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【Google元執行役員ラスズロ・ボック】OKRと報酬を分離せよ。

※この記事は、以下の記事の翻訳記事となります。

なぜボーナスは個別目標と分けられるべきなのか

2011年、グーグルはGoogle+を立ち上げた。急成長するフェイスブックのユーザー数をターゲットに据えた、極めて意欲的なソーシャルネットワーキングプラットフォームの誕生である。

最盛期においては千人を超えるエンジニアたちがこのプロジェクトに従事していたが、Google+のマーケットシェア獲得における失敗は広く知れ渡っているように、グーグルは早々に手を引いた。

これは他の企業であれば多額の損失を生み出した大失敗と見なされがちだが、適切な評価・報酬という観点で言えばグーグル内では成功だとされた。

その理由を理解するには、達成目標と主要な成果について、OKRのシステムを理解する必要がある。

グーグルは戦略とパワーパフォーマンスを導くためにOKRの手法を用いている。 Google+に従事する者は、実際にユーザー数の達成といった目標と指標を持っていた。結果的にそれらを大幅に下回ったとしても、賞与査定でマイナスの影響は受けていない。

同時に、グーグルの賞与は主に利益レベルに関連付けられた指数を使用して計算されるため、「利益に関係のない者の士気を低下させるとして、100%未満の指数を与えるわけにはいかないのです。」と、ラスズロ・ボック(2006-2016 グーグル社執行役員)は話す。

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理解しがたいようにも思えるマネジメントの精神

ボックが強調するのは、グーグルにおける評価の見解である。それは、

「達成目標と主要な成果というものは、報酬から完全に切り離して考えるべき」

だというものである。

すんなりとは理解しがたい理念かもしれない。そもそも、それが目標を立てる最大の理由なのではないだろうか?成果を出すために努力をしたならば、それに応じた報酬を受けられるべきではないか?なぜ査定と目標や成果を切り離す必要があるのだろうか?数値目標や個人目標を設定した時点で、その理想はすでに崩壊しているのではないか?

実は現在のグーグルの姿勢は、会社の立ち上げ当初の苦い経験によって培われたものなのだ。

「ある年、グーグルはOKRをある製品に従事する従業員の賞与査定に直接紐付けたことがあります。すると、高い賞与を得る目的で目標を設定するようになったのです。主要な成果と金銭的な報酬を紐づけることは、製品の成功においても、従業員に更なるチャレンジを促す面においても、弊害となることがわかったのです」

と、ボックは話す。

インセンティブの歪みを回避する

なぜ個人目標と賞与が紐付けられるべきでないかを理解するために、より幅広い文脈で考えたい。

たとえば、販売ノルマがよい例だろう。仮にあなたがあるウィジェットの営業マンで年間売上目標が百万ドルだとする。ノルマを達成して一万ドルのボーナスを受けるために、最初は大変な努力を積むだろう。もしも他の100人の営業マンも同じように努力すれば、会社は売上目標を達成し、繁栄するだろう。

そのように全てが丸く収まるのならば問題はないのだとボックは話す。ここで忘れてはならないのが、このような方針がもたらす副作用である

「確かに売上ノルマに応じて営業セクションに報酬を与えることは可能です。OKRの一部に売上の視点を含めたいとも思うでしょう。ここで忘れてはならないのは、売上増のインセンティブとなるような計画には、常に逆効果をもたらすリスクがあるということです。そしてこれは、OKRに紐づいていても、紐づいていなくても同じことなのです。」

多種多様な理由によって、予期せぬ状況は発生するだろう。仮に目標が売上高達成のみであったとしたら、人々は利益を犠牲にしてでも取引高を上げようとするだろう。

ソフトウェアの世界では、営業担当者たちは一見して売上の高い案件を優先的に契約することも可能なのだ。しかしそれでは長期的に損失を生んだり、ともすればチームは小売りの代わりに、予算が多いという理由だけで金融サービスに注力したりする可能性があるものだ。

真の目標は何かを明確にする

ここにOKRがテコ入れすべき点がある。目標が単純な収益のみであることは少なく、その他の主要な成果によって補正されることで、個人や組織の達成目標が補完され、明確化される。

例えば、座席1つあたりの平均単価を主要な成果と据える代わりに、売り上げた座席の総数とすることもできる。また、一定の売上を達成することを全体でとらえるのではなく、5つの異なる産業における売上高の達成という幅を持たせることも可能である。

目標や成果が何に基づくものであっても、人々が思う存分能力を発揮できるよう、それらは達成できそうな水準よりも高く設定され、意欲的なものであるべきである。グーグルでは目標の達成率は、例年60%から70%ほどが通常である。

目的から目標を定める

個人と組織におけるOKRは、パフォーマンス指標と上位目標を双方鑑みたものであるべきであって、それが企業文化を象ることとなる。

グーグルでは営業担当者のOKRは、一つは営業ノルマだが、同時に異なる種類の目標も設定されているとボックは説明する。

より幅広いOKRには、組織の成員としての姿勢が現れるものである。例えば世界で通用する能力持つ人材を集めて、チームを組むとする。その際に設定する成果として、5つ以上の取材を行うことや、前年度に比べて最低2%以上チームのダイバーシティを向上することなどが挙げられる。その他の成果としては、利益に関連しない業務や、指導者・リーダーとしての働き等も挙げることができる。

