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スタートアップがOKRを使うべき理由とは。

変化の激しい市場環境の中で、少ないリソースを的確に投下し、迅速に対応しなければいけないスタートアップ。

そのような混沌とした状況を突破するためにOKRが有効な理由が綴られています。

本記事は、以下の記事の翻訳となります。

創業者によるメリットと課題の説明

1999年秋のある日。Googleの12%に値する1,180万ドルを投資したばかりの、ベンチャーキャピタリストのジョン・ドーアは急ぎ足で当時のスタートアップ企業に到着したところです。その後の90分間は、ドーアがシンプルでありながら強力な管理ツールを用いたGoogleをアピールする番となりました:OKR(目標と主要な結果)についてです。

ドーアの著書「Measure What Matters(メジャー・ホワット・マターズ) 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR」によると、このプレゼンテーションの後、Googleの共同設立者であるセルゲイ・ブリンは次のように答えたそうです。「これが正解かはわかりませんが、同様に成功になる可能性を秘めたものでしょう」と。

20年の歳月と更なる数十億の投資の後に、この働きは利益をもたらすこととなります。そして、GoogleがOKRを採用したという話は、小さく始めたスタートアップ企業の間でも、シリコンバレーの内と同じように話題となりました。それ以来、世界中のスタートアップ企業はGoogleのようなパフォーマンスを達成することを期待してOKRに注目し、さまざまなレベルの成功を収めています。

当然、スタートアップ企業はOKRを採用する際に、より確立された組織が直面するよりも多くの課題を抱えています。一部のスタートアップ企業は、企業の使命、価値、さらには製品やサービスを定義する過程にまだいる可能性もあるでしょう。そしてスタートアップ企業が金銭的な生き残り競争にまで至っていない場合には、限られたリソースの中で未だに概念を確立・立証する段階にいることでしょう。これらの企業にとって目標を設定することは難しく、いかに大胆な起業家であっても、OKRを採用するために時間を投資することは後回しになりがちです。

「確かにOKRの導入はできても、緊急事態にあるときは非常に困難でしょう」と、ヌナ(Nuna)の創設者であるジム・キムは、2018年のドーアとフム(Humu)の創設者であるラスズロ・ボックとのパネルディスカッションの中で述べています。

他の創業者は、多くの初期段階のスタートアップ企業に特徴的な混沌とした状態を突破するためにOKRが重要であると考えています。

「スタートアップの創業者である場合、「あなたのスタートアップは筋が通っているのか?」という質問に常に答えなければなりません」とスウェット・イクイティ・パートナーズのパートナーであるジョージ・バブがWhatMatters.comとの電話で話しました。バブ氏は、ロボットが貴重な現実世界の問題を解決できるようにすることを目的としたAI拡張ロボットメーカーのキンドレッドや、後にセールスフォースに買収されたパフォーマンス管理アプリのRypple社などのスタートアップを共同設立しています。

バブ氏は、「大量のデータがない場合、OKRは、なにを「良い」とするのかや、生み出す価値について話すひとつの手段となります。」と語ります。

規模や資金に関係なく、成功するためにスタートアップ企業は機敏で、適応性を持ち、リソースを集中する必要があります。迅速に行動に移し、正確に実行する必要があるのです。

OKRは、柔軟性を考慮しながら、スタートアップが重要なことに集中できるよう支援するものです。

暗闇から抜け出す手段は「優先順位の構造化」にあり。

キムは、ドーアとボックとのパネルディスカッションで、OKRにおける初期の課題を振り返りました。ヌナを設立してから3年後、彼女はメディケアとメディケイドサービスセンターとの巨大な契約を結び、史上初のデータウェアハウスを構築しています。当時、未来は明るく見えていたことでしょう。しかし、物事が計画通りに進むことはめったにないのです。

「OKRをすべて作り込むこともできますが、問題となるのは、緊急時にはすべてが無意味になることです」とキムは言います。「存続のための闘いのなかで、最善の計画というものは存在しません。」

彼らがコミットしていたプロジェクトは非常に大規模であったため、チームを15人から75人の従業員に迅速に拡大する必要がありました。多くの要素はヌナがコントロールできる範囲外にあり、彼女のチームは度々方向性を変えたため、OKRへのコミットは困難を極めました。彼女はこの期間を「暗黒期のさまよい」と呼びます。

ボックは同じパネルディスカッションで、OKRはスタートアップ企業を暗黒段階から脱出させる光になる可能性があると主張しました。なぜなら、OKRは組織が激動の時代に継続的に対応できる「優先順位の構造化と明確化」を提供するものだからです。

