
より複雑に進化するためには、なくてはならない過程であると考えてもいいかもしれない。
行き過ぎたナショナリズムが飽和に達したとき、いずれグローバル化の方向に戻るようになるのだろうか。
ありがとうございました。
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