ボック曰く

「それが営業ノルマ未達の営業担当者であっても、賞与を得る可能性が残されている理由なのです。なぜなら営業目標の達成以外にも、常に注視されなければならない事柄は存在するからです。」

全ては相互作用の中にあり

ここで適切なOKRの混在が効果を発揮する。組織成員としての姿勢を4つや5つある達成目標の中に組み込むことにより、各雇用者の間で組織作りのための適切なコミュニケーションが生まれる。

更に、一般的にOKRはそれぞれ経済的なもの、文化的なもの、そして一種の生産性に基づくものを一つずつ設定するのが良いとされている。個人的なものを含んでも良いだろう。しかし根底にある思想は、各人が風土を気づかい、それがベースになっていることである。

ボックが「OKRのマジック」と呼ぶものの中核には、精密さがある。

S.M.A.R.T(Specific, Measurable, Attainable, Realistic/Relevant and Time-Bound)のようなその他の目標設定の手法では、目標自体が漠然としすぎたり、逆に細かく設定されすぎたりしやすい。これは、設定された数字を達成できないことで賞与が満額支給されなかった場合に、人々のやる気が削がれるためである。

グーグルの立ち上げ当初からの成長は、この点をよく象徴している。

仮にグーグルが検索数の増加をOKRに設定したとする。この目標を達成しようと思えば、ユーザーが開いたページ上に望ましくない検索結果が出るような仕組みを作ることも可能である。求めている結果が出ないため、ユーザーはひたすら次ページへクリックし続けるだろう。「だが、それは好ましくない動機づけなのです。だから私達であれば、人々がページあたりに費やした時間を最小化することを主要な成果として設定するでしょう。」

最終的にこれらは「質」と「量」を適切に備えた明確な指標へと進化する。ここで仮に誰かが、いくつも目標を設定するのは複雑すぎる。質か量のどちらかを選ぶとしたら、どちらへ注力すればよいか、と聞いたとしよう。ボックはその答えを知っている。「私たちは本当に聡明で才能に溢れる人々を雇ったのです。両方ともにしよう。」と。

内的な動機づけは、物質的報酬に勝る

ナポレオンの言葉にこのようなものがある。

“a soldier will fight long and hard for a bit of colored ribbon.”
(兵士は少しの色付きリボンのために長く激しく戦うものだ。)

この言葉で得られる視点は、人々がお金や栄光のためだけでなく、それよりも内側から彼らを突き動かすものによって動いているということである。ダニエル・ピンクは『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか』という著書の中で人々は自律性、成長性、目的性といったものによって動機づけられることを示している。

例えば、オスカー6部門にノミネートされた映画『ライオン~25年目のただいま~』の中では、主人公が25年前に生き別れになった生みの親を探すため、グーグルマップを使用して道を辿っている。この話はグーグルで働く従業員にとって、彼らがグーグルで働く理由を強める素晴らしいヒューマンストーリーだとされている。

ここにはっきりと、ビジネスと動機づけにおける違いを見ることができる。

グーグルはビジネスとして広告を通して収益を上げている。しかしグーグルで働く者の意識は、人々の知見をオープンにし、人と人を繋げているのである。だからこそ映画のストーリーはグーグルで働く者にとってやる気を与えたのだ。

賞与を前に知恵は衰退する

その他にも、ボックはとある調査について触れた。その調査結果によると、大多数のケースで成果に応じた賞与を与えることは、長期的に従業員のモチベーションを保つ上で効果のないことが示されている。

「インセンティブや賞与を与えることは、短期的には生産性の向上に寄与しますが、その賞与が下がったときに、人々はやる気を完全に失うのです。」

パズルを解決するという課題に金銭的報酬を与えた場合の人々の反応をテストするという一連の実証実験もある。金銭的報酬があるグループでは、当初はやる気に満ちていても、すぐにそのやる気は失われ、報酬のないグループよりも低い成果を出したのだ。これによって、賞与が時として逆にモチベーションを削ぐことが分かる。

「パフォーマンスを金銭に結びつけると、人々は報酬を計算するようになるのです。年に10万ドル足すボーナスが1万ドル、1万ドル相当なら本来よりも長く働いても良いかな、というように。でも、本来はそういった計算抜きで働いてほしいものですよね」

とボックは言う。

従来の知見では、非常に高い評価を受けている従業員にこそ賞与を与えるものだ。しかしグーグルでは、エリートだけでなく、会社の業績に関連する賞与を全員が受ける資格を有する。ただし、人々は賞与よりも給与をより重視することも証明されている。「賞与は彼らの頭の中で価値が8割掛けされるのです。」とボックは話す。

物語を持つ

結局、最後に人々を目的と繋げるのは物語なのだ。例えば、ヒーローと悪役の物語のように、人類に与える影響を描き出すのだ。その物語は、人の生活を助けるものや、他をインスパイアするもの等があるだろう。

そしてこのような物語は、適切な優先順位を設定するOKRを用いたリーダーシップや管理の元に広められることが必要である。イェール大学の教授であるエイミー・ルゼスニーウースキーは、全体のわずか三分の一ほどしか仕事に意義を見出していないことを示した。しかし人々が仕事と意義を繋げられた際には、生産性は平均で21%向上した。仕事に対する満足度も高まり、生活自体の満足度も高まった。

ラスズロ・ボックの表現を借りれば、「万事上手く動かすことができる」ということだ。

(Publisher:Evan I. Schwartz)

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