「私たちは、OKRをすべての人に実際に起こっていることの見える化と透明性を提供するメカニズムだと捉えています。」とボックは言います。「そして、優先順位の高いものは何であるか?ということです。」

バブは、企業にとって不可欠なものとそうでないものを正確に特定することの重要性に同意しましたが、プロセスに関しては「過度に複雑にする必要はない」と述べ、「OKRはスクラムやアジャイルに比べて導入への障壁は低いでしょう。 例えば1時間以内に、私たちがやりたい3つのことを明らかにできるものでしょうか?そして、それができているかはどう判断できるものでしょうか?」と続けました。

スタートアップ企業が2人で構成されていようと100人で構成されていようと、OKRは会社の最優先事項が誰にとっても明確であることを担保するものです。ボックは、この明快さが生産性の向上に役立つと述べます。

しかし、目標が達成されていない場合でもOKRは進捗状況を捕捉し、定期的にレビューされるものです。これによって、より多くの情報に基づいた意思決定を行うための貴重なフィードバックを提供できるのです。

これらは会社がどこに向かっているのかだけでなく、何から撤退できるのかといった重要な議論を始めるきっかけとなります。

OKRを適切に実行すると、スタートアップ企業はイノベーションと生産性のバランスをとることができるのです。

的確なイノベーションを巻き起こす

オールバーズの創設者であるティム・ブラウンとジョーイ・ズウィリンガーが2016年に、環境に優しい靴の会社を設立したとき、(https://www.whatmatters.com/stories/okrs-for-r-and-d-research-development)彼らの目標はカーボンニュートラルにすることでした。持続可能性を任意目標とするのではなく、最初から重要な結果のひとつに、サプライチェーン、製造、出荷、小売業務から発生する排出量を捕捉することを掲げました。

「二酸化炭素換算排出量のグラムまで正確に把握できれば、その後にしっかりとオフセット活動ができます。これによって、顧客は私たちから何かを買えば、いつでもカーボンニュートラルであることを約束されるのです。つまり、地球上に対して100%カーボンニュートラルな企業ということです。」とズウィリンガー氏は述べます。

この出発点から、彼らは二酸化炭素排出量と、中立を維持するために必要なカーボンオフセット購入の両方を削減することに取り組んできました。この細部にわたる細心の注意は、製品の材料調達にも及んでいます。大量生産に対応でき、実用的でありながらも、経済的に安定し、持続可能な材料の調達に細心の注意を払っているのです。ステージゲート法とOKRの使用により、2年ごとに材料科学で少なくともひとつの新しい発見をすることができています。それらの発見には、メリノウールからの靴の製造と、ブラジルのサトウキビからのビーチサンダルの製造が挙げられます。

リソースを集中させながらも革新的であり続けることにより、オールバーズは100万足の靴を販売し、3年で10億ドルの評価に達することができました。

OKRをうまく利用しているスタートアップ企業のもうひとつの例は、電子メールプラットフォーム企業のスーパーヒューマンです。

製品市場の適合性を見つけるために、OKRを設定して、「製品を使用できなくなったらどう思いますか?」に対する顧客の回答で「とても残念」が40%になるようOKRを設定しています。調査データを分析した結果、企業の方向性を変更し、それまではライトユーザーメインだったものを、スピードを重視して日に何百も来るメールへ対応するユーザーメインに舵を切ったものです。この方向性の変換により、追加で3,300万ドルの投資と高い評価を得られたのです。

スーパーヒューマンやオールバーズは、OKRを使用して、目標と成功を判断するための指標について熟考したスタートアップ企業の優れた例だと言えます。

少ない労力でより多くのことを

よく見られる統計は、スタートアップ企業の90%が失敗するというものです。ケンブリッジ・アソシエイツが実施した27,000以上のベンチャーが支援するスタートアップ企業の調査によると、60%近くとなります。その控えめな数字でさえも、スタートアップ企業の半分以上が失敗することを示しているのです。わずかな勝算でも成功するためには、単なる運以上のものが必要となります。

ドーアがよく用いる起業家の定義とは「皆が考え付くよりも多くの事を成し…ただし、皆が考え付くよりも少しの労力で」というものです。

不可能を可能とするために、スタートアップ企業はリソースを集中し、連携し、コミットするチームを育てなければなりません。リソースは効率的に展開される必要があるのです。そして、賢い時間の使い方が必要となります。

OKRはスタートアップ企業の課題をすべて解決するわけではありませんが、「不可能」を測定可能なものに変え、手に届くところに持ってくることができるものです。

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