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宗教からヒンドゥー教・仏教へ

宗教からヒンドゥー教・仏教へ

私は無宗教である。宗教はタッチーなこともあるのは承知しているが、気にしないで書く(余り問題ないと思うことを書く)。宗教には特に詳しくないことをお断りしておく。私の宗教との関わり・・世界4大宗教+神道・・については以下の如し。

【キリスト教(ユダヤ教含む)】
メソポタミア文明との関りで旧約聖書はそれなりに知っている。新約聖書には全く縁なし。
【イスラーム教】
概説書を読んだ程度。
【仏教】
奈良・京都・鎌倉を始め寺院・仏像は拝観している。禅宗(曹洞宗)の寺で短期修行経験あり。仏典は無縁。
【ヒンドゥー教】
2大叙事詩で聖典扱いをされている『マハーバーラ』の抜粋訳、『ラーマーヤナ』は全訳を読んだ。オリジナル聖典『ヴェーダ』群に流石に手が出ず。
【神道】
多くの日本人の方々と同じよう各地の神社を訪れた時はニ礼二拍手一礼している(この方式は間違いだとか神社に依り異なるなど気にしない)。祭ってある神・人を意識し礼拝したことは一度もない。大抵の日本人は同じかと。

1. 世界の宗教人口割合・・3大宗教概念は消滅        

「山川・二宮ライブラリーより」

世界三大宗教(キリスト教、イスラーム教、仏教)という呼称が嘗てあったように思う。実際はキリスト教、イスラーム教、ヒンドゥー教がトップ3。ヒンドゥー教が多いのはインドが人口世界一で国民の80%がヒンドゥー教徒であるからである。インドと並ぶ人口の多い中国は、日本と同じように宗教儀式こそ色々とありながらも、国民の大半は特定宗教を意識していないため「無宗教」が86%である(2018年World Values Surveyより。その他としては仏教:8.8%、プロテスタント:2.1%、イスラーム:1.4%、他)。

参考:インドの宗教人口割合は、ヒンドゥー教徒79.8%、イスラーム教徒14.2%、キリスト教徒2.3%、シク教徒1.7%、仏教徒0.7%、ジャイナ教徒0.4%、部族宗教・無宗教など:0.9%

2011年Census=国勢調査(インド政府Webサイトに掲載)より作成

2. 融通無碍な?日本人の宗教観
日本人は無宗教という人が多い、というのは大半の人が思っているだろう。神社・仏閣にお参りに行く、クリスマスを祝う、仏式の葬儀をする、ことと宗教を持っているかは無関係。但し、以下を見ると無宗教がマジョリティとまでは言い難いのかもしれない。

〇NHKの2018年のアンケート

NHKのWebサイトより

〇World Values Survey Wave 7 (2017-2022):2019の日本の数字
 無宗教:63.0%、仏教:28.4%、キリスト教:1.1%、その他:2.8%
 無回答:4.5% 

両者で多少のずれはあるものの、6割強が無宗教、3割前後が仏教徒。仏教徒と思っている人が3割もいるのは感覚的に違和感がある。葬儀・お墓・檀家の影響だろうか。神道はネグれる範囲であろう。

一方、文化庁による宗教統計調査(2121/12/31現在)によれば、信者数合計は約1.8憶人であり日本の人口約1.2億より多い。宗教法人が膨らませている+重複があるのだろうが、日本人の宗教観の曖昧さの象徴ともいえる。融通無碍と言い換えてもいいかも知れない。

文化庁Webサイトより作成

日本では無宗教者が多いというと外国の人から驚かれるという話をよく聞くこと乍ら、中国の方がずっと多いことになる。中国は儒教(私は元々宗教だと思っていない)を共産主義国になった時に捨てた。中国公認宗教は仏教、道教、イスラーム教、及びカトリックとプロテスタントである(道教や儒教は風習として根付いていている。一方、宗教とは思われていないと思う)。

3. インドの国名変更意向~ヒンドゥー教はいいのか
先般、インドのモディ首相が国名を他称インド/India→自称バーラト/Bhāratに変える意向があることを書いた。これはインド国民党の「ヒンドゥー至上主義」の表れである。
https://note.com/kengoken21go/n/n086a7bf79184

ヒンドゥーは元々インダス川(を含む七つの川)流域という意。転じてインダス川流域に住む人々という意になった。ヒンディー語で古来シンドゥと呼んでおり、ペルシア経由ギリシア語Indos、ラテン語Indusなどを経てポルトガル語のIndiaとなった。インダス川は実態パキスタンを流れていると言っていい。また、インダス文明を造ったのはインド・イランアーリア人ではないので、Indiaには抵抗があるのだろう。

ではヒンドゥー教(英語はHinduism)はどうなのだろうか。インドは8世紀~ムガル帝国の間、イスラーム教国家に支配されていたので、ヒンドゥー教はイスラーム教徒から見た異教・邪教を意味する他称と言ってよい。イスラーム国家の支配を離れ、英国植民地からの独立運動胎動の中、インド人自らのアイデンティとしてヒンドゥーイズム、更にはヒンドゥー・トヴァ(ヒンドゥー至上主義)を打ち出しているため、他称国同様にインダス川が語源であっても、宗教としてのヒンドゥーは問題ない(ヒンドゥー教は宗教よりもっと広範囲であるが深くは立ち入らない)。

