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今年は小泉八雲ブームか?(その2)

以下の「今年は小泉八雲ブームか?」の続きである。
https://note.com/kengoken21go/n/n28f89c4c5737
シェイクスピアと小泉八雲、或いは作品『KWAIDAN(怪談)』との関係がどこまであるのか、まだ、把握できてはいないが、少なくとも一つはある。まずは、『KWAIDAN』の構成を提示する。
TABLE OF CONTENTS
 THE STORY OF MIMI-NASHI-HOICHI (耳なし芳一の話)
 OSHIDORI (おしどり)
 THE STORY OF O-TEI (お貞の話)
 UBAZAKURA (乳母桜)
 DIPLOMACY (かけひき)
 OF A MIRROR AND A BELL (鏡と鐘)
 JIKININKI (食人鬼)
 MUJINA (むじな)
 ROKURO-KUBI (ろくろ首)
 A DEAD SECRET (葬られた秘密)
 YUKI-ONNA (雪女)
 THE STORY OF AOYAGI (青柳の物語)
 JIU-ROKU-ZAKURA (十六桜)
 RIKI-BAKA (力ばか)
 HI-MAWARI (ひまわり)
 HORAI(蓬莱)
INSECT STUDIES
 BUTTERFLIES

小泉八雲は当然ながら欧米人向けに書いたので、日本に伝わる昔話だけを書いている訳ではない。この内、HI-MAWARIはウェールズのこと、自分の回想めいたことが書かれている。従った、英国人には馴染みがあっても日本人にはピント来ないことが書かれている(日本語訳に注釈が付いているので意味は分かるとしても文化のバックグラウンドが要る)。

話の内容はさておき、この話の最後にシェイクスピア『テンペスト』の台詞が出てくる。
  But all that existed of the real Robert must long ago have suffered a sea-
  change into something rich and strange...

       南条竹則氏日本語訳:
       だが、本当のロバートのうちにあったものは全てとうの昔に海の変化を
  うけ、何か豊かで不思議なものに変わってしまった
にちがいない。……
【テンペスト】
  Nothing of him that doth fade,
  But doth suffer a sea-change into something rich and strange...
       松岡和子氏訳:
       その身(お父様の身)はどこも消え果てず、海の力に変えられて、今は
  貴い宝物

Robertは私(小泉八雲のことか)が幼い時の友達で、先に(恐らくは海で)死んでしまったと思わせる人物。それを今の私がひまわりを見た時に回想すする(幼い時の記憶が蘇る)ことを書いたものである。自伝的だと思う。

シェイクスピアの戯曲の台詞は小説などでよく使われるということは、英米の人々・・少なくともUpper、Middleクラス・・の間ではシェイクスピアの戯曲が教養として身についていて、説明無しでもピント来るからとよく言われる。本当にそうかの確信はないけれど、日本の文学作品(中国の書=漢藉は除く)に誰もが知るそういう名句があるか、残念乍ら思い付かない。
<補足1>
上記のHi-Mawariの叙述に続けて、以下のヨハネ伝第十五章第十三節を八雲は書いている。
  Greater love hath no man than this, that a man lay down his life for his
  friend…
  南条竹則氏日本語訳:
  「人その友のために己の生命を棄つる、之より大なる愛はなし」
前回書いたようキリスト教(カソリック)に懐疑的でPatricというファーストネームを使わなかった八雲であるが、聖書のことは多分頭から離れなかったのだろう。
<補足2>
日本文学の中でも部分的に有名な叙述はあると思う。例えば、『枕草子』、『平家物語』、芥川龍之介や夏目漱石の作品など

さて、シェイクスピアと関係ないが、HI-MAWARIに日本にも馴染みある・・とはいえ50歳以上の人か?・・曲が出てくる。
怪しい?ハーブ弾きの男(ジプシー?)が歌うもの。
  Believe me, if all those endearing young charms, Which I gaze on so   fondly to-day...
  南条竹則氏日本語訳:
  信じたまえ、私が今日いとも恋しく見つめる 愛らしい若い魅惑が、
  すべて…

これは、アイルランドの詩人、トマス・ムーア(Thomas Moore)による(妻への)愛の詩である。これがそれ以前からあった"My lodging is on the cold ground" の旋律に載せて歌われた。日本でアイルランド民謡として堀内敬三が詩をつけた♪春の日と花と輝く♪として知られている。
♪春の日と花と輝く♪
https://www.youtube.com/watch?v=aLQ6m6L6POw
♪Believe me, if all those endearing young charms♪
https://www.youtube.com/watch?v=Nxg_-izopkA
高校時の音楽の教科書にこの歌が載っており、授業で歌わされのでよく覚えている。
尚、トマス・ムーアの詩で邦訳された有名なものは「庭の千草(The Last Rose of Summer)」もある。

最後に『怪談』の中で特に好きなものは以下の4つ。
 ・耳なし芳一
 ・雪女
 ・ろくろ首
 ・むじな
蛇足ながら、日本語の『怪談』も英語の『KWAIDAN』もネットで無料読むことが可能である。

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