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インターネットにいる「ほんとうの地獄」を紹介していく(4)-ネット芸人は牧畜業。

古典を読んだり、昔の人の言動を調べたりしていると、「おいこいつマジかよ」と思うことがしばしばある。

哲学書を読んで、恋人と別れた。」の回でも書いたのだが、哲学者エーリッヒ・フロムの本には「同性愛者は真実の愛は持てない。愛の失敗作だ」みたいな問題発言がポンポン出てくる。現代なら炎上必至である。


だけど、エーリッヒ・フロムは炎上していない。理由は単純、当時はSNSがなかったからだ。読み手がムカついたとしても、それを拡散する方法が存在しない。いくらムカついたからって「あいつがこんなこと言ってた💢」という内容のビラを何百枚も書いて配るような根性の入ったアンチはまずいないだろう。フロムは原理的に炎上しようがない時代に生きていた。

フロムに限ったことではない。数十年以上前の人の発言はたいてい炎上対策がとんでもなくガバガバで、「現代だったらもうアカウント消して逃亡しちゃうだろうな」と思うような発言が多い。例えばこれ。

精神医療は牧畜業だ
(元日本医師会会長 武見太郎)


ひょえ~!!燃える燃える!!

【くたばれ】アンチ武見太郎スレ★Part128【牛糞以下の人間】」みたいなのができるって!!

精神病の患者は家畜ってこと!?ふざけんな!!!」っていう引用RTが1秒あたり10件来るよ!!!「こんなひとが日本医師会の会長なんてありえない!!日本医療はもう終わり!病院に行くのやめよう!」みたいなこと言い出すヤツが無限に発生するよ!!それを真に受けた頭の弱い母親が「子どもを病院に連れて行かずに肺炎を放置して超重症に」みたいな珍ニュースが流れるよ!!


さて、現代だったら炎上必至な武見太郎の発言なのだが、彼はもちろん「精神病の患者は家畜」という過激なメッセージを言いたかったワケではなく、「現在の精神医療現場の環境はあまりにもひどすぎる。まるで牧畜業のように劣悪な環境に患者を詰め込んでいる。改善が必要だ」ということが言いたかったのである。

それを簡潔に表した一言が「精神医療は牧畜業だ」だったワケで、当時は何も問題にならなかった。それどころか「武見太郎の辛辣な批判を真摯に受け入れなければならぬ」と医療関係者は襟を正したらしい。Twitterがなくて本当によかったね

何しろ、現代は女子高生が中古車を買っただけで炎上する時代である。現代ならば武見太郎の発言は確実に文脈を汲み取ってもらえず、またたく間に100万RTされる大炎上になっただろう。


彼の相手をすることは、牧畜業だった。

さて、そろそろ本題に入ろう。

なぜ武見太郎氏の発言を掘り下げているのかというと、僕は「ひょっとすると今、牧畜業をやっているのかもしれない」と思ったことがあるからだ。

とある、僕の大ファンだった青年がいた。「大ファンだった」とあえて表現するのは、最近はもう全く連絡も来なくなったし、さっきTwitterを確認したらもうフォローもされていなかったからだ。きっともう僕は彼の興味の対象ではないのだろう。

だけど、かつてはすごかった。1年半くらいの間、僕が何かを告知する度に「参加させてください!!」と連絡してきた。僕のやることには何でも参加したかったのだろう、イベントだろうがWebサービスだろうがお構いなしで参加の意志を表明してくる。彼は仕事もしていなかったから無限の時間を使うことができた。無限の時間を使って僕のやること全てに関わろうとしていた

たまに、「お兄ちゃんのやることを全部マネしたがるかわいらしい小学生」を見かけるけど、彼もそういう類のかわいらしい人間だったのかもしれない。成人男性だったけど。


僕は正直、彼に対して引いていた。

「堀元さんのやること全てに関わりたいです!」という熱烈なファンでいてくれるのはとても嬉しいことだ。普通ならば歓迎こそすれ、引くようなことではない。

だけど、彼のことは全然ありがたくなかったというか、「もう来ないでくれないかな……」と思うことの方が多かった。

彼はファンというよりもむしろ「家畜」のように思われた。彼の相手をすることは牧畜業だった。人間のファンが来てくれる分には嬉しいのだけれど、家畜の相手をするのは結構ストレスだ。

家畜」をこの有料マガジン風の言葉に直すなら、彼は完全な「地獄」であった。インターネットと現実世界で、頭悪くのたうち回る地獄だ。


ということで、今日は、そんな彼のことについて書く。バッチリ実名やSNSアカウントが出して面白おかしくイジっていこうと思う。

そう、このマガジン最大の人気シリーズ「ほんとうの地獄」紹介である。今までの記事はこちら。

インターネットにいる「ほんとうの地獄」を紹介していく(1)

インターネットにいる「ほんとうの地獄」を紹介していく(2)

インターネットにいる「ほんとうの地獄」を紹介していく(3)


彼の正体について気になる皆さんは、ぜひ課金して読んでみて欲しい。単品購入(300円)もできるが、定期購読(500円/月)がオススメだ。いつ購読を始めてもその月書かれた記事は全部読めるよ。3月は5本更新。


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