日本の伝統音楽とつながる新しい音楽の作曲方法を求めて~民謡三味線を解析してたらコードみたいなものを発見したかもしれない
はじめに
こんにちは、kengoshimizです。
最近はapple musicにて視聴できる日本民謡大観の民謡を主に解析しています。
さらに1ヶ月半ほど前、日本伝統音楽の研究をされている宮内基弥さんから三味線のご指導をしていただき、ちょこちょこ三味線を弾いていたりします。
三味線伴奏付きの民謡を解析してたら同じような音の重ね方の曲がいっぱい出てきた
最近は主に三味線の伴奏がついた民謡を解析しているんですが、どうも解析すればするほど似たような「音の重ね方」が出てきました。
これ以上の説明だと音階論が必要になるのですが、とりあえず後で出しますので、先にどんな動きかを載せます。
めっちゃ端折ってますが、こんな感じの音の進行が最近多く観察されます。
これが一体どんなことかというと、
レ、ファ、ソ、ラ、ドの5音音階で作られている曲でこの音の重なりは見ることが多いのですが、民謡の解析で参考にしている、宮内さんの音階論では、この音階はレが主音としての働きがあって、ドが導音としての働きがあるようです。
簡単に言えばドからレに行きたがる性質があるということです。
そして、三味線の伴奏では現在解析した楽曲では全て、ドの音に低いレ、つまり短7度が重なり、レの音には低いソ、つまり5度で重なって解決するのが観察できました。
ちなみにこの主音で終わるのは宮音終止とかと呼ぶようです。
でもこの動きって西洋の音楽でもありそうだよね?
私もそう思ってました。でもよく考えるとそれが出来ないんです。
例えば、レに重なるソをベースとして考えると、そこにはシか、シのフラットが入りそうです。しかし、この5音音階にはそのどちらの音もありません。
この5音音階に対して無理やりどちらかの音を入れると、メロディーもその音階を使わないといけないので、別の5音音階になってしまいます。(民謡、箏曲、長唄ではそのようになっている音の動きが見れます)
次にドに重なるレをベースに考えると、レ、ファ、ラ、ドと重ねられそうな気がしますが、実はここにも落とし穴があります。
徴音終止なのか導音なのかわからなくなってしまう
なんと日本の音楽には宮音終止と徴音終止と二つ終止があります。(他にもあるかもですが、ちょっと見つかってません、多分どっちかしかないと思ってはいる)
徴音終止の曲の一例を見てみましょう。
徴音終止の伴奏に関してはまだサンプルが少ないのでなんとも言えないのですが、これは縁故節という山梨の民謡の伴奏から見つかったものです。
この曲の音階自体は先ほどとはちょっと違う5音音階で、半音階がある陰旋と呼ばれるものです。
この音階はレ、ミ♭、ソ、ラ、シ♭の5音なので、聞こえ方はだいぶ違うのですが、実は先ほどのレ、ファ、ソ、ラ、ドの5音音階と一緒に使われることが多いのです。
具体的な方法は一旦省きますが、あるルールを守れば5音音階として成立させつつ、別の音階を使えるルールみたいなものが観察できています。
四つめの音、この音階ではラの音は「徴」と呼ばれます。
詳しく知りたい方は「宮商角徴羽」でググると出てくると思います。
話を音の重なりに戻しますが、ラの音にレが重なるのが観察できました。
さらにソの音がまるで導音のような働きをするのに対して、ラの音が重なっています。
実際の曲ではラとソは2度の関係でしたが、機能自体は変わりがないので一旦短7度で置いています。
ちょっと話逸れるけど主音の終止と徴音の終止の仕方、
めちゃくちゃ似てるんですよね〜〜
このように徴音で終わるときラにレが重なるので、
先ほどのレ、ファ、ラ、ドという重ね方をすると徴音終止なのか、導音に対して重なった音なのかわからなくなってしまいます。
ファの音はどうなん?
ではファはどうなのでしょうか。
一旦こちらの譜面を見てください。
ちょっと陰旋は省いていますが、
今の所なんの音が重なっているかをまとめた楽譜です。
さて、私はこの音階の曲でファに重なる音を見ていません。
正確にいうと、バグパイプのドローン的な単音ベースの上にメロディで弾くのはあった気がしますが、このように進行が存在するような重なりは見てません。
そこで、なぜファだけないのか考えたところ、大塚拝子さんの音階論に書いてある事が思い浮かびました。
ちょっとあんまりにも端折りすぎてるので申し訳ないんですが、
まず大塚拝子さんは長唄と義太夫から、こんな音階を導き出しました。
大塚拝子さんの音階論では、レが主音の音階ではファが存在しないことになっています。なぜかというと、ファが出た瞬間に「転調することになる」ようです。ここで関係してくる転調先の音階はこんな感じです。
ファが出てくると、ファが導音の機能を果たすので、ソが主音になるということのようです。この他にもなんか転調がありましたが省きます。
この音階の時、今までの考え方で行けば主音のソにはド、ファにはソがきます。徴音はレなのでソ、ドにはレがきます。
さらに転調するとこの説明が終わりそうなので転調します。この音階には存在しないシ♭が導音になり、ドが主音の音階に行きます。
ドが主音の場合、重なるのはファになります。
ここでストップです。この調で主音での解決としてドとファの重なりが使われています。
そのため、「現在」ではレ、ファ、ラ、ドと重ねてしまうと、いくつか問題が生じてしまうと私は考えているのです。
3つ以上の音を重ねることについてはまた別のタイミングで考えられそうです。
終わりに
なんか締まった感じは全くないですが、とりあえずまとめると
「なんか日本の音楽にもコード進行っぽい何かがあるかも」
という事を皆さんにお伝えしたいという感じです。
現時点で自分は「重音進行」と呼んでいます。
ちなみにこれは超基礎的な部分の仮説の一部なので、まだ研究段階ですが、
いずれはこれであれ、こうでなくても、なんらかたくさんの人が西洋から始まったシステムだけでなく、日本の音楽のシステムにも注目していただけると嬉しいですね。
なにか質問などあればお気軽にtwitter、instagramに連絡をください〜!
それではまた。
参考
近世邦楽と民謡の音楽構造の比較研究 ―音階および音組織の観点から―
宮内基弥(私の師匠)
三味線音楽の音高理論
大塚拝子
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