4. 宗教・哲学・偶像に関するあれこれ
ここで述べることは個人的な考えが多いことをご了承願いたい。世界に数多の宗教があるが、4大宗教(キリスト教、イスラーム教、ヒンドゥー教、及び仏教)を主に念頭に置いている。

宗教の定義は色々あるが、宗教らしいのは一神教のユダヤ教・キリスト教、イスラーム教だと考えている。

【キリスト教・ユダヤ教】
所謂謂神・主=God/ヤハウェがいる。最もシンプルな?宗教と言えるのではないか。本来Godに姿はないので、ユダヤ教は勿論、キリスト教も本来偶像崇拝を禁じている。従ってキリスト教の中で聖像がある宗派は堕落ではないかと思わっている人々がいる(主にイスラム教の人々)。とは言え、何か形あるものに縋りたいという心理は抑えられないのだろう。イエスの神格化・三位一体も然り。その点、ユダヤ教は徹底している(排他的選民思想は頂けないけれど)。
(注)聖像を拝しているキリスト教の人は聖像を拝んでいる訳ではなく聖像
  を通じで主に祈っているということのようだ。

【イスラーム教】
God(アッラー)がいるのはキリスト教を同じながら、行動規範・生活規範まで含むので宗教+アルファだと思う。偶像を造らないのはユダヤ教と同じで徹底。他宗教の偶像破壊は行き過ぎ。イスラーム教は本来は寛容なはず。イスラーム原理主義は危ない。

【ヒンドゥー教】
今のヒンドゥー教は、当初のアーリア人・バラモン教の聖典『ヴェーダ』に戻ろうという考えである。といっても少し怪しい。バラモン教に神像はなかったが、今は色々な神像がありこれ無しにはなり立たない。神の数は非常に多いけれど、ヴィシュヌ神、シヴァ神(クリシュナ神を加える人もいる)が圧倒的に支持されている。何れかを最高神・唯一神としている人々が多く、例えばヴィシュヌ教の一神教徒という味方もできる。

一方で着宗教、土着民族の風習が混入しており、祭祀や生活様式の決めごとがあったりで摩訶不思議である。他宗教、無宗教の人の理解は凡そ困難?。シヴァ神はアーリア人がインドに入ってくる前の神が原型とも言われ、仏教では大自在天となる。

【仏教】
神がいる訳ではく仏陀が始めたものは哲学であると思っている。仏陀はバラモン教批判からスタートしているので(イエスもユダヤ教批判からスタートしたのは周知のとおり)、バラモン教・ヒンドゥー教の要素もある。例えば解脱。解脱は死と本来一体であるが、その後、生きて解脱もありとされた。

大乗仏教、部派仏教(上座部仏教を含む)を大区分として多数の宗派があるものの、流石に神はいないのでやはり哲学だろう。但し、南無弥陀仏のよう具体的に縋るものを明示してしまうと最早哲学ではない。仏閣や石仏で勧請/灌頂する如来、菩薩、明王等を飾るのはヒンドゥー教的であると思う。空海が持ち帰った密教はヒンドゥー教の要素がある。
尚、大乗仏教やガンダーラ美術は今のパキスタン方面~北西インドで生まれている。

<補足>
ヴィシュヌ神の化身:
以前も書いたようにヴィシュヌ神は多くの化身・権現をする(アヴァタールする)ことで知られる。代表は10体で(順序が付いている。動物も多い)

8番目:クリシュナ神(ヒンドゥー教の三主神はヴィシュヌ、シヴァ、  クリシュナと書いたクリシュナのこと)
9番目:仏陀

がいる。仏陀は「悪神に邪教を教えて正しい道から遠ざけるため」の化身と言われる(ヒンドゥー教は仏教を否定しているからだろう)。アヴァタールはサンスクリット語で「降りて来る」という意でアバターの語源。

ヴィシュヌ神。古代オリエント博物館の展示会で筆者撮影

バラモン教の意味合い:
アーリア人の当初の宗教では、神々、或いは宇宙の最高原理(プラフマン)と一般の人々が直接、崇拝-帰依という関係にはなく、祭祀階級=バラモンの口から出る言葉がいわば神々のそれであった。つまりバラモンが神々を制御していたのでバラモン教と呼ぶ。当然乍ら他称である。

仏陀は苦行者ではない!:
バラモン教→ヒンドゥー教では苦行がよく出てくる。仏陀は苦行を否定していたようだ。瞑想を長期間続け結果的に断食していたことになるので苦行者のイメージがあるのかも知れない。仏陀はヨーガをしていた模様。但し現代のヨーガは古代のものと違う。

主(God/アッラー)と多神教の神々(Deities):
一神教のGod(アッラーも同じ)を「神」と訳したのは日本最悪の誤訳と言われる。「主」と訳すべきだった(キリスト教徒の方々は主と言っていると思う)。日本の神々と全く異なるので紛らわしい。因みに外国人で神社の神をDeityが正しいのにGodという人もいる。

写真は筆者が古代オリエント博物館「インドの神々展」で撮影したもの。
タイトル画像はクリシュナ神(大抵笛を吹いている)。ヒンドゥー教の神々は男神でも女性のような顔で描かれている。ヴィシュヌ神も然り